#.12 思わぬ贈り物
FBIとの密会が終わった日、コナンは一度探偵事務所に帰っていた。
「コナン君!博士の家に泊まるなら前もって言ってっていつも言っているでしょう!」
「ご、ごめんなさい…」
そう言ってコナンは頭を隠す。その様子に蘭は思わず笑う。そしてコナンは、いるはずの二人の姿がないことに気がついた。
「あれ?平次兄ちゃんと和葉姉ちゃんは?」
「なんか服部君が急に帰るって言って、和葉ちゃんも一緒に帰っちゃたの」
「へー、なんかあったのかな?」
コナンの言葉に蘭はなんだろうね?と言っていた。
(あいつのことだから、何か考えているんだろうけどな…)
コナンは昨日の服部とのやり取りを思い出しながら思った。
「コナン君、今日はちゃんと家にいるんでしょう?夕食何がいい?」
「う〜ん…オムライス!」
コナンは元気いっぱいにそう言うと蘭は笑顔で、はいはいと言って台所に向かった。
「それよりコナン君?あんまり博士に迷惑かけたらダメよ?」
「は〜い」
「博士が良くても博士の家には『哀ちゃん』だっているんだから」
その言葉にコナンの鼓動は波打った。
(灰原…)
そしてコナンは気がついた。灰原がいなくなったことを誰も知らないことに。明後日からの学校のことも考える必要があると思い、コナンは明日も博士の家に行こうと考えた。
「ちょっとコナン君!聞いてるの?」
「あ、うん!わかってるよ!」
台所から叫んでいる蘭にコナンは慌てて返した。
そして夕食時、蘭は明日は朝から夕方まで部活の練習があると言った。
「それで悪いんだけど、お父さんとコナン君のお昼はポアロで済ましてくれる?」
「あ、僕は博士の家に行くから大丈夫だよ!」
「また博士の家に?コナン君?さっき言ったばかりじゃない」
蘭はコナンに険しい顔で近寄る。
「だって博士の作ったゲームまだクリアしてないんだもん…」
そのコナンの怯えたような、お願いしているような表情に蘭は弱かった。
「それにしてもお前は博士の家が好きだな〜。まさか、あの灰原って子に気があるんじゃねーのか?」
小五郎はいかにもおやじ臭いことを言って笑った。それにコナンは顔を真っ赤にして反対した。
「そ、そんなんじゃないよ!」
「そんなムキになるんじゃね〜よ」
小五郎はそう言ってまた笑った。コナンは、たくっと心で呟き食事に戻った。
(灰原はそんなんじゃねぇよ…それに灰原は今いないんだ…)
コナンはそう考えると食事が喉を通らなくなってきた。そしてそんなコナンに蘭は気づいた。すると、何故か切ない気持ちになった。弟として見守ってきたコナンに対する気持ちなのか…それとも…
(最近こんな気持ちばっかり…)
そう思うと蘭も食事が進まなくなっていた。
◆◇◆◇
翌日、コナンが起きるとすでに蘭はいなかった。コナンは蘭が作っていった朝食を食べ、阿笠宅に向かった。
ピンポーン
コナンはインターホンを鳴らすが、中から返事が帰って来なかった。そしてコナンは郵便受けを見てみると、そこには三日文の郵便物が溜まっていた。そして扉に手をかけると、カギはかかっていなかった。それにコナンはため息を吐き、中へと入る。
「博士、カギくらいかけろよな」
コナンは大量の郵便物をテーブルに置き、ソファーに座っている博士を見た。
「おい博士!聞いてるのか!」
「ん?…おぉ、新一か…」
そう言ってこっちを見た博士の目は、真っ赤に腫れ、その手にはアルバムが握られていた。そこには、この一年で博士が撮った灰原の写真があった。その一枚目は、
「この写真…」
それは博士が灰原のために買ってきたカメラで、試し撮りをした灰原とコナンのツーショットだった。
「少しは笑えなかったのかねぇ…」
コナンはそう呟き、この日のことを思い出した。
◆◇◆◇
博士が意気揚々と帰って来て、たまたま居合わせたコナンと灰原にカメラを見せた。
「哀君と新一、ちょっとそこに立ってもらえんか?」
「パス」
「おい…」
博士の言葉に灰原は即答し、コナンは苦笑した。しまいには、
「試し撮りなら工藤君だけで十分よ」
そこまで言われたらコナンも黙っていられず、
「んなこと言わねぇで撮ってもらえばいいじゃねぇかよ。博士だって、お前のために買ってきたんだからよ」
コナンの言葉に灰原は深く息を吐いて承諾、博士の指定した場所に立った。そしてコナンはその横に立った。
「何であなたも写るのよ」
「いいじゃねぇか。せっかくの写真なんだからよ!」
コナンはそう言って笑う。
「これじゃあ、せっかくの素敵なモデルも台なしね」
「コラ。どういう意味だよ」
会話をそこでいったん止め、二人はカメラに目線を合わせた。灰原はいつものクールな表情で。コナンは愛嬌のある笑顔で。
◆◇◆◇
コナンはそんなエピソードを思い出し苦笑した。そして、二枚目のコナンが撮った博士とのツーショットでは、灰原は柔らかい笑みを浮かべていた。
(博士とは笑顔なのにな…)
そう思いながらコナンはアルバムを見ていく。所々に真新しい濡れた後があるのは気にしないで。そして段々笑顔が増えくるのが写真を通してわかった。
(いっつも笑顔でいればいいのにな〜)
コナンは写真を見ながら無意識に思った。
「新一、これはなんじゃろうか?」
そう言ってコーヒーと一緒に博士が持ってきたのは、切手も宛名もない封筒だった。
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