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過去と未来は隣り合わせ
作:SAI



#.14 親心


『これであなたの体は完璧に工藤新一に戻るわ。あなたの大切な一年という長い月日を奪ってしまって本当にごめんなさい。

これからあなたは組織のことも…私のことも忘れて生きてちょうだい。

彼女のこと大切にしてあげるのよ。



最後に…今まで守ってくれてありがとう。

        灰原哀』



 あくまでも自分の気持ちは書かずに、最後まで自分らしさを見せた簡潔な手紙を灰原は書いた。あとの三枚は博士宛て。今までの感謝の気持ちと謝罪の気持ち。それから博士の体を気遣った手紙と、灰原哀を消してほしいという手紙だった。



(バーロー…何が守ってくれてありがとうだ)



 コナンは手紙を握る力が強くなる。自分は何もしてやれなかったのに…。それに灰原の『手書き』を見て、今も灰原は強がっていると思った。博士はまた、手紙を読みながら涙を豪快に流していた。そしてコナンは、『灰原哀を消してほしい』という言葉について考えていた。

 自分のもとに送られてきた解毒剤。これは十中八九本物だという勘が働いていた。となると、灰原も解毒剤によって本来の姿に戻っている可能性が高い。しかし…



「博士…灰原はもとの体に戻ったと思うか?」



 その言葉に博士はわからないと答え、



「新一は戻るんじゃろう?」



 博士はコナンに聞いた。その言葉にコナンはしばらく解毒剤を見つめた。…これを飲めば工藤新一の復活。そのために今まで頑張ってきたのだ。



「新一…君はもとの姿に戻って、もとの生活に戻った方がいいんじゃないか?」



 コナンは博士を見た。



「わしは哀君に戻ってきてほしい…じゃが君は解毒剤のために頑張ってきたのじゃろう?後はFBIに任せていいんじゃないのか?」 



 コナンは博士の言葉に怒りが沸き上がってきた。



「ふざけんな!!俺は解毒剤のためだけに奴らを捜してたわけじゃねぇ!奴らをぶっ潰すために捜していたんだ!今さら解毒剤が手に入ったからって引けるかよ!」



 コナンが勢い良く博士に反論すると、博士はコナンにスマンと謝った。その言葉にコナンは落ち着きを取り戻した。博士は自分のためを思って言ってくれたこと…それに、誰より灰原に戻って来てもらいたい博士にとって、コナンに言った言葉は辛かったはず。コナンはそう考えると、博士に悪いことをしたと思った。



「大丈夫だ博士。俺が必ず連れ戻してやっからよ」



 コナンは博士に謝る代わりにそう言った。その言葉に博士は頷き、



「それで、もとには戻るのか?」



 コナンは博士の言葉に少し時間を空けて答えた。



「いや…俺は『江戸川コナン』として、この事件を解決しなくちゃならねぇ」



 だから今は飲まない…そう言った。博士はその言葉に少し感謝したが、そこまで江戸川コナンにこだわる必要があるのか聞いた。



「さぁな…。俺も自分でも良くわかんないんだけどさ?ただ、この事件だけは江戸川コナンの姿で解決したいんだ」



 コナンはそう言って、次に『灰原哀』について話した。



「灰原のことはどうする?学校には何らかの連絡はしなくちゃいけねぇし…」



 そしてコナンは博士の答えを待った。自分の考えはあるが、灰原のことは博士の考えを優先させたかったからだ。



「わしは…また『休学』という形がいいと思っておる。哀君が帰って来る時のために」



 その言葉にコナンは笑顔で頷いた。自分も同じ考えだからだ。



「新一、本当にそれでいいのか?」



 コナンは声がした方を勢い良く振り向いた。 



 
◆◇◆◇





 コナンは声で誰かはわかったが、姿を見て改めて驚いた。



「父さん!それに母さんも…」



 その二人の表情は、いつもの冗談混じりの笑みはなく、いつになく険しい表情だった。



「どうしたんだよ急に?」



 コナンの言葉に優作と有希子は言いづらそうな表情を浮かべ、優作が言った。



「あの日の電話の会話が盗聴されていたんだ」



 コナンは優作の言う『あの日』がわかった。そしてコナンは優作の言葉にさほど驚かず、そうかと言った。組織に『江戸川コナン=工藤新一』とバレているので、特に驚く必要もなかったのだ。



「話は聞いていたわ…。灰原さんが掠われたのね…」



 有希子の言葉にコナンと博士は何も答えられなかった。そして有希子は続けた。



「ごめんなさい…私達のせいで…」


「母さん達のせいじゃねぇよ」 



 コナンの言葉に有希子は違う言葉をぶつけた。



「ねぇ新一?今あなたの気持ちは聞かせてもらったけれど…親の私達からしたら解毒剤を飲んでもらいたいわ」



 有希子の言葉に優作が続けた。



「確かに私達は親らしいことはしてやれなかったかもしれない。だが、親として望むのは子の幸せなんだ。今のお前は、組織の本拠地が見つかり次第乗り込む勢いだ」


「あぁ、そのつもりだ」 



 優作の言葉にあっさりコナンは頷いた。そのコナンの言葉が、何を言っても聞く耳を立てないと態度を表していた。そんなコナンに優作は真剣な表情で言った。



「新一、お前のことだから考えがあるのだろう。だがこれだけは約束してくれ」



 そう言うと優作はコナンの肩をがっしりと掴んだ。



「絶対に生きて帰って来ると約束してくれ」



 その言葉にコナンは頷き、有希子は涙を流した。それに気付いてコナンは言った。



「大丈夫。FBIだってついてるんだ。必ず灰原と一緒に帰って来る」



 その言葉に博士は涙を流し、優作は何か違和感を感じた。












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