第35話:コトック家7
戦争はもう終わっているというのに、どうしてこんな事になってしまったのか。ラーグには訳が分からない。
「母上」
「……ラーグ」
ラーグの呼びかけに、キリエラは弱々しい声で答えた。キリエラはまだ生きていたのだ。
ラーグは泣きながらキリエラに駆け寄り、跪いてキリエラの腹に刺さった剣を抜こうとする。
「剣を抜いて止血します」
キリエラはラーグの腕に触れる。
「ラーグ。もう剣を抜く必要はありません」
「何を言っているのです。治癒の魔法を施せば母上は助かります。今すぐ癒しの魔法使いを呼んで」
キリエラは、助けを呼ぼうとするラーグの手を握る。
「私は、もう助かりません」
「母上。何を言うのです。そんな事はありません」
ラーグは泣きじゃくる。
キリエラは自分の左耳にあるイヤーカフに触れた。
「この耳にある鍵が、私の死を悟り、次なる継承者を求めているのです」
「イヤです。母上。死ぬなどと言わないで下さい」
ラーグは首を横に振る。
「ラーグ。私の話を聞いて」
「イヤです。母上。イヤだ」
「ラーグ。母の言葉を聞くのです!」
キリエラはコトックを統べる長として、訪れる母の死を拒絶するラーグに強く言った。
ラーグはキリエラを凝視する。
キリエラは手を伸ばしてラーグの頬を伝う涙に触れ、息子を諭すために頬を撫でながら言う。
「神々は、この地に降り立った時、何人かの賢者に鍵を託しました。その一人が私たちの祖先、灰色髪の賢者コトックです。あなたが知っているとおり、賢者コトックが住んでいたこの地の名前にもなっています。私たちコトックの名を持つ者は、代々その血を受け継ぎ、強大な魔力を操り、コトックの地に暮らす民を守ってきました。今度は、あなたがその責任を担うのです」
Wandering Network
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。