東方な日々 魔理沙編
作者:春風夜風
「マスタースパーク!!」
虚空に向かって魔砲を放つ。
空は赤く、海は広かった。
・・・海ではないけれど。
何故、私がこんなことをしているかというと
・・・・・・うん。話せば、長い。
私は魔法使いの霧雨魔理沙だ。
職業、魔法使い。または黒魔導士。
魔法使いになる条件は魔法が使えることだ。当たり前だ。
魔法の使えない魔法使いは、ただの“使い”、または“導士”だ。
あ・でも“導士”って響きは嫌いじゃないかもしれない。
まあ、とにかくそんなわけで私は魔法が使える。
使えるのだが、残念ながら攻撃魔法ばかりを覚えてしまった為、私の魔法は生活の役には余り立ってくれていない。
一応、森でマジックアイテムの専門店をやっているのだが、そんなものを買いに来る客はまずいない。
なので私は、庭で育てている食用キノコを人里で売り捌いて、生活の足しにしている。
最近では、竹林の薬師に薬用キノコの納入も行っている。こちらの方が稼ぎはいい。
だが、私は思う。
これでは私は、魔法使いではなくてキノコ使いではないか、と。
魔法使えるのに。箒に乗って空だって飛べるのに。
キノコ使い霧雨魔理沙!くらえ必殺キノコスパーク!
・・・嫌過ぎる。
なんとも嫌過ぎる。それはよろしくない。
紅白巫女が脇を隠すくらい、よろしくない。
まあ、あいつも寒けりゃ、上着くらい着るだろうけど。
とにかくそんなのはどうでもよくてキノコ使いってのが、何か嫌だ。
大体キノコって何かじめじめした感じがするから、私こと、さっぱり系魔法使い
霧雨魔理沙には似合わない。
私は、新たな仕事を求めて旅立った。
「で・私のところに来たと」
私が、まず向かったのは吸血鬼の住む紅魔館。その地下にある大図書館。
そして目の前に居るのはこの図書館の主で、しっとり系魔法使いのパチュリー・ノーレッジだ。
同じ魔法使い同士、何かいい話を知っているかもしれない。
「・・・そうなんだぜ。何かないか?」
「本、返せ」
・・・どうにも話の雲行きが怪しくなってきたので退散することにした。
次に向かったのはこの館の主、吸血鬼のレミリア・スカーレットのところだ。
だが、正直あまり期待はしていない。
コイツはきっと、非労働者だ。だって、ちっこいし。
「・・・・・・仕事、あるわよ」
・・・ふむ。意外な答えだった。
仕事内容は荷物の運搬。
なんでも、レミリアの家系は代々、貿易を生業としているらしい。
商人どもの貿易の仲介人をして利益を得ている、とのこと。
よくわからない話だったが、奴はその一言で大勢の商人を動かすくらいの影響力を持っているそうだ。
・・・驚いた。マジもんのお嬢様だったらしい。
そして現在、西の里から手に入れた貿易品を、紅魔館を経由して南の里の商人の元まで運搬する途中だった、との事。
貿易は時間との戦い。私の箒のスピードが役に立つ、ということだった。
快諾した私は、荷物を受け取り、箒に乗って飛び立った。
鼻歌交じりに空を飛ぶ私。さながら魔女の宅急便。
あ・でも黒猫が足りない。藍のやつに橙でも借りるか。
ん?でもそういや橙って黒猫なのか・・・?
どうなんだろう?
どうでもいいか。
そんな益体の無いことを考えているうちに目的地に到着。
どうだい。初仕事、大成功だぜ!
荷物を商人に渡す。しかしこの商人、どうにも胡散臭そうな感じがする。
コイツは本当に商人なのか?と疑いたくなるような怪しい格好をしていた。
おそらく中国系のマフィアに違いない。
となると私は一体何を運ばされたのか激しく気になるが気にしないことにする。
しばらくすると荷物の確認をしていた謎のマフィアが喚きだした。
「・・・オジョーサン。商品が足りないアルヨー」
「えっ・・・?」
なんと!
急いでリストを確認してみる。本当だ。一つ足りない。
館を出るときに荷物の確認はしてあるから、飛んでいるときに落としたことになる。
「困ったヨー。困ったヨー。」
困り果てたマフィアが、じっと私を見つめてくる。
そんな目で見るな。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!必ず見つけてきてやるから!」
そう言って私は、再び空へと飛び立った。
・・・・・・。
正直、どこに落としたかなんて見当もつかない。
結構な距離を飛んだはずだ。
とりあえず途中、上空を通った森の中を捜すことにした。森の中で落としたなら、木の枝に引っかかって品物は無事かもしれない。
どこかの映画みたいに、絵描きが拾ってくれている可能性も考慮に入れながら、森の中を飛んだ。
・・・しかし、やっと見つかったそれは、商品としての価値を全く無くしていた。
見つかっただけマシかもしれない。
だが、レミリアからの依頼は失敗だった。
おそらくあの商人がレミリアに事の顛末を報告しているだろうが、一応見つかったことを伝える為、私は紅魔館に向かって飛んだ。
日は、もうすぐ暮れようとしていた。
「・・・魔理沙」
レミリアは帰った私を見つけると、にっこり微笑んで私に向かって近づいてきた。
そして、私の手の中のそれには目もくれずに、立てた親指を真横に切った。
・・・クビということらしかった。
私の初仕事は、挽回の機会を与えられることなく終わった。
「マスタースパーク!」
紅魔館から少し離れた湖の上空。
燃えるような夕日の中、私は魔砲を撃った。
「マスタースパーク!マスタースパーク!」
明日からまた、キノコを売る生活に戻る。
別に、キノコが嫌いなわけではない。
ただ私が幼い頃夢見た魔法使いとは、違っていた。
それが悲しいわけでもない。けど、
明日もまた、こうやってスパークを撃つのだろうか。
「マスタースパーク!マスタースパーク!」
西の空に夕日が沈み、月が顔を出しはじめた頃、
ふらふらと飛んできた氷精チルノがスパークに当たって湖に落ちた。
・・・・・・。
うん。
大丈夫。もう大丈夫。
また頑張れる。
・・・落ち込んだりもしたけれど、私は元気なのだった。
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