#.18 決戦前夜
灰原は組織に連れ戻されてから、一度も研究室から出ていなかった。そのため、時間の感覚も日付の感覚もなかった。さらに、この研究室には灰原一人だけで、話し相手も適度に来るジンくらいだった。灰原が研究をしていると扉が開く音がした。灰原はジンだと思ったが、その気配は違った。
(この気配…!)
灰原の目線の先にはいたのは、千の顔を持つ魔女…ベルモットだった。
「ベルモット…」
「あら、まだ戻ってなかったの?」
ベルモットは灰原を見ると、嘲笑うように灰原を見る。
「…何か用?」
「あら、ご挨拶ね?せっかくあなたのために情報を持ってきて上げたのに。それとも…ジン以外はお呼びじゃなくて?」
その言葉に灰原は嫌気がさした。ベルモットはシェリーとジンの過去の関係を知っている。そしてベルモットの情報を聞いた。
「私は組織の命令で、阿笠博士の家を見張っていたわ」
「まさか…!」
ベルモットの言葉に灰原は嫌な予感がした。だがベルモットは、あくまでも見張っていただけだと言った。しかし、
「ここ数日…どこかの鼠が我々組織を探り、阿笠宅にはFBIがうろちょろしている…。これは偶然かしら?」
その言葉に灰原は息を呑んだ。コナンが簡単に諦めるはずがない…だが、この場所はわからないはず…。灰原はいろいろな考えを巡らしては消えた。その様子を見ていたベルモットは、
「心配して?FBIのことは組織に報告してないから」
その言葉に灰原は驚いてベルモットを見た。ベルモットはいつもの笑みを浮かべていた。その真意がわからないまま、ベルモットは帰ってしまった。
(もしベルモットの言うことが本当だとすると…)
間違いなくコナンは来る。灰原はそう思った。
(ダメ…来てはダメ…あなたはこの世界に関わってはいけないの…!)
そう思ったところで灰原の気持ちはコナンに届かない。そしてこの後来たジンの言葉で、灰原の気持ちは大きく揺れた。
「近いうちにアジトを変える。準備はしておけ」
灰原はジンの言葉に理由を聞くことが出来なかった。もし灰原の考えが本当にそうなら…
(お願い…!ここには来ないで…)
そして灰原は、自分でも気付かないうちに呟いていた。そしてそれは、ジンに聞こえていた。
「工藤君…」
◆◇◆◇
コナンは学校の下校途中、いつものように探偵団と歩いていた。
「哀ちゃん…結局今週は来れなかったね…」
「そうですね…来週は来れるといいんですけど…」
探偵団は今週ずっと休んでいた灰原のことを心配してた。
「じゃあよ!灰原の風邪が治ったらパーティーしようぜ!旨い食い物いっぱい用意してよ!」
元太の言葉に二人は賛成した。
「コナン君もいいよね!」
「あぁ。きっと喜ぶぜ」
コナンの言葉に三人は嬉しそうに笑い、いろいろ予定を立て始めた。そんな三人を見てコナンは思った。
(コイツらにはなんだかんだ助けてもらったよな…)
解毒剤の飲めば三人とは別れることになる。探偵団と過ごした日々はコナンにとって、いつの間にか当たり前のことで…掛け替えのない日々となっていた。弟妹として見守ってきたコナンにとって、この別れは感慨深いものがあった。
そしてコナンはFBIとの最終調整を行い、探偵事務所に一度帰った。
「明日から二泊三日のキャンプに行くから」
「二泊も?」
明日は祝日ため、特に違和感なく蘭の許しを得ることが出来た。
「気をつけるのよ?みんなとキャンプに行くと事件に遭いやすいから」
「大丈夫だよ!」
そのコナンの表情が、どうしても『あの日』の新一と被ってしまう。
「本当に気をつけてね?」
「わかってるよ。おやすみなさ〜い」
そう言って部屋に入ったコナンは、蘭の様子に気がついた。
(蘭のやつ…何か感じているのか?)
一度はそう考えたコナンだったが、今は別のことで頭がいっぱいだった。
(灰原…必ず助けてやるからな…待ってろよ!)
そして探偵事務所から離れた場所で、同じ目的のために準備をしている人物達がいた。
「さぁ…ショーの始まりだ」
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