登校。パンをかじりながら走ると危ない
軽いけど重い。
ナレーター「この物語は、自称モテない高校生男子の話である」
春、柔らかな陽射し。
春、爽やかな風
春、出会いの季節……になるといいなぁ。
俺はタダのこの物語の主人公。
ちなみに高校1年であり、今は、登校の途中である。
主人公と言っても、顔よし、長身、超金持ち、モテ男、眼鏡・・・なんて属性は持ち合わせていない。
いたって普通の少年で作画担当がいたら、非常に困ることだろう。
そう俺はモテない。
顔は並レベルだと思う。
ちょっと目つきが鋭いぐらいで。
では、なぜか?
俺が思うに、きっと趣味のせいだろう。
俺の趣味は、アニメ、マンガ、ラノベをタシナムぐらいだ。
世の中に、アニメ、マンガ、ラノベが趣味だなんて言って引かない女子が果たしているだろうか。
少なくとも俺は知らない。
例えばだ。
世の中には爽やか系スポーツ系男子という分野があるという。
悪く言っても熱血馬鹿。
対してアニメオタクという分野。
悪く言えばキモオタメガネ。
ナ「尚、眼鏡はしていない」
しかし、アニメ、マンガ、ラノベ好きというだけで、酷い言われようだ。
そういう訳で、人から趣味を問われたら映画鑑賞と答えている。
と、まあ、俺がモテないのは一般的に至極当然なのだ。
……何を冷静に自己分析しているのだろうか。
朝から落ち込んでしまったではないか。
俺「今日は休もうかな……」
?「おはよう」
俺「ん、お前は、隣に住んでいる幼馴染の中学生女子で、小さい時に、将来、お兄ちゃんのお嫁さんになると言っていた、お兄ちゃんだ~い好き妹的キャラの一条 寿々花ではないか」
ナ「ちなみに、ルックスはSランク、その他もA以上(主人公比)という出来すぎた女子である」
妹的「な、なんで説明口調なの?それに最近のお兄ちゃんは少し気持ち悪い……かな」
俺「ぐ……ぐぅ……」
寿「お腹痛いの?」
ナ「自己分析では耐えられても、人から辛辣な言葉を言われると彼のガラスのハートが耐えられないのだ」
寿「ご、ごめんね、そんなに傷つくとは思はなかったから……」
俺「いいんだ。本来なら、幼馴染の少女を遠くから眺めてハァハァするのがお似合いな俺なんかに声を掛けてくれるだけで、ありがたいと思わなきゃな」
寿「……。お兄ちゃん、学校行こう?」
ナ「中高一貫教育の学校だから行き先は同じ施設であり、同じ道なのである」
俺「うん。行こう」
なんとか壊れかけの心を立て直し、歩き始めた。
十字路の角に差しかかった瞬間。
俺「うわっ」
?「きゃっ」
謎の人物はぶつかった衝撃で倒れてしまった。
?「いった~い」
目の前にはパンをくわえたままの女子が、あられもない姿で仰向けに倒れていた。
?「もう、なんなのよ」
俺「……お前の次のセリフは、「見たでしょ」だ!」
?「み、見たでしょ、はっ!?」
謎の女子は驚きながらも服装を直している。
俺「まあ、使い古されたネタだから、言動を読むのは簡単だ。それに俺は見てないぞ。妹よ、何色だった?」
寿「白かな」
俺「いや、あれは薄いピンクだな」
?「ちょっと!?やっぱり見たんじゃない!」
俺「男は細かいことを気にしないらしいぞ」
?「私は男じゃない!」
俺「もちろん、俺はそっちの趣味は無い」
?「あんたの趣味なんか聞いてない!」
謎の女子は地面に座った状態で睨んでいる。
俺「まぁ立てよ。ほら、手を貸してやる。後で返せよ」
?「もう、なんなのよ」
と言いつつも謎の女子は、俺の手をつかみながら起き上る。
?「お礼なんて言わないからね」
俺「礼なんていいさ。俺もトイレに行った後、手を洗うの忘れたという負い目があるし」
?「ちょっ!?」
俺「冗談だ。トイレに行くのを忘れてたんだ」
寿「お兄ちゃん、それ大丈夫なの?」
俺「お、思い出したら急にトイレに行きたくなった。い、急げ~」
寿「ちょっと待ってよ、お兄ちゃ~ん」
?「な、なんなの一体?」