#.15 コナンの想い
優作と有希子はこれまでの詳しい経緯を聞いた。灰原のこと…組織のこと…キッドのこと…FBIのこと…。
「やっぱり危険なのね…」
有希子はそこで一旦言葉を切って、目元を拭って言った。
「新ちゃん…必ず帰って来るのよ!それにあなたは蘭ちゃんだって待たしてるんだから」
「あぁ…わかってるよ」
コナンはその時、一瞬苦しそうな表情をした。その表情を優作は見逃さなかった。
「新一、今日も蘭君の家に帰るのか?」
優作の言葉にコナンは頷いた。余計な不安は与えたくないからと。
「…有希子がいる今なら江戸川コナンを消すこともできるのだぞ?」
その言葉にコナンは首を横に振った。そしてコナンが帰り、有希子も家へ戻ると博士と優作は二人になった。
「新一はあの子のことを怨んではいないのだな」
優作は自分の思ったことを素直に言った。その言葉に博士は、今までも命懸けで灰原を守っていたと言った。
「自分をあんな目に遭わした張本人を、なぜそこまでして守れるのか…何か心辺りはないか?」
「…あるとしたら、哀君のお姉さんのことじゃろうな」
「お姉さん?」
博士は優作に灰原の姉…『宮野明美』について話した。
「なるほど…自分のせいでお姉さんが亡くなったと感じているのか…」
その言葉に博士は、優作には何か違う考えがあるのだと思って聞いた。すると優作の口から、
「もしかしたら新一は、その子に好意を抱いているんじゃないかと思ったんだが…」
「新一が哀君を?…うーん、本来なら同年代だとは思うが…」
思いも寄らない言葉に驚いた博士だが、あの二人からは考えられなかった。そして優作は続けた。
「少なくとも新一は、今蘭君のことを『ただの幼なじみ』としか見てないようなんだ」
その言葉には博士も思い当たる節があった。日常会話の中で、新一の口から蘭のことを聞くのが減っていたのだ。
「…新一にとって哀君は、自分自身でいられる数少ない人物じゃから…」
博士はそれ以上の言葉は言えなかった。もしそれが本当なら、これから先の『彼ら』の運命を大きく変えることになるからだ。
「とにかく今は新一と、その子の無事を祈るしかないがな」
優作の言葉に博士は頷いた。
◆◇◆◇
コナンは探偵事務所に帰る途中、蘭と灰原のことを考えていた。
(蘭はずっと俺のことを待っていてくれている…だが…)
コナンはそこで足を止めて考えた。最近、蘭が自分のことを待っていてると考えるとコナンは胸が苦しくなる。
(前はこんな感じなかったんだけどな…)
コナンはそう思いながら、前まではこんな些細なことでも灰原に相談していたと思った。
(あいつと話すと落ち着くんだよな…必要以上のことは話さなかったけど…)
でもあいつは答えを出してくれた。蘭とは違う…。コナンはそう思った。
(蘭のことはずっと大切に思ってきた。それこそ命懸けで守ってきた。だがあいつは…)
コナンは灰原を守るのではなく、『守ってやりたい』と思っていた…。人一倍強がりで、何でも溜め込んでしまう。そして…姉もいなくなり、頼りになる身内がいない灰原を…。
この二人はどこか似ている部分がある。だが、最も違う部分は…
(俺って…あいつに何か頼みごとされたことあったか?)
蘭と灰原の決定的な違い…それは『自分を頼ってくれる』ということだ。
(俺はあいつに頼られたいのか?)
コナンは今、自分がどこを向いているかわからなくなった。蘭が大切…好きというのは明確。だが…灰原も大切だ。これは灰原がいなくなってわかった気持ちだ。
(蘭と灰原か…)
コナンは重たい足取りで探偵事務所の扉を開けた。
そしてその日の夜…コナンの携帯にジョディー先生から連絡が入った。
「突入は金曜日。水曜日と木曜日に最終調節をしましょう」
運命の歯車はもう止められなかった。
|