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大嫌い  作者: ゆや
4/8

イメチェン始めました

携帯小説を愚弄する表現が出ます。そんな自分も軽く傷ついた件wwww

盗撮された出の写真を見ながら、仲間から出の情報を聞く。

「真柴さんの男の好みは、知的系の人らしいッス。それから、実家を離れて一人暮らししてるようッス」

なるほど。知的系か……。知的系ってどんなのだ?髪、黒く染めりゃいいってわけじゃないよな。

「………………口調からなんとかしてみるか…」

「知的系なら、本読むッス!本!はい、星の王子様ッス!!」

「知的でもなんでもねぇよ。こういうの、苦手なんだよ…」

「なんスか?篠田さんも自分と一緒で活字が苦手なんスか!?」

やけに嬉しそうに言う仲間の一人は、『星の王子様』を適当に教卓に乗せると、今度は漫画を取り出そうとしていた。

「いや、俺……横文字じゃないとダメで」

「え?携帯小説ッスか?」

「誰が、アマチュア以下のど素人が書いた小説読むんだよ。そうじゃなくて、英文とか、海外の小説」

「……………」

カチーンと固まったそいつの名前は、百合沢(ゆりさわ) (のぞむ)。ふわふわとした茶色い髪は天然物だ。詳しく聞いた事はないが祖母がどこかのクオーターらしい。頭の中は常に花畑が広がっているのか、発想がガキである。

「特にファンタジーとミステリーが好きだな。それ以外は面白いとは思わない」

「じゃあ、それ以外は日本の小説のが面白いとかッスか?」

「違う。それ以外はどこも同じレベルって事だ」

「へぇー…自分はSFとか好きなんスけど…」

「それはわかる。アニメと漫画の話のレベルはやっぱり日本のが一番高い。発想力なら日本人が一番ある事がわかる。特に今の若い奴の考え方は新しい発見があったり…」

「ストップ。ちょっとストップ。篠田さん、なんだかその言い方どっかの会社の社長のセリフッス」

しまった。いつも休みになると父親の仕事を手伝ってるからそういう癖がつい出てしまった。

「篠田さん。中身の方の知的な感じはバッチリッス」

パッチリとした黒目の百合沢は可愛い系男子。身長も166㎝と、下手したら女子よりも低い身長はよけいに百合沢の可愛さを引きだてている。しかも人懐っこい性格もそれに拍車を掛けている。本人はまるで気にしていないからいいんだろうけど。

「そうか?」

「なんていうか、きっと篠田さんは何もしなくてもテストで良い点数とか余裕で取れちゃうタイプッスよ」

「……………いつも平均点以下なんだが……」

なんて鋭い…。確かにテストはいつも手をスカスカに抜いて平均点以下を狙っている。そうすればなんとなく、「アイツは不良だから頭が悪くて当然」みたいな空気になって、教師の方から諦めてくれる。

「後は口調と、態度と見た目じゃないッスかね」

「よし、任せなさい」

とりあえず早速黒染めを買う事にした。










次の日、黒く染めた髪に教師達は感動していた。

「篠田!ようやっと髪を黒く染めたのか!!」

「心を入れ替えようと思いまして」

ニッコリと爽やかスマイル。この笑顔を見せるのは何年ぶりだろうか。でも、これで出に好かれるなら、我慢だ。

「…………っ」

呆ける教師達を通り過ぎ、いつものように空き教室に行き、百合沢の報告を受ける。

「篠田さんの事でどこのクラスも話が持ちきりらしいッス!」

「らしいってなんです。情報は確実じゃないとダメなんですよ」

「えぇー。それより、真柴さんはメガネ萌えらしいッス。なんでも、黒縁じゃなくて、クールにノンフレームか、銀フレームじゃないとダメらしいッス」

「いつも思うんですが、その情報どこで仕入れてくるんです?」

「真柴さんと同じクラスの俺のダチッス。なんでも真柴さんの隣の席みたいで、彼女と彼女の友達の会話がよく聞こえるみたいッス」

なるほどそれでか。なんて羨ましいポジションなんだ。

俺も出の隣の席に居たい。いつも一緒なんて嫉妬でそいつ殺してしまいたい。

「なんか不吉な事考えてねぇッスか?」

「気になさらないでください」

フッと笑って、愛読していた本を取り出す。

「本当に全部英語ッス!」

「静かにできないんですか?静かに出来ないんならここから出ていきなさい」

軽く手であしらうと、百合沢は余計に俺に縋り付いてきた。

「篠田さん、一日で別人になりましたね。不良の雰囲気全然ないのに、逆らっちゃいけない雰囲気パネェッス」

「なんですか、それ。意味がわからないです。だいたい、俺は」

「あ、一人称は僕のがもっと知的雰囲気出ると思われッス!」

「……一理ありますね」

なんて寒気の走る…。いや、これも出の為だ。我慢我慢…。一人称はだいたい“僕”と使う時はなかなかない。仕事で“私”ならよく使うからそっちのが抵抗がないからどうだろうか、と百合沢に聞けばそれだとなんだか固いから却下だそうだ。

一人称一つでも雰囲気が変わるらしい。

出がもし、一人称を“俺”にしてみても、“僕”にしてみても結局可愛くてたまらない。なるほど、これが惚れた弱みという奴か。

「後はメガネですか」

「こんな事もあろうかと伊達メガネッス!」

手渡されたのは、赤フレームの安っぽい伊達メガネだった。

「やめましょう。何故かドキドキが止まらないッス」

意味がわからない。


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