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匿った理由
空が赤い。
まるで大地を血の色で染め上げたような風景に、メントスは思わず足を止めた。

「どうしたの?メントス。遅れてる。」
「ああ、カール。もう夕方なんだなって思って。」

メントスの言葉にカールも空を見上げる。
大きな夕日が塾の周囲を囲む森を染め上げ、薄ボンヤリした光を投げかけている。

「まあ、ここに来て、大分時間が経っているからね。」
「っくしゅっ!」

遠くを見るように手を翳して夕日を見るカールの隣で、気温の下がり始めたせいか、マーブルがくしゃみをした。

「あらら、やっぱり気温下がってきちゃったね。マーブル大丈夫?」
「うぃ〜ん。流石に寒いよぉ〜。まだ着かないの?」
「ああ、っと、フィンリル。後どれくらいでつくの?」

カールが少し前を歩く少年に話しかけた。
メントスたちが応接室で匿った少年だった。彼はフィンリルと名乗った。
とりあえず応接室に閉じ込めたラージとショートから隠れるために場所を探そうと、逃げ出したは良かったが、今日来たばかりの塾の構造などメントスたちがわかるはずも無く、悩んだところ、彼が隠れるのに適した場所を知っているというので案内してもらっていたのだ。
小柄な少年は進めていた歩みを止めて、怯えた様子でこちらを見た。

「あ、あと、少し…。」
「それってさっきから何度も聞いているんですけどぉ〜!」

マーブルが頬を膨らませると、少年が少し跋が悪そうに俯く。

「…だって、本当にもう少しで…。」
「何時何分何秒に着くってはっきりしてよ!」
「こらこら、フィンリルに当たったって仕方ないでしょ?」
「だって〜、落ち着いて話せる場所があるって案内しているけど、場所事態はちゃんと教えないし、近づいているのか遠くなっているのかわかんないんだもん。」
「あ〜、確かにな。どこ向かってんだ?」

流石に不信に思ったのかメントスが視線を投げると、フィンリルはますます怯えたように俯いて肩を窄めた。

「…場所、本当に説明しにくいから…。」
「だからってな。珍しくマーブルの言っていることも一理ある。どこに連れて行かれているのかわからないのも流石に…。」
「メントス〜。」

メントスとフィンリルの間にカールが割り込む。

「フィンリルが怯えるから睨んじゃだめだろう?」
「別に睨んでなんか無いだろう。普通だ。普通。」

なぜかフィンリルはメントスに対して非常に怯えた様子を見せる。やや気弱そうな雰囲気で、ともすれ自分より小柄なマーブルにさえ気おされているような少年だが、メントス相手だとまるで蛇に睨まれた蛙のようになってしまっていた。

「ともかく、離れて離れて。さ、フィンリル。ともあれ、その場所には完全に日が暮れる前にそこにはつけるんだろう?」

フィンリルが視線を上げずにこくりと頷いた。

「じゃあ、さ。急ごう。フィンリル、先導してよ。」

カールが笑顔の大盤振る舞いをすると、さすがに少しは安心したのか、フィンリルが少しだけ、視線を上げて無言で頷いて歩き出す。
それを確認して、自分も歩き出しながらカールが傍らを同じように歩き出すクラスメイトに視線だけを動かして見た。

「…メントス。」
「…なんだよ。俺は間違っちゃいないだろう?お前こそ、本気でさっきの今であった奴のことを全面的に信頼しているっていのか?」
「まさか。…でも。」

何かを考え込むようにカールが目を閉じた。

「理由がね。わからない。彼に俺たちをどうこうして何か得があるとは思えないし。それにね、教室からの一連の騒動を考えても彼に俺たちを落としいれようとする気概があるようには見えない。」
「人は見かけによらないって言うじゃん。あいつもあんなふうに怯えるふりして…なんだよ。」

突然自身の額に手を当ててきたカールに不信な視線を投じると、なぜかカールはもう一方の手を自分の額に当てて難しい顔をしていた。

「・・・いや、なんだか今日のメントスは少しいろいろ考えすぎているから。…知恵熱でもあるのかと思って。」
「ね・え・よ!バカにすんな!」

手を思いっきり払いながら睨むと、カールがなんでもないように肩を竦めた。

「ま、ともかく彼が何を考えていようと、俺たちに他にとるべき道はないんだから着いて行くしかないでしょ?助けちゃったんだから。」
「…まあ、な。」

あの時、追われていると言っていた少年を匿い、追ってきたラージとショートを部屋に閉じ込めた。
どちらが正しいかなんて、今思えばわからない。だが、あの時メントスはフィンリルに味方することを迷わず決めた。
だからあの二人組に見つからないように隠れながら移動してこんな場所にいる。
確かに今更疑ったところで意味がない。

「でもさ。メントス。疑っている割にはあの時フィンリルが助けを求めてきたとき、迷わず匿うって言ったよね。なんで?なにか根拠があったと思ったんだけど。」
「根拠か?根拠は…」

メントスはきっぱりと迷わず答えた。

「俺に助けを求めてきたからだ。」
「………………。」

硬直するカールを気にした様子もなくメントスは気付かず続ける。

「だから、俺に助けをあいつが求めたからだ。助けを求められたらヒーローとしては助けなくちゃならんだろう?」
「……そ、そんな理由だったの?」

冷や汗を流しながら、口元を引きつらせるカールに、メントスはいっそ清清しいほど胸を張る。

「十分な理由だ。」

そんな理由だけでどこに連れて行かれるかわかんない危惧を侵しているんですけど!?
てか、そんな理由で黒魔法使って、痛い思いをして。
今後の展開の暗雲を目の前に見た気がした。
なんだかカールは泣きたくなって、深い溜息を吐いた。

「僕、てっきりメントスなりに何か根拠があって助けたんだとばかり…。」
「やっだな〜。カール、メントスがそんなこと考えているわけないじゃな〜い!」

いつの間にか隣に来ていたマーブルの明るい声がまったく救いにもならないことを口にする。

「む。なんだよ。マーブル。バカにすんな。お前だって俺と成績どっこいどっこいじゃないか。」
「ふ〜んだ。そっちこそバカにしないでよ。マーブルちゃんはメントスより成績いいもん。なんたってこの間の小テストの点数、メントスが一桁に対して私は二桁だったもんねぇ〜。」

九点と十一点の差はほとんどないと、カールは虚ろに視線を逸らせた。
勿論百点満点の結果である。

「あんだよ。高々三点差だろ。いばんなよ。」
「ふ〜ん。敗者の戯言に勝者はいちいち反応しないもの〜。」
「あんだと!」
「なによぉ〜!」

まさに一発触発ににらみ合う両者に、なんか仲裁するのも面倒だな〜とカールが木の上の鳥に視線を逸らそうとしたときだった。

「…あの〜。」

弱弱しい声が聞こえた。そう言えば、もう一人この場にいたことを思い出す。

「ごめん。フィンリル。今立て込み中。なに?」
「いえ、えっと、あの…。着いたんですけど。」
「あ、そっか。着いたんだ……。え!?」

いつの間にか目の前の視界が開けていた。木が途切れて石造りの建物が聳え立っていた。
それは古びた塔だった。
なんだかまた空きました。
しかも大分書いていないせいか、若干キャラの性格が…。
どうしてくれよう。しかも進んでない…。
合掌しながらも続きます。
特設頁

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