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ある皇室のモノガタリ

妊娠から始まる

作者:憂愛
「失礼いたします。陛下のお耳に入れたいことがありまして馳せ参じました」


 それは厳格な会議中に訪れた。
 表に出ることなく後宮や王宮の中でもプライベートな裏から、あまり出ることがない侍従長の姿だった。

 それだけで、この会場に居る者は異常だと気付き始める。

 何事か、とその中央に堂々と座す皇帝は興味なさげに問うた。
 手持無沙汰に持っていた扇を開閉する音だけが響く中、先代の皇帝から仕える侍従長は重く、そして厳かに告げた。


「皇后陛下、朝食の時分よりご体調のご不快が続き、先ほど御匙に診断させたところ、ご懐妊であること限りなく是であります」

「っ」


 皇帝の冷めた瞳は新緑が鮮やかなほど美しく色づき、手に持っていた扇が落ちたことに気付きもせず、祝いの言葉をあげる者たちに言い放った。


「余は皇后の元へ行く。今回の議題に上がったものは、そちらでよくよく考査し報告せよ」


 ざわつく議場など振り返りもせず目当ての部屋へ向かう。
 政務を執り行う宮から皇族のプライベートな空間である宮へ続く回廊は緑で溢れていた。
 皇后が、ここへ嫁いでから宮の雰囲気は様変わりし品の良い花と癒しを与える緑で溢れるようになった、と足を止めずに思った。


「まぁ…陛下、ご朝議のほうは宜しいのですか?」


 荒々しく開けた扉から穏やか過ぎる声が届く。
 驚愕に染まる侍女たちとは違い笑みを浮かべて自分を招き入れた美しい一人の女。
 寝台ではあるが枕元に沢山のクッションを敷き詰め背を起こしている女。

 艶やかな黒髪が目をひく、この国の皇后であり己の唯一の妃であった。


「…体調はいいのか」

「はい、御殿医の見立てでは健やかであると、言われております」

「侍従長が朝議の場に入ってきて言いおった。…驚いた」

「はい。私も、驚きました。もう…子は望めぬのでは、と憂いておりましたので」

「…嬉しいか」

「はい、とても。私が陛下にして差し上げられる事と言えば家族を作る事のみでしたのに。申し訳ありません、こんなにも遅くなってしまって」

「お前が嫁いで、まだ2年だ。遅くはない」

「…はい」


 不器用な皇帝の言葉に皇后は、ただ微笑む。
 その言葉の本当の意味を理解しているから。

 ゆっくりと進んでいこうと婚姻の際に2人は決めていた。
 しかし、それは許されず心ない家臣の言葉に皇后がどれだけ苦しんできたか皇帝は知っていた。

 皇帝としてではなく、ひとりの男として、ひとりの夫として、この腹に居る子をどれだけ待ち望んでいた事か。

 もしそれを正直に告げても皇后の心は、もう開かない気がした。
 申し訳なさそうに俯き、礼に則った態度を取るのみで、その心の奥の想いを打ち明けてくれる事はないだろう。


 しかし、それはしょうがない。
 何故なら、皇帝は逃げたのだ。
 言葉に傷つけられている皇后から。


 それでも、その身を捧げる皇后を抱かずにはいられなかった。
 家臣の言いなりが厭わしいとはいえ、皇帝である自分が皇后を抱かなくなれば…きっと皇后は壊れていただろう。

 自分はただ…側室を拒否し続けることしか出来なかった。


 それほど危うい状態だったのだ。
 それから目を背けて一年。

 しかし、どうだろう。
 崩壊しそうなほどの精神を抱え弱っていた皇后は、どこにもいない。

 ただただ愛おしそうに腹を撫でる手を…切り捨ててしまった自分が一番、壊れていたのかもしれない。


「エルヴィーナ」

「はい、陛下」

「名を」

「…リカルド様…――」


 穏やかに微笑んでいた皇后の表情が固まる。
 皇帝は気づいていた。
 己の名を呼ぶ事を唯一、許した女が、そう呼ばなくなったことを。

 ただ、ただ今は…今、この瞬間から。
 2人でやり直していけたら。
 そう期待を込め、名を呼ばせる。

 伝わるのは変わらぬ深い愛と思いしれぬ程の気遣い。
 皇帝は確信する。

 まだ遅くはないと。

 そして皇帝は壊れ物に触れるように頬に触れる。
 何よりも白い肌が少し赤く染まりはじめた。
 す、と伏せられた瞳に焦燥感が湧きあがり、そのまま顎に指を走らせ持ちあげた。

「エル、すまない」

「……?」

「お前を一人にしたな。勝手に…お前を欲し半ば無理やり妻にしといて」

「リカルド様…―――」

「愛してる」

「っ」

「これからも共に」

「…私も貴方を一人にしました。これからも貴方と共に…」


 多くの言葉はいらない。
 この2年間、なんと言われようと支え合い生きてきたのは事実だ。

 お互いがお互いに感じていた罪悪感を拭い、また始めよう。
 2年前。神の前でしたように誓いの口付けだった。


****

 それからふたりは多くの時間を共に過ごした。
 皇帝は彼女との思い出を振り返るように、初めて会ったときに流れていた戯曲を演奏団に披露させ、初めて彼女に贈った花を庭に植え、初めて口付けた場所をふたりで訪れ再度、唇を降らせた。

 皇后は嬉しそうに微笑みながら幸せを確かめるように腹に手をあて胎動を感じようとした。皇帝もそれに添えるよう触れるとふたりは幸せそうに瞳を細めた。

 陽のあたる真昼。
 この時間に皇帝が来るのは新婚のとき以来であった。
 しかし、最近では政務の合間をぬって足しげく通うのが目撃されていた。
 来るたびに皇后の身体を心配しすぎ声を荒げながらも甲斐甲斐しく世話をする姿は従者たちが微笑ましく思うほどだった。

 皇帝の心配をよそに皇后は初めての妊娠だというのに、どこか余裕さえも感じさせるほどだった。なんとか言いくるめて皇后を座らせると、やっと安心したように、その隣に腰を下ろした。


「朝議で皆が祝詞を述べていた」

「そうですか、私の元にも入りきらないほどの祝いの品が届けられています」

「あぁ、城門にも民からの祝いの品が届いてるぞ」

「まぁ、それは嬉しいです」

「エルの後ろ盾は公爵家というより民だな」


 少しだけ不貞腐れたように皇后の頬にキスを落としたかと思えば、誰も目に入らぬような深い口付けが落とされた。
 照れたように胸板を押した細く白い腕は、いつのまにか彼の人の首に周っている。


「朝議のとき、娘が欲しいと言ったら大顰蹙だいひんしゅくを買った」

「…そんなことを仰ったのですか?神たる陛下が仰ったら縁起が悪いと責められましょう」

「それでも娘が欲しい。3人は必須だ。当然だろ」


 そんな皇帝の言葉に皇后は心の底からの笑みをこぼした。

 妊娠したのは物凄く嬉しかった。

 しかし、その感動を味わう前に大きな重圧が伸しかかった。
 実の両親からは、お世継ぎが産まれるようにと意味の分からない大きな石が送られてきたし、懐妊をしっている貴族たちからは、この一週間の間に数え切れぬほどの祈祷の書が送られてきた。

 男子を…お世継ぎを産まれねば…どうなることか。
 もし女子が産まれたとしても不能として糾弾される。

 過去の関係ない過ちを掘り返され、皇后に不向きであると進言することだろう。

 しかし、目の前にいる皇帝は娘が欲しいと公言した。

 他の国より皇帝の持つ権利が大きい、この国ではより重大な発言となる。
 もし、皇后が男を産まなければ皇帝の発言が不適切であったと糾弾されるだろう。

 決して……皇后を責める者はいなくなる。


「リカルド様、それは……」

「娘が欲しい。エルに似た娘なら、さぞかし可愛らしいだろう」

「…ありがとうございます」


 素直に、その気使いは嬉しかった。
 皇后自身は男でも女でも健康で産まれてくれればそれでよかった。

 でもそれでは皇后は務まらない。
 いくらリカルドを愛していようが世継ぎを産まなければいけないという使命が重すぎるほど彼女に圧し掛かっていた。


「他の者たちが言うことに惑わされるな。子供は1人しか産まぬと決めているわけでもないだろう?」

「でも…2年でやっと…妊娠したのです。私は…」

「大丈夫だ。これから何十年という時間を共に生きるんだ。心配ない」


 なんの不信感もなく言いきる皇帝に胸の痞えが取れるような気分で、そっと身体をすり寄らせる。

 何の迷いもなく抱きしめられ心が暖かく満たされていく。


「私は…男の子が欲しいです」

「エル…」

「世継ぎとか…そんな理由ではなく。リカルド様に似た…男の子が欲しいです」

 気恥かしそうに微笑み己の肩に回る夫の手に自分のそれを重ねる。
 皇帝は少し目を見開いたが、すぐに喜びが溢れかえる笑みを浮かべた。

 そのまま穏やかに2人の時間を過ごしていった。


* * *


「皇后陛下、リズボン侯爵、数名が謁見を求めておいでです」

「…そう。突然ね」

「はい、皇帝陛下が視察で皇都におられない、この時に限って」

「推測で物を言うのは止めましょう、今日は天気もいいし庭園でどうかしら」

「よろしいですね、それではそのように」


 信頼のおける侍女長は恭しく、それでいて優しい。

 いつか、子供は出来ないかもしれないと覚悟した夜。
 彼女に弱音を吐いた事があった。

 その時の力強い言葉に今まで支えられていたといっても過言ではない。

「失礼ながら子を産む為だけに存在する皇后であれば皇帝陛下は貴方様を皇后へ立后させる事はしなかったでしょう。ただ同じ景色を見て可能なかぎり多くの事を共有する事を望み、貴方様を皇后へ立后されたので御座います。間違えないで下さいませ。子を為す事が女の全てでは御座いません。」

 そう言われて、やっと気づいたのだ。
 皇帝は一度も妊娠の兆しがない女を責めただろうか。

 いや、一度も言っていない。

 周りの五月蝿さに大きな勘違いをしていた。
 ほかの誰でもない皇帝は何一つ不満を言っていないという事を。


「皇后陛下におかれましてはご機嫌麗しく。恐悦至極に御座います」

「ありがとう、そなたたちも変わりなく壮健そうでなによりです」


 ありきたりな口上の後、数刻はあたりさわりのない会話を続けた。
 ふ、と水事業を請け負う大臣が笑みを深め未だ大きくなっていない皇后の腹を見て告げた。


「2年間、我らは御子様を望んでおりました。必ずお世継ぎを産んでくだされませ」


 皇后の後ろで控える護衛、侍女たちはその言葉に1歩、前へ出ようとした。皇帝より留守中、くれぐれも頼むと直々に言葉を賜った事もあり、今は何1つとして許容出来はしない。大臣たちは皇后が最も杞憂している問題を言葉にしたのだ。

 しかし皇后は、それを視線で諫め穏やかに微笑む。

 これは私の戦いです。
 そう訴え、少し微温くなった紅茶を1口飲む。
 静かにそれをソーサーに戻すと真っ直ぐに大臣3人を見つめた。


「子の性別はどちらでも良いのです。健康で生まれてくれれば」


 その皇后の言葉に驚いたのは大臣たちだけではなかった。皇后に立后した後から1度もメンバーが変わる事がなくきた護衛、侍女たちさえも大いに驚かした。

 彼らは皇后が、その聡明さゆえに悩み苦しんできた事を知っているからだ。
 彼女に何ら責任がなく、神頼みともいえるお世継ぎの誕生さえ己の不出来を責めていた。

 その悲痛な姿は脳裏に嫌というほど刻み込まれてる。
 そんな皇后が世継ぎを産む事に固執しないはずはない。

 なのに彼女は笑み大臣に真っ向から対立した。
 唖然としている中、生家から付き従ってきた皇后の友人のよう侍女はここ最近、変化した皇后の姿を思った。もともと皇后はその雰囲気で穏やかな風を作るような人であった。しかし、今はどうだろう。皇后はもはや風ではなく大気を作る人となっていた。

 きっと、この姿を見たかった。
 侍女は熱くなる目頭を感じながらも主の戦いを見守った。


「……な、な、なにを!陛下のみならず皇后様までそのような事を仰られるのですか!2年ですぞ!2年、貴方様は子に恵まれなかった。それにご懐妊した今は次、陛下の閨に戻るまで1年はありましょう。そのようなこと…」

「…いつからでしょうね」


 大臣の言葉を遮り溜息とともに漏れた皇后の言葉。


「……は?」


 大臣は意味がわからない、とばかりに少し顔をもたげさせた。

 それを見て皇后は言い募る


「いつから貴方たちは私にそのような態度をとるようになったのでしょうね」

「皇后様…?」

「そうです。私は第二十三代皇帝リカルドの妻にして、皇后である。皇帝が不在の今、皇帝名代も務める私に…いつまでその態度をとるおつもりか」

「っ」

「言いたいことは分かっている。世継ぎを産まねば失脚でもすると暗に伝えにきたのでしょう。それとも私の妊娠中の陛下の相手に己の娘を差し出すとでも親切ぶり…恩を着せようと?」

「…な…!!皇后様、言葉が過ぎますぞ」

「乱心したでも言うか?いや言えまい。乱心しておるのは、そなた達の家族の方ではないか?…ラングル侯爵、そなたの娘は絆されやすいらしい。先日、そちの館に滞在した吟遊師…たしか名をクルトといったか。北方出身で美しい色を纏い大層、美丈夫らしいな。社交界へ出たばかりの娘が夢中になるのも頷ける。ただ…節度は守るべきだったな、そなたの娘は」

「な、な、なにを…根も葉もないことを…!」


 同席した他2人の大臣の視線を気にしながら上ずった声で反抗する。
 しかし分かる者には分かる。
 これは事実であると。
 そして侯爵はそれを隠匿しようと必死になっている事を。


「ご令嬢はその事実を父であるそなたにも隠そうとしたのでしょう。しかし、さすが大臣職を得ているだけはある。そなたは気付いた。そして侍女に命じて「乙女の証」を処分させた。娘が乙女でないと露見して後々、困るのはそなたも一緒」

 そこで一度、言葉をきる。
 皇后は悪戯な笑みを浮かべ甘い声で告げた。


「でも駄目ねぇ、ちゃんと最後まで確認しないと」

「え……?」

「処分を命じた侍女。最近、館で見かける?」

「な、な…」

「あれは私の生家である公爵家の縁者。聡明なあの子はすぐに私に連絡をしてきたわ。後は分かるでしょう……?」


 侯爵は絶望した。
 娘が吟遊師に捧げた「乙女の証」は皇后の手中にある。
 その事実に目の前が真っ暗になった。

 もはや娘を皇帝の側室にするなど不可能となったのだ。
 そして抹消したい証拠が皇后のもとにある。

 既に生気を失った侯爵はぶるぶると震え俯いている。
 その姿を見て唖然としている残りの2人の大臣を見やると、無垢な女神とまでもてはやされる美しい笑みを浮かべた。


「リズボン侯爵」

「は、はい…!」

「そなたは息子に苦労しているようですね」

「っ」


 その先が既に分かった侯爵は項垂れ打ち震えた。
 箝口令を敷いたはずだ。
 家外に漏れるはずがない。
 いったいどこから漏れた、小さなその呟きに皇后は笑みを深くした。


「嫡男のレナードは…確かメイナード公爵家のご息女との婚約の話が出ているそうね。でも私はそれに反対だわ。ねぇ、分かるでしょう?」

「は…はい……」

「レナードは既に神殿に婚姻届けを提出している。もちろん公爵家のご息女が相手ではなく。確か相手は武器具店の娘だったかしら」

「っ!それは受理されておりません!」

「そうよね、親族と爵位を持つ者の保証人が必要ですもの。親族は相手側のご両親がいるとしても爵位を持つ者はね。だいたいは領主が承認するのでしょうけど。貴方が相手ではね。承認は貰えなかった。そなたの息子は恐れ知らずな強者であること」

「……?」

「先日、西皇都の孤児院に慰問に行った際にね、そなたの息子に会ったの」

「っま、ま、まさか……!」

「えぇ、私が承認し捺印しました。レナードは嬉々として神殿に向かったわ。だから、そなたの息子は既に…婚姻が成立している」


 家人にどれだけ箝口令を敷こうが当の本人が恐れ多くも皇后へ承認を求めた。
 その事実に侯爵は息を詰める。

 婚姻が成立したいう事は、もはや公爵家の息女との縁談を進めることができない。
 二重婚など神への冒涜行為である。
 合わせて格上の公爵家への非礼は侘びのしようもない。

 穴という穴から汗が吹き出し、もはや皇后の顔さえ見えやしない。


「でもねリズボン侯爵、私は父であるそなたの意思を無視して申し訳ないと思っているの。でもね武器具店の娘…子ども身篭ったのよ。産まれてくる子のためにも、しっかりとした夫婦になるべきと思ったの。間違っているかしら?」

「い、い、いいえ…」

「それにレナードには公爵家への対応は全て責任をもってやるように言っているわ。あの子は責任感の強い子だし、公爵家のご当主はそんなに嫌な人ではないわ。きっと誠意が伝われば大事にはならないでしょう」

「は、はい…」


 ふう、とわざとらしく一息ついた皇后に大げさなほどを身体を震わせたのは残りの1人。
 モンロー伯爵だった。


「モンロー伯爵」

「は、はいぃぃ!」

「こんな風に露見されたい?貴方の妻の事」

「っっ……いえ、いえ、いいえ!!」

「では、この2人を連れて下がりなさい」


 悲鳴のような声で返事をし両腕に大臣をかかえ足をもつれさせながらも必死に部屋を辞していった。
 礼など丸無視した形となったが、それさえも頭にないようであった。


「お見事で御座います、皇后様」

「私が今まで逃げてきた事よ。ずっとあの方…リカルド様に嫌な役を押し付けていたのは私。きっとこうして側室の話や私への中傷を止めていてくれたのでしょう?」


 否定しない侍女長に苦笑いし皇后は空を見上げた。


「私は母になるのですもの。夫に守られてばかりではいけない。1人だけ清廉潔白では駄目。泥まみれになろうが、恐れられようが、憎まれようが…夫と子どもを守るわ」

「……頼もしい妻だ」

「っ」

「ただいま、エルヴィーナ」

「リカルド様……!」


 蹄の音がして、そちらを向くと白馬に乗った皇帝が微笑んでいた。
 その姿を目にし感極まったように皇后が1歩踏み出そうとすると穏やかな笑みが皇帝から消え失せた。


「エル!走るなと何度言えば分かる……!」


 その言葉にくすくす、と笑うと深呼吸してゆっくりと皇帝へ歩み寄った。
 皇帝はその姿に安堵の息をつき下馬すると手綱を侍従に渡し同じく歩み寄る。


「エル」

「リカルド様」


 愛してる。
 音もなく、互いが告げると穏やかな風が吹いた。

 そして変わらぬ心を唇にのせ2人は口付けを交わした。


――――――――――――――――――――――


 この後、皇后エルヴィーナは皇帝リカルドに似た皇子を出産する。その後、2人の娘、そして末に男児を1人。計4人の子宝に恵まれた。

 子どもたちは両親の愛情を一身に受け伸びやかに育っていく。

 娘たちは隣国の王族の元に嫁ぎ外から帝国を支え、国に残った2人の皇子は外に出た姉妹が困らぬように自国の発展に尽力する事となる。

 子どもたちは口を揃えて両親の仲の良さを語った。そして彼らもまた皇族・王族にしては珍しく、たった1人の相手を生涯愛したという。


 両親のように。

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