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  the keys 作者:羽村奈留
第38話:コトック家10
「オフェーリア」
 幼なじみで美しかったオフェーリア。でも今は、床に広がる血の海の上で首と胴体が切り離されて無惨な姿で横たわっている。
「愛してる。オフェーリア」
 ラーグは死体となったオフェーリアに全ての愛を捧げながら跪く。せめて頭を胴体に戻そうと思い、床に転がっているオフェーリアの頭を拾う。だが、ラーグは自らの意思によりオフェーリアの頭を手放してしまった。
 オフェーリアの頭はゴトリと音を立てて床に落ち、転がって顔をラーグに向けた。多量の血を吸って赤黒くなってしまった巻き毛。それに覆われた顔は焼けただれて左の皮膚と肉が剥がれ落ち、左頬の骨が見えている。唇も左半分が無く歯と歯茎が剥き出しになっている。当然薄皮である両目の目蓋も焼けてしまって無い。剥き出しの気味の悪い目玉がラーグを見て「見捨てないで。助けて!」と訴えているように見える。
「オフェーリア」
 ラーグは妻の名を呼ぶが、気持ちが悪くて近づけずオフェーリアの頭から後退りをする。同時にラーグの脳裏に蘇る戦争の記憶。魔法攻撃を受けて飛び散る肉片。惨殺される兵士。ウジが湧いた死体。目を背けても鼻から入ってくる腐敗臭。その後すぐにラーグは床に吐寫物をぶちまけた。胃液の酸で喉が焼けて咽ながら、もう変わり果てた妻を見たくないと自分の顔を両手で覆う。
「なぜだ? 戦争は1年前に終わったというのに」
 ラーグの叫び声に反応して、新たな声がする。
「今声がしたぞ」
 天井から男の声がする。
 ラーグは天井を見上げる。
 天井を踏み歩く音がして、抜けた天井の穴から黒い覆面をした剣士が覗いて下をうかがう。
「いた。一人見つけたぞ」
 黒尽くめの剣士は、仲間を呼ぶと天井の穴から飛び降りた。
 続いて黒尽くめの剣士が次々と降りてくる。手にある剣には全て魔法器がついている。
Wandering Network


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