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過去と未来は隣り合わせ
作:SAI



#.05 決意


 フランス・パリ。工藤夫妻は出版社から逃げながら、パリで優雅に過ごしていた。



「パリにして正解だったわね!」


「そうだな。よし!このまま世界一周でもするか!」


「あら、いいわね!」



 まだまだ新婚気分を味わっている中、二人に近づく西欧風の男が一人いた。



「失礼ですが、工藤優作さんですか?」



 優作はしまった!という表情をし、有希子はやれやれと息を吐いた。 



「先生のファンなんです。サインを頂けませんか?」


「あ、あぁ。サインですね。いいですよ」



 優作は出版社ではないことがわかって、安堵の笑みを浮かべた。次に男は、優作に質問を投げ掛けてきた。



「そういえば、先生の息子さんって、あの高校生探偵工藤新一なんですってね?私は以前日本にいましてね」


「えぇ。そうですよ」



 優作は平然と答えた。すると男は質問を続けた。 



「でも今は行方不明なんですって?」


「えぇ。まぁきっと、事件に首を突っ込んでいるんだと思いますがね?」



 今まで色紙を見ながら答えていた優作だったが、男の次の言葉で表情が変わった。



「でもあまり心配そうに見えませんけど…もしかして、息子さんの居場所は知っているとか?」



 優作が男の顔を見ると、どこか挑戦的な目で見てきた。すると有希子が、



「これ以上あなたにプライベートを教える必要も、時間を取る必要もないわよ」



 有希子の言葉に男は失礼しましたと言って、色紙を持って帰って行った。二人は男が見えなくなるまで見つめ、



「あの人、何か怪しくない?」


「まだ何も確信はないがな」



 二人は小声で相談を始めた。



「新ちゃんに一応連絡した方がいいかしら?」


「それは俺がやるよ。それより有希子。これからなるべく一人で行動しないように」


「えぇ。わかったわ」



 二人はそう言葉を交わし、ホテルへ戻った。





◆◇◆◇





 灰原が学校を休んで二日が経った。探偵団はお見舞いに行こうとしたが、コナンに止められ、お見舞いに行けずにいた。



「灰原ってしょっちゅう休むよな?博士にちゃんと食わしてもらってないんじゃないのか?」


「ありえますね。博士は一人暮らしが長いので、灰原さんの体調の変化に気がつかないのかもしれませんね」


「でも前に、哀ちゃんが二人のご飯を作ってるって聞いたよ?」



 歩美の言葉に二人は、そういえば博士の体を考えた食事を灰原が作り、博士はコレステロールの高い物が食べれないと嘆いていたのを思い出した。



「じゃあまさか、博士の食事に付き合って栄養失調になったんじゃ!」


「ますます博士が犯人になってきたな。…ところで栄養失笑ってなんだ?」



 光彦はハァーとため息を吐き、元太に言葉の間違いと意味を教えていた。そして歩美は、ここ最近元気のないコナンを心配していた。



「コナン君大丈夫?最近元気ないよ?」


「え…あ、あぁ大丈夫。それに灰原も大丈夫だって!あんまり心配すんなって!」



 コナンの言葉に探偵団は頷き、いつもの別れ道で別れ、コナンは先程の言葉が自分自身に言い聞かせているような気がした。



(ちょっと寄ってみるか)



 コナンの足は阿笠宅へと向かっていた。





◆◇◆◇





 コナンが博士の家に着くと、リビングに灰原の姿はなかった。すると、誰かと電話をしていた博士がコナンに気がつくと、



「おぉ、ちょうど今来たわぃ。新一、お父さんから電話じゃ」


「父さんから?」



 コナンは珍しいなと思いながら受話器を受け取った。



「もしもし?」


「新一、久しぶりだな。元気にしてたか?」



 コナンはまぁなと相槌を打ち、優作は我が子が元気そうで安心し、は本題に入った。最近自分達の周りに新一について必要以上に聞いてくる男が現れたと。コナンはその言葉に何も言えなかった。



「博士から聞いたが、例の組織から来た子。彼女の気配の正否はどちらでもいい。新一、くれぐれも無茶はするんじゃないぞ」


「あぁ、わかった。父さん達も気をつけて」



 コナンはそう言うと受話器を置いた。そして、博士とこのことを灰原に話すか相談をしていると、



「間違いなく組織の人間ね」



 地下への扉に白衣を着た灰原が立っていた。





◆◇◆◇





「灰原…」



 灰原はフッと笑い、話を続けた。



「これで確信したわ。組織は私の正体に気がついた。そして…」



 灰原は真剣な表情でコナンを見た。



「工藤君…あなたにも」



 コナンはその言葉に険しい表情をしたが、すぐにいつもの『探偵の笑い』に変わっていた。その表情に灰原の表情が険しくなる。



「何を笑っているの?」


「これが笑わずにいられるかよ。やっと奴らと真っ向勝負ができるっていうのによ」



 その言葉に灰原は声を荒げた。



「そんなに甘い物じゃないのよ?組織に見つかったら最後、誰も助からないのよ!」



 灰原の言葉にもコナンの表情は変わらない。



「違う。最後になんかならねぇ。あらゆる策を練って奴らを潰そうじゃねーか」



 灰原は言葉に詰まった。本来ならなんとしても止めさせるべき。しかし、そのコナンの真っ直ぐな瞳に何も言えなかった。



「大丈夫だ。来る時が来たんだよ。ヤバクなったら俺が守ってやっからよ!」



 その言葉が灰原には重くのしかかった。コナンが消えてしまう光景が頭から離れない。



「じゃー俺は帰るからよ!また明日な!」



 コナンはそう言って帰っていった。



(また明日…。もし明日にでも彼の前に組織が現れたら…)



 灰原はそう思うと一つの決心をした。博士はコナンの背中に何も言えなく、灰原を見ることしかできなかったが、



「博士、明日から学校行くわ」


「しかし…」



 博士の言葉に灰原は大丈夫と言い、博士の心配をわかっていながら地下室へ降りて行った。



(工藤君、あなたは無関係な人間。これ以上あなたを関わらせるわけにはいかないわ。もしもの時は…)



 この灰原の一つの決意が、後に起こる事件を引き起こすことになる。












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