挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
Clump,Clump 作者:モロクっち

第5章 11月20日、明け方

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

19/29

〔4〕




 夜はまだ明けない、11月20日の午前4時、
 第五ワンダーランドの主砲が、唐突に火を噴いた。
 とても眠れそうにないと思っていたクラスタも、知らぬ間にうとうとしていた時間帯。
 だが、第五ワンダーランドのすべては打ち震え、衝撃はまるで地震のように街並みを揺らした。場所によっては、窓ガラスやショーウインドウが粉々になった。
 アスベストと砂粒を含んだ衝撃波は、体重が軽い者に尻餅をつかせた。女子供には叫び声を上げさせた。そして、クラスタを叩き起こした。
「うぉえッ、な、なんで!?」
 主砲発射予定時刻は、午後五時という話だ。そのような報道があった。午後4時半になれば中央ブロック一帯に規制線が敷かれると。その前に、住民は避難を終えなければならない。
 まだ充電も整備も充分ではないだろうし、王城周辺の住民も午後5時の衝撃を想定して準備を進めていたはずだ。
 予定は未定とはよく言うが、いくらなんでも早すぎはしないか。
 クラスタは最期の瞬間まで引き篭もるつもりだったことを忘れ、外に飛び出していた。
 幸い――クラスタが驚いたくらい――町中を飛ぶスナッチはほとんどいなくなっていた。
 逃げていったのか、ヴォーパルが殲滅してくれたのか。やつらの身体の一部だけが、眼前の車道の上に落ちている。
 人は皆、クラスタと同じように道に飛び出し、王城を見上げていた。
 巨大な砲口からは、サーチライトの光を受けてわずかにきらめく、白煙が立ちのぼっていた。なんとも幻想的な煙だ。
 地響きと咆哮が、遠くから聞こえてきた。一億の狼の遠吠えにも勝る、あまりにも極大な叫び声。
 クラスタの身体を、何かが貫いた。目にも見えず、質量も持たない、エネルギーのようなものだ。
 それは、電気、だったのかもしれない。
 地下から、巨大な何かのため息のような、低い音が、震動が、せり上がってきて……消えていった。
 ぞくりと身を震わせ、クラスタは虚空を見上げる。
 ごう、ん。
 町が、第五ワンダーランドが、ひと声、低く短くうめいた。
 サーチライトをのぞくすべての光が、消えた。
 停電だ。
「……嘘だろ」
 また、第二ウェンガンの声。かれは、怒っている。まだ巨大スナッチは、生きている。主砲をもってしても、あれを殺せなかったか。
 なぜ、今。
 どうして、主砲は、今、火を噴いたのだろう。
 充電や整備を完璧に終えていれば、結果はちがったかもしれないのに。
 光のほとんどを失った第五ワンダーランドに、ギチギチギチギチと、空からスナッチの群れのわめき声が近づいてきた。かれらはどうやら一時撤退しただけだったようだ。
 クラスタはもう外には出ないと誓い直し、アジトの地下に逃げ込んだ。その場の誰よりも早い行動だった。
 クラスタに遅れること約5秒、他の住民たちが慌ててめいめいの隠れ場所に引っ込んだ。もちろん、間に合わない者もいた。
 暗黒の町を、スナッチの群れが再び覆い尽くそうとしていた。


 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ