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感想を頂いたため、私なりに修正を加えてみました。今だ至らぬ所が多々あると思いますので、感想や評価をどうぞ宜しくお願いします。
『RULE』
作:白鐘


「ふぅ…。」
寒空の下、僕はもう何度漏らしたか分からない溜め息を漏らす。
「何もこんな日にやることないだろ…。」
12月24月。世間はいわゆるクリスマス。
日本の恋人たちや家族の一大イベント。
街には様々な装飾がなされ、色とりどりのイルミネーションがこの特別な日を演出している。
手を繋いで歩く恋人たちの足音、仲の良さそうな親子の笑い声、その中に紛れてケーキを売る声や、はたまた独り身たちの悲しい溜め息まで聴こえてくる。
普段から賑わっている駅前の通りも、この日ばかりはいつもと違う賑わいを見せていた。
「まぁ…、一番の違いは、僕みたいなのがいることだろうな。」
駅からほど近いビル。少し前では某駅前留学の英会話学校が入っていたが、今は無人になっているビル。 その屋上に僕はいる。 なんでそんなところにいるのかと言えば、まず組織のことを話さなければならないだろう。

魔法なんていうファンタジーチックな言葉がある。 物語の題材としてはよく使われるこの魔法なんてものは、もちろん存在しない。だけど、似たようなものがこの世界には存在する。
『ルール』と呼ばれる能力と『ルーラー』と呼ばれるその能力者。
その気になれば世界すら支配できるこの能力は、いわばスポーツができる、頭がいい、なんていうのと同じで生まれつき備わっている能力の一つとされているが、その能力者は少なく、世界に僅か一万人程度しかいないと言われている。
そもそもこの能力は、少し前までその存在さえ知られてはいなかった。
その存在が知られるようになったのは今から20年前。2人組の男が、その当時知られていなかった『ルール』を使い、一国の大統領を殺す事件が起きた。
当然周りに警備の人間が大勢いたが、未知の力の前に彼等はあまりにも無力だった。
そしてこの事件はすぐに世界に伝わった。
そこで動いたのは、世界の他の『ルーラー』たちだった。あるものはこれに便乗して大犯罪におよび、あるものはそれを止めるために動いた。世界中で『ルーラー』同士の争いが起こり、周りにも被害が及んだ。
幸い騒ぎはすぐに治まったのだが、大変なのはその後だ。
世界中で起こった事件により、未知の力の存在が世界に晒された。圧倒的な力の存在に人々は恐怖し、社会は一時混乱に陥った。
能力はいつの間にかどこかの国のメディアが使いだした、支配するという意味の『ルール』という名で呼ばれ、能力者は、支配者『ルーラー』と呼ばれるようになる。そして始まったのが、能力者狩り。それはまるで中世の魔女狩りそのもので、『ルーラー』であろうとなかろうと、その疑いをかけられたら殺される。
そんな時代錯誤の非人道的な行為が世界中で行われた。世界各国の政府は混乱の解消に尽力を尽し、この混乱は半年後には治まった。しかし、人々の心には『ルーラー』への恐怖が深く刻みこまれた。
そして時が流れ、現在、今だ『ルーラー』であると分かると、殺されこそしないものの酷い迫害を受ける。『ルール』を持って産まれた子供は当然のよう捨てられる。そんな社会背景への反発からか、『ルーラー』による犯罪は少なくなくなかった。しかし、『ルーラー』ではない警察に『ルーラー』に対抗することはできない。だからといって、社会的に恐れられている『ルーラー』を雇うわけにもいかない。
そこで生まれたのが、非公式の『ルーラー』による組織。そしてそのひとつであり、最大といわれる組織が、僕の所属する組織、ブラックベルだ。
そして、僕が今ここにいる理由、それはブラックベルの任務中だからだ。

「しかし…、クリスマスに麻薬の取引とはご苦労なことだ。」
任務は麻薬の取引現場の差しおさえ。依頼は警察からだ。警察は、ウチのお得意さんだったりする。麻薬を売っている人間を捕まえ、取引の情報は得たが、相手に『ルーラー』がいるらしいので手が出せない。そこで今回の依頼というわけだ。
本当ならこの任務は、組織の先輩の任務だった。
ところが、当日になって、
「悪い!今日の任務代わってくれ!」
と頭を下げてきた。というより土下座をしてきた。
「……、理由は?」
とりあえず土下座はスルーして理由を聞いてみた。
「今日デートなのをすっかり忘れてたんだ!」
僕は頭を踏みつけた。
「ちょっ、亮っ、痛いって、マジ痛いって!」
とりあえず無視する。
「痛いから止めろ!いやっ、止めてくださいっ!」
仕方なく足をどかした。
「あぁ…、禿げるかと思った。」
先輩が頭を押さえながら立ち上がった。
「禿げればいいのに…。」
「お前、それは酷すぎだろ…。亮はもっと先輩を敬うべきだ。」
まだ自己紹介していないのに僕の名前を呼ぶ先輩は、もっと空気を読むべきだと思う。ちなみに僕の名前は黒鐘亮だ。
「はぁ…、それで?代わるとして対価は?」
「任務の成功手当を…」
「……、寝言は寝て言え。」
「冗談だ。俺の妹をやる。」先輩には確かに妹がいる。あだ名がジャイ子、というだけでどんな容姿か簡単に想像できるステキな妹だ。
「いつものケーキ10個。それで引き受ける。」
先輩にこれ以上つきあっているのも馬鹿らしいので、此方の要求を告げる。
「そこはかとなく妹が可哀想だか、分かった。帰りに買ってくる。」
こんなやりとりがあって僕が任務に当たっている。
先輩から渡された資料によると取引は、この場所で12時ちょうどに行われる予定らしい。今は11時50分だから後少しで来るだろう。
いくら昼間の太陽が上っている時間とはいえ、もう一時間以上この場所に待機していた。
「冬なんだから室内で取引すればいいのに…。」
小さい時から訓練しているため、寒さで体が動かないなんてことはないが、寒いものは寒い。
気配を消して、動かないようにしているから余計に寒い。
「とりあえずこの鬱憤は後で先輩で晴らそう。」
そうして僕は、いかにして鬱憤を晴らすかに思いを巡らせることにした。

12時ちょうど。階段の辺りに気配を感じた。おそらく取引の相手だろう。
僕は屋上の入口に目を向ける。するとドアノブが回され、金属製のドアが開けられた。出てきた人影はかなり高そうな服をきた背の小さい男と、体格のいい黒服の男。普通に考えて、黒服が『ルーラー』だろう。
なら黒服を殺せば後は楽だ。幸いか二人は取引の相手を探しているのか、警戒が緩い。殺るなら今だな。
そう判断した僕は二本の小太刀を構える。狙うのは首。『ルーラー』は確実に仕留めないと厄介だから。
タイミングをはかる。
しばらくして、二人は揃って背中を向けてた。
(今だ!)
体を少し捻り、勢いをつけてかけだした。後はそのまま黒服の首を切り落とす。しかし、いくら気配を消していても僅かな殺意は発してしまう。黒服はそれに気付いたのか、小太刀が首に届く直前にその姿を消す。(ちっ、転移の『ルール』か!)
転移とは、文字通り自らの体を別の場所に転移させる。転移できる範囲は生まれ持った『ルール』の強さ次第でその範囲内ならどこにでも転移できるが、この場合はおそらく、
(後ろだ!)
僕は勢いを殺し、横に転がる。同時に後ろから銃声が響く。弾は僕が元いた場所に突き刺さっていた。
僕は一瞬で体勢を立て直し、再び男の方にかけだす。その最中、一発撃たれたが真正面から撃たれた弾なんて当たるわけがない。片方の小太刀でそれを弾く。
そしてもう一方で首を狙う。またもや直前に姿を消した。また後ろから銃を撃つつもりだろう。
しかし、銃声は響かない。代わりに、
「ゴフッ。」
という血を吐く音が聴こえる。
後ろを向くと、黒服の体を無数の刀が貫いている。
それらは僕の『ルール』、創造によって創られたもの。
創造はモノを創り出す『ルール』。
創ることのできるモノ、モノを出現させる範囲は、もちろん強さによってが刀なんかは簡単に創れる。後は相手の転移先を予測して、出現させればいい。黒服が後ろに現れない可能性もあったが、人間は動揺しているときに、同じ行動をしてしまうことが多い。最初の一太刀は避けたが、黒服は明らかに動揺していた。動揺していなければ、真正面から銃を撃つなんてことはしないだろう。
その時点で僕の勝利は決まっていた。
「さてさて…。」
僕は残されたもう一人の男の方を向く。何もかもいきなりのことに体が硬直していた男は、僕の声を聞いて体を震わせた。
「なっ、何でもする!た、助けてくれ!」
震える口から出てきたのはそんな命乞いの言葉。
「おとなしくしていれば、殺しはしない。」
そういって手にスタンガンを創り出す。
相手に完全に戦意を喪失しているが、逃げられたら面倒だし、何より目障りだ。足が震えて動けない男に一歩ずつ近付く。
一歩、また一歩近付くたびに男の震えが激しくなる。そして、男の目の前に来た。これだけ隙を見せて、至近距離にいるのだから、おそらく持っているであろう銃を撃てば、間違いなく僕に怪我ぐらい負わせることができる。
しかし、そんな正常な思考能力は今の男にはない。
スタンガンを首元に当てる。男は震えているだけで何のアクションも見せない。
「次に目を覚ますのは、おそらく警察署の中か…。」だから、僕のこの言葉もおそらく届いていない。
「これからはいい夢なんてみれないだろう。だから、せめて今だけでも、いい夢を見られるといいな。」
そして、スタンガンのスイッチを押した。

「ふぅ…。」
任務が終わったからか、自然と溜め息が出る。
正確にはまだ終わってないのだが、後は警察に連絡をいれて、男を引き取ってもらうだけなので、対したことはない。
とはいえ、なるべく早く終わらせたいので、コートのポケットから携帯を取り出すと、メモリからかけなれた番号に電話をかける。
「もしもし、終わったの?」いつも通り3コールで相手が出た。
「ああ。」
「じゃあ取りにいくよ。あっ、『ルーラー』の人を殺したならちゃんと片付けておいてよ。私、血、嫌いなんだから 。」
「…それでよく刑事がつとまるな。」
少し呆れた口調で言う。
「私はいいの!」
怒った声で言われた。普通は良くないと思う。だが、これ以上は言っても意味がないだろう。
「分かった、分かった。とりあえず早く来てくれ。血は消しとくから。」
「むぅー。なんかばかにしてる。」
今度はすねた声。電話の向こうで頬を膨らませている姿が思い浮かんだ。
「すねるなよ…。もう切るぞ。」
電話を切ろうと、携帯を耳から離す。
「あっ、ちょっと待って!」慌てて様子で制止の声がかかった。
「…何だよ。」
切りかけていた電話を再び耳元に戻した。
「えっと…、お疲れ様。ありがとね。」
予想外の言葉に一瞬言葉を失う。
「言いたかったのはそれだけ。…じゃあ、切るね。」プー、プー、プー。
電話が切れてからも、僕はしばらくぼぉっとしていた。
「……なんというか、今のは反則だろ…。」
そう呟いた後、おそらく後10分くらいで着くであろうあいつのために、黒服の死体の方に歩いていった。
「やれやれ…、もう一仕事終わらすかな。」
この時僕は、本当に不本意ながら、今日の任務をくれた先輩に多少感謝していた。
「…食事にでも、誘ってみるか。」
今日はせっかくのクリスマスイブだからな。
片手にブラシ、もう片方に水の入ったバケツを創り出しながら、僕はそんなことを考えていた。














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