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サンタローズの洞窟編
11.スライム君


「キュイッ! まって、いじめないで! ボクはわるいスライムじゃないよ」
「……え?」
 折れた『ひのきの棒』を構えたアランは、突然ひとの言葉を喋り始めたスライムに呆然とした。
 ぽよん、ぽよん、と地面を跳ねる姿はまさしくスライム。けれどよく見ると、その大きな目に宿る光がどことなく優しそうだった。スライムはアランの姿に驚いたのかしばらく離れたところにいたが、やがて親しげに近づいてきた。
「うん。キミはわるいひとじゃないんだね。なんとなくわかるよ」
「えっと。スライム、くん? 君はどうして言葉がわかるの?」
「ボク、ときどきここにくるしょくにんさんたちとなかがいいんだ。ごはんをもらったり。ことばはしぜんにおぼえちゃった」
「そっか。じゃあ君はわるいスライムじゃなくて、しょくにんさんたちの友達なんだ」
「そう! ともだち! ともだちだよ!」
 スライムは嬉しそうに一回転した。その可愛らしい仕草に、アランも疲れを忘れて微笑む。するとスライムは少し声を落として聞いてきた。
「ところで、キミ、おおきづちにいじめられていたみたいだけど、だいじょうぶ? あのひとたち、ぜんぜんてかげんしてくれないから」
「うん。ひどいケガはしてないんだけど……見てたの?」
「ごめんね。ボク、とってもよわっちいから、たすけにいけなかったんだ。それに、ボクはひととなかよくしているから、おなじスライムからはきらわれているんだ」
「そんな! こんなにいい子なのに。ひどいよ」
「でも、ここにいればしょくにんさんがきてくれるから、さみしくはないよ。さすがにひとのすんでいるところまでは、いけないけれど……」
「そっか……」
 アランはうつむく。モンスターと仲良くできることはアランにとってとても嬉しい発見だったが、そのせいでモンスターの仲間と離ればなれなのは寂しいと思ったのだ。
「ねえスライム君。僕と友達にならない? 僕はアラン」
「アラン! いいなまえだね! でもこまったな。ボクはきまったなまえがないんだ。しょくにんさんはいろんなよびかたをしてくれるし……スラリンとか、スラぼうとか……でもスライムくんってよびかたはいいな! それにしてね」
「う、うん。わかったよ、、スライム君」
 苦笑いしながらアランは思う。もし自分がこのスライムのような友達を他に持てたとしたら、その子ともずっと仲良くしていこう。
「そういえば、しょくにんさん、だいじょうぶかなあ」
「どうしたの?」
「うん。ちょっとまえにね、しょくにんさんがこのどうくつにはいってきたんだけど、まだかえってきてないんだ。いつもならとっくにかえりのあいさつによってくれるのに」
「それって、お薬を作っているしょくにんさん?」
「そう! ひげもじゃだけど、とってもやさしいひとなんだ。しってるの?」
「会ったことはないんだけど……帰りを待っているひとがいるんだ」
「それはいけないね。たしかあっちのおくのほうにいったとおもうよ。ちょっとまえにらくばんがあって、おおきなあながあいているからあぶないよって、おしえてくれたんだ」
「そっか。わかった、ありがとう。スライム君」
 アランは立ち上がる。意気揚々と歩き出そうとして、ふと、手元に残った武器に気がついた。
「あ……でも、僕にはもう戦うための武器がないんだった。どうしよう。一度戻った方がいいのかな?」
「ぶき? ぶきならあるよ」
「え? ほんと?」
「こっち」
 そう言って、スライムはアランを奥へと導く。岩の陰に隠れるように、それは置いてあった。
「これだよ。しょくにんさんがつかってたんだけど、もういらないからってボクにくれたんだ。でもボクにはつかえなくて、こまってたんだ」
「これって、『かしの杖』……かな」
 アランの身長よりも大きな杖だ。触ってみるとずっしりと重く、温かな木の感触に比べてとても硬い。これならば、ちょっとやそっとで折れることはなさそうだった。
「ちょっと重いけど、なんとかなりそう。ありがとう、スライム君!」
「どういたしまして。きをつけてね。あいつら、きっとまたおそってくるだろうから。しょくにんさんによろしくね」
 ぴょんぴょん跳ねながらスライムが別れの挨拶をする。洞窟に入って以来の満面の笑顔で手を振りながら、アランはその場を後にした。

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