#.36 日常
工藤新一に戻り五日が経った。その間に事件を解決した為、世間的にも工藤新一は元通りになっていた。
朝は幼なじみと一緒に登校して授業を受ける。そんな普通の日常を新一は求めていた。しかし、その普通から生じるものもあった。
「工藤の話は難しくてわかんねぇよ」
「なんつーか、マニアックな話が多いんだよな」
友人達との会話中に言われた言葉だった。考えてみると昔から友人と話が合わないことがあった。だが昔は、少なからず人よりも知識があると優越感を感じた。しかし…江戸川コナンから工藤新一に戻った今、何か物足りなさを感じていた。その歯痒さはわからない。蘭と会話をすると、
「新一は凄いね。何でも知ってて!」
そう言って笑顔で聞いてくれる。やっぱり昔はそれが嬉しかったし、そんな蘭が好きだった。だが、『戻った日常』が『変わらない日常』になった時、新一の心は戸惑っていた。
「ちょっと新一!ちゃんと聞いてるの?」
「え?何だって?」
「もう、明日十時に米花駅よ?遅れないでよね?」
「あぁ。わかってるよ」
じゃあ明日と言って歩いて行く蘭を見送った後新一も阿笠宅へと向かっていた。
◆◇◆◇◆
「よぉ宮野。コーヒー頼む」
「ここは喫茶店じゃないのよ」
当たり前のようにソファーに腰掛け、新一は志保にコーヒーを頼んだ。二人が口論を始めた頃、阿笠宅に三人の来客が現れた。
「おぉ!よく来たのぅ」
中に入った三人と中にいた二人はお互いの顔を見て驚いた。そのことに気づいた博士も困った顔をしていた。
「お姉さん…哀ちゃんにそっくり」
歩美の言葉に志保は微笑んで答えた。
「こんにちは。歩美ちゃん」
「歩美のこと知っているの?」
「えぇ。哀から聞いていたわ」
哀とは姉妹だけど、家庭の都合で苗字も違い、一緒に住むことも出来ないのと志保は言った。
「歩美ちゃん、光彦君、元太君、哀と仲良くしてくれてありがとう」
その言葉に三人は涙ぐみながら笑った。その様子を博士と新一は優しく見守っていた。
「それでね?志保お姉さん」
歩美は志保にべったりの為、光彦と元太はしょうがなく新一と話していた。そんな時、歩美の口から思いもよらない言葉が出た。
「今だから言うけどね?哀ちゃんはコナン君のこと好きだったんだよ」
「え!?」
その言葉に新一は思わず声を出してしまった。
「哀ちゃん、自分じゃ認めないけど絶対コナン君のこと好きだったよ!」
歩美の言葉に志保は、そう…と頷くだけだった。その後、歩美と志保は二人で何か話しているようだったが、新一は事件について熱心に聞いてくる光彦から逃げられないでいた。そして三人が帰り、新一も帰ろうとした時、博士は新一に明日の予定を聞いた。
「明日は蘭と出かける予定だけど?何かあったか?」
「いや…そのぅ…」
博士が言葉に詰まっていると、
「博士。あんまり工藤君を困らせるんじゃないわよ。たいした用事でもあるまいし」
「あん?何だよ?」
「何でもないのよ。ほら、もう帰りなさい」
新一は何か歯切れの悪い感じもしながら帰っていった。
「まったく…あの子達に会ったのはしょうがないとしても…」
「スマン…じゃが…」
「いいのよ。これで…」
◆◇◆◇◆
翌日。待ち合わせ30分前に蘭は新一を迎えにきていた。
「お前なぁ…」
「ごめん。なんか落ち着かなくて」
「たくっ。で?今日はどこに行くんだ?」
「ほら。杯戸町に新しくショッピングモールが出来たじゃない?あそこ行こうよ」
新一は了承し、二人は杯戸町に向かった。
「なんか新一、最近ぼーっとしてること多いよ?」
「え?そうか?」
「うん。体は大丈夫なの?一度病院に行ったら?」
「…そうだな。ありがとうな、蘭」
新一の言葉に蘭は恥ずかしそうに笑った。
(志保に診てもらうか)
その後も、二人はブラブラとお店を見て回り、その日は終わった。そこには軽い足取りで帰る新一と、重たい足取りで帰る蘭がいた。
◆◇◆◇◆
「博士!」
新一はドアを乱暴に開け、博士を問いただした。その新一らしかぬ行動に、博士は少しも同様しなかった。
「志保はどこだ!」
「…志保君は……」
博士の言葉を新一は信じられなかった。
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