#.04 動き始める黒い狼
十億円強盗事件に、板倉の殺人現場にも居合わせている。もっと細かく見れば、組織が関わっている事件がもっとある。
ジンはデータ整理が終わるまでの間、冷静に考えていた。
(偶然だとしても、このガキは始末した方がいい。場合によっては周りの奴らも)
そんなことを考えていると薬のデータが出来ていた。
その中に一人だけ、奴の手によって書き換えられた人物がいた。
『工藤新一:不明』
◆◇◆◇
「博士!」
「おぉ、新一。よく来てくれたのぉ」
コナンが博士から呼び出された訳…それは、
「それで?灰原は?」
「地下室じゃ…」
博士からの電話は、灰原が明日から学校には行かないということだった。いくら博士が理由を聞いても答えてはくれなかった。それで博士はとりあえずコナンに連絡をしたのだ。
「何かあったのか?」
コナンは昼間、灰原が組織の気配を感じたことを話した。
「まさか奴らに…」
コナンは博士の言葉に何も言えなかった。灰原の表情からして本当の可能性が高い。だが…
「俺はなんも気付かなかったんだよ…」
「新一?」
コナンは呟くように話した。
「俺はなんも感じなかったんだよ。前にあいつにさぁ?探偵の感ってやつで、あいつらの気配がわかるって言ったんだよ」
でも気付かなかった。もしかしたら自惚れていただけだったかもしれない。それでも…。
コナンはそのまま地下室へと降りて行った。博士は心配そうにコナンを見つめていたが、その背中に何も言うことはできなかった。
コンコン
コナンはノックをしても返事がないので、ドアを開けた。
「灰原?入るぞ?」
中では電気も点けずに灰原がパソコンに向かっていた。
「電気くらい点けろよな?」
「あら、誰も入っていいなんて言ってないわよ?」
コナンの言葉に灰原はいつものように返してきた。その様子がコナンには強がりに見えた。
「なぁ、明日から学校休むってどういうことだよ」
灰原はコナンの言うことがわかっていたみたいで、貴方には関係ないと間髪いれないで答えた。
「関係ないってことないだろう?博士だって心配してたし…」
「貴方が心配するようなことじゃないわ」
灰原の態度にコナンはいい加減頭に来た。灰原はパソコンに目を向けたままで、コナンの方を一度も向いていなかった。
「おい、こっち向け…」
コナンはこっち向けよと言い切ることができなかった。コナンの掴んだ灰原の肩は、小刻みに震えていた。
「灰原…」
「…あなたが気にすることじゃないわ」
「…なんで一人で抱え込むんだよ。俺達を…俺をもっと頼れよ」
コナンの言葉に胸が熱くなるのを灰原は感じたが、
「貴方には…関係ないの…お願いだから出ていって」
「灰原…」
「出ていってって言ってるでしょ!!」
灰原はコナンの手を振り払った。コナンはそれ以上何も言えなく、部屋を出ていった。
(工藤君…あなたのその優しさが、私をどれだけ苦しめているかなんて、考えもしないでしょうね)
灰原はコナンが出ていった後、静かに涙を流していた。
「新一、哀君は…」
博士の言葉にコナンは首を横に振った。博士とコナンはしばらく黙っていた。
「新一、そろそろ帰らなくていいのか?」
博士の家に来て2時間が経っていた。そろそろ蘭が心配して電話をかけてきそうだと思い、コナンは帰ることにした。
「博士、何かあったらすぐ連絡くれ」
「あぁわかった。明日は風邪ということになると思うがな」
コナンは帰り道、自分が何故これほどまでに拒絶されるのかわからず、強い喪失感と切迫感に襲われ、今自分は何が出来るのかを考えていた。
◆◇◆◇
工藤新一…高校生探偵で昨年の江戸川コナンの現れた日から行方が掴めずにいた。そう…あのトロピカルランドで取引があった日。
ジンもあの日、自ら薬を投与したことを思い出していた。両親は二人とも世界に顔の利く人物だ。特に工藤優作はインターポールにも顔が利くという。ならば真っ先に殺る必要がある。ジンはそう考えた。
「工藤優作に接触しろ。息子の消息について聞き出せ」
ジンは部下の一人に命じた。しかし部下は、工藤優作が相手では、組織のことを知っていたらそう簡単にはいかないだろうと言った。するとジンは…
「確かに。あの推理小説家は相当頭がキレると聞く。ならば…」
ジンは薄笑いを浮かべながら部下に最終的な作戦を言い渡した。
そして、それを近くで聞いていた人物がいた。
(クールガイ…)
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