#.10 交渉
「すみませんが、私もその話に参戦させてもらえませんか?」
音もなく忍び寄ったその男は、白のベールに包まれ、不敵な笑みを浮かべながら平然と言ってきた。
「お前は…!」
「キッド!」
コナンと平次はあまりに突然だったが、すぐに敵意を表した。しかしキッドは、その表情を変えないまま話した。
「フ…今日は交渉に参上しただけですよ。探偵さん達」
「交渉だと?」
キッドの言葉にコナンは聞き返した。本来であれば敵同士である者。その人物が言い放つには、あまりにも考えにくいものだ。
「奇しくも、私も貴方方と同じ組織を追っていましてね?」
「何やって!?」
その言葉に平次が驚きを隠せなかった。
「私と手を組むと言うなら、私の出す条件に従ってもらいたいのですが?」
「その話を本気で信じろって言うのか?」
コナンはキッドに食ってかかる。するとキッドは、表情を崩さないで話す。
「私がわざわざ予告状もなしに来た理由が他にあると思いで?名探偵」
「…お前が奴らの何を知っているっていうんだよ」
「貴方が今、一番必要としている物ですよ」
その言葉にコナンは構えていた麻酔銃を下げた。服部はコナンの答えを待っていた。
「…そっちの条件は?」
コナンの言葉にキッドは嬉しそうに笑った。
「私のことを他言しないこと。私の素性を詮索しないこと。情報は常に交換し合うことの三点です」
キッドはそう言った。その言葉に、少しの間を空けてコナンは了承した。
「えぇんか工藤?」
服部は心配そうに声をかける。
「あぁ。こいつの言葉を信じるしかねぇ。情報はいくら合っても困らねぇしな」
その言葉にキッドは満足そうに笑った。
「では、さっそく情報交換といきましょうか」
「その前に聞かせろよ。お前が奴らの何を知っているかを」
その言葉にキッドはフッと笑いながら答えた。
「さすが名探偵。抜かりはないようですね?」
「まだ完全に信じ切っちゃいねぇからな」
その言葉にもキッドは表情を崩さないで話した。
「私の情報は一つ。それは最大で最高の切り札です」
その言葉にコナンは、まずこちらから話せと言っていると気付いた。
「ならこっちの切り札を除いて、知っていることを話そうじゃねぇか」
コナンはそう言うと、この一年間で調べ上げたことをキッドに話した。バックにはFBIがついていることも。
切り札を除いた全てのことをコナンはキッドに伝えた。
「なるほど。ベルモットとジンと呼ばれている人物を潰せれば、組織へのダメージは確実なものというわけですか」
キッドはコナンの話を満足そうに聞き終えた。
「さぁ今度はテメーの番だ」
コナンはそう言ってキッドを見る。
「私は『組織の本部』の場所を調べました」
「何!?」
「なんやって!」
キッドの思いもよらない切り札に二人は驚いた。
「それで、場所は!?」
コナンがキッドに食いつくように聞く。
「場所は茨城県の外れに位置しております」
「茨城県…」
そこに灰原がいるかはわからない。だが、組織の本部さえ潰せば…コナンはそう思った。
「じゃ、じゃあ早くそのことをジョディー先生に知らせねば!」
博士はどこか期待を込めたように言った。
「それで?貴方は後何を隠しているのですか?」
キッドは盛り上がっている博士を無視してコナンに聞いた。
「…組織のボスのメールアドレス」
その言葉にキッドより、服部の方が驚いていた。
「お前、そんなことまで知ってたんか!?」
「よろしければ、そのメールアドレス教えて頂けますか?」
キッドは服部も無視して、コナンに聞いた。コナンは一瞬躊躇したが、アドレスをキッドに教えた。キッドはコナンのブッシュ音を聞いて、『七つの子』ですかと呟いていた。
「では名探偵、今宵はこれにて。次に会う時は、世紀末の鐘の音が鳴り止むころに…」
そう言うとキッドは閃光弾の光とともに消えていた。そして、キッドのいた所にはカードに書かれたメールアドレスが薔薇の花と一緒に置かれていた。
「相変わらず気障な奴っちゃな〜」
服部はキッドの立ち去った後を見てそう呟いた。
「でも、何であいつが組織のことなんか調べてはったんやろな?」
「さぁな。だが、お陰でいい情報が手に入った」
コナンはそう言って笑みを浮かべた。服部はそのコナンの表情に、いつもの工藤だと安心した。
「とりあえず、ジョディー先生に連絡するか」
「大丈夫なんか?キッドのこと話されへんのやろ?」
「あぁ。ま、何とかなるだろう」
そう言ってコナンは、ジョディー先生に電話をかけた。
「あ、ジョディー先生?奴らのアジトがわかったんだけど、ちょっといいかな?」
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