#.01 震え
工藤新一が行方不明になってから一年が経った。高校の方は学校と警察の好意から、籍だけは置いてもらっている。もちろん行方がわかり次第に進級試験を行う。
その工藤新一こと、江戸川コナンは未だに組織の情報が掴めず、毛利探偵事務所で居候を続けながら、少年探偵団とともに二年生へと成長していた。
もちろん灰原も同じく。
◆◇◆◇
(はぁ…このままじゃもう一回小学校卒業しちまうよな…)
少年探偵団との帰り道、コナンはそんなことを思いながら溜め息を吐く。
「ハァ…」
「あら?溜め息なんか吐いてどうしたの?」
いつものように元太たちの後ろを歩いている灰原とコナン。灰原はコナンの元気のなさに気がついていた。
「別に〜、ただ奴らの情報が転がり込んでこねぇかな〜って」
灰原はコナンにとって、自分のあるがままを表せることができる数少ない人物だ。そのため、コナンはこの一年間で灰原によく相談なんかをしていた。
「そうね。いくつか試作品は作ってみたけれど、本物には程遠い物しか作れないしね」
「そうだよな〜って…お前、また無理に自分で試したりしてないんだろうな?」
灰原は解毒剤の試作品が出来ては自分で試すを繰り返し、ある日灰原は副作用で高熱を出し、倒れてしまった。
解毒剤の副作用のため病院にも行けず、博士とコナンはただうろたえていた。
「本当にあの時は焦ったんだぜ?」
「してないわよ。もう博士に心配かけたくないしね」
灰原は一度マウスに試そうかと思ったが、組織にいた頃に数え切れないほどのマウスが犠牲になったのが忘れられなく自分で試したのだ。
コナンはならいいけどと、少し疑いの目を向けながら灰原を見る。
「あ!高木刑事だ!」
歩美の声に少年探偵団は、聞き込みを行っていると思われる高木刑事に駆け寄った。
「やぁ。今帰りかい?」
「高木刑事、何か事件でもあったの?」
コナンの言葉に高木刑事は、強盗殺人事件があったことと、その内容を詳しく教えていた。
少年探偵団と警視庁は、もはや他人とは思えないほど顔を合わせていた。キャンプ等どこかへ出掛けた時や、学校帰り等あらゆる場所で事件に遭遇しているため、月に何度か…もしくは週に一回は顔を合わせていた。
もちろん少年探偵団はやる気満々。そして…
(工藤君もやる気満々ね)
長くなりそうだと思った灰原は先に帰ろうと思ったが、
「今回の事件、何か特殊な薬品を使っている可能性があるんだ。だからパスしないでくれないか?」
コナンは灰原に耳打ちする。鑑識以上の知識、それに加えて冷静な頭脳を持つ灰原は、時としてコナンの気付かないこと、わからないことの答えを持っている。
「ハァ…何度も言うけど私はあなたの助手じゃないのよ?」
灰原は溜め息混じりにコナンにジト目で言う。
「いや、助手じゃなくて相棒かな」
こんなやりとりが日常茶飯事なほど、事件遭遇率が高い。
「あぁ!また二人で内緒話をしてましたね!」
「お前ら抜け駆けすんじゃねーぞ!」
「歩美たちにも教えて!」
二人の話に気付いた三人は、何度もコナンには抜け駆けされているので、すぐに問い詰める。そんな三人にコナンは何でもないとごまかし、灰原にも同意を求める。
「えぇ。江戸川君が今度みんなに冷たい物でも奢りたいからお金を貸してほしいって頼まれただけよ」
「おいおい…何だよそれ」
灰原の言葉に元太は喜び、光彦は灰原さんにたかんないで下さいと怒り、歩美はコナンがお金がないことを心配する等、三者多様だった。
コナンの弁解も空しく、少年探偵団は全員で捜査を始めた。
◆◇◆◇
米花町にある廃ビル。そこに上から下まで真っ黒い服装をしている人影があった。
「ターゲットは必ず例の場所を通る。抜かるなよ」
双眼鏡でポイントを確認しながら指示を出している金髪で長髪の男。すると、ポイントから離れた場所に視点がくぎづけになっていた。
「あのガキ…」
「どうかしたんですか?アニキ」
部下の言葉が耳に入っていないほど、男はある子供を見ていた。
赤みがかった茶髪に見覚えのある顔立ち。…あの『裏切り者』に似過ぎている顔。
(他人の空似にしては『奴』に似過ぎだ。もしこれが本当に奴だとすれば、一応つじつまは合う…)
そう思えば思うほど、男は嬉しさに体が震えた。
「クックック…」
「アニキ?」
「ウォッカ…帝丹小学校のデータを集めろ」
男はそういうと今の任務に戻った。
(やっと見つけたぜ…シェリー)
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