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大賢者
目を開けると固唾を飲んで見守るクラスメイトの姿が目に写った。

「メントス。大丈夫か?」

一番近くにいたカールが彼にしては固い表情で聞いてくる。

「…ん。ああ。」
「本当に?実はどこか痛いってことはありませんの?」

サシャが恐る恐ると行った感じて聞いてくる。

「…大丈夫だけど。」

嘘みたいに先ほどまでの痛みはなく、むしろ怪我する以前より体が軽いくらいだ。

「どうだ。必要なかっただろう。」

得意げな魔法使いの声がした。
ハッとして見回すが、クラスメイトの姿しかない。

「ど、どこだ?!」
「ごりゃぁ!どこを見ている!下だ下!」

声にしたがって下を見る。

「…………。」

果たしてそこには一人の少年がいた。
まだ、少年、それもメントスたちより二、三歳、さらに幼いように感じる小柄な少年だ。
黒に限りなく近い暗灰色の髪はぼさぼさで、前髪で顔はほとんど隠れており、瞳の色はわからない。明らかにサイズの合わない黒のローブを着ており、自分の倍もある薄汚れた杖を持っている。
小さな体でえらそうに胸を張っているが、どう見ても子供がおままごとで親の衣装を持ち出して魔法使いになりきって威張っているようにしか見えない。
魔法使いモドキの少年は言葉の無いメントスに顔をしかめた。

今日日(きょうび)の奴等は助けてやったのに礼も言わんとは。礼儀知らずな!」
「…………。」
「…む。それとも何か?恐れ多くて声も出せんと。…なるほどなるほど。それでは仕方がな…。」
「…なに?このガキ?」

ビキィ

空気が凍りつく音が聞こえた。
だがそんなことお構いなしにメントスはさらに続ける。

「誰だよ。こんなの連れてきたやつは。それより俺を吹っ飛ばした魔法使いはどこだよ。姿を現せ!」
「…メントス、お前…それが…。」
「カール。魔法使いはどこだよ。見てたんだろ?どこに…。」
旋風熱風波ウイングバースト

ごお!

再びメントスを強烈な熱風が襲う。
だが。

「うおっ!」
「!よけた!?」

どっこお!

「!!びぎゃあ!」

間一髪、横に飛び難を逃れたメントスだったが、その後ろのいたZクラスの生徒にぶち当たる。後に残るは煙を上げる生徒と大きくえぐられた黒板のみ。
その見境の無さに皆が顔を青くする。

「あ、アブねえな!」

声が聞こえたほうに目を走らせると、熱風の軌道から机一つ分外れた先にメントスの姿がある。
その無傷な姿に少年魔法使いは叫ぶ。

「よけるな!」
「無茶言うな!」

メントスの突っ込みに、クラス中の首が何度も縦に振られる。

「しかし、今の魔法。あのガキが魔法使いなのか?」
「…意外だけど彼以外いないでしょ。」

冷静な突っ込みが入るも、攻撃魔法を真正面から叩きつけられメントスは頭に血が上って聞いてない。

「あぁ、ってか。でも、もう勘弁ならん!カール、剣。」
「え?ああ、マジモード?」
「いいから、はよ貸せ!」
「はいはい。」

そう言うとカールは壁に掛かっていた武術の座学授業用においてある模擬刀をメントスに投げた。それを空中でメントスは受け取る。
それから慣れた様子で鞘から刀を引き抜く。
直刃の片刃剣が室内の明かりに反射しながら現れた。
教室にあるのは模擬用なので刃はつぶしてあるが、鉄製でそれなりに重量もあり、力いっぱい叩きつければ、相手の骨を砕くくらいの威力はある。

「おい。ガキだからって手加減なんてしねえからな!」

かなり重量のある剣だがメントスは片手で柄を持ち、刃に添える形で腕を十字構える独特な構えを取る。
その構えを見て、初めて少年が驚いた表情をした。

「!…その構えは。」
「へっ!今更気付いたって遅い。剣聖オーリード流!受けて見やがれ!」

掛け声一発、地を蹴り、少年に向かって突進する。

「…くっ!旋風熱風波(ウイングバースト)!!」

思ったより早い攻撃に驚くも、まっすぐ向かってくる相手に攻撃魔法で迎え撃つ。

「うおおおおおお!!」

だが、まっすぐ進むメントスは魔法にお構いなしに突進してくる。
あわや魔法と接触する瞬間。

「!消えた!」

メントスの姿が一瞬で掻き消えた。

どこんっと、誰もいない空間に魔法が炸裂する。
流石に今度は他の生徒も進路を予測していたようで誰にも当たらなかった。

「どこにっ!」

驚いて消えた姿を探す瞬間、後ろで声がした。

「こっちだよ!」

振り向くとなぜか一瞬前までメントスが上段に剣を構えて立っていた。

「やった!メントスお得意の『飛翔術』だ!」

クラスの誰かが叫ぶ。
『飛翔術』とは簡単に言えば、瞬間移動のようなものだ。
ある空間からある空間へと短い距離だが一瞬で移動できる。
魔法とは術系統が異なり、誰でも習えば使えるようになる魔法とは異なり、一定の血筋にしか現れない特殊な術で『飛翔術』は特にオーリーンの血筋に強く現れる術とされていた。
メントスはこの術では特に抜きん出た才能を持っている。

「はんっ!接近戦で魔法使いが俺の敵じゃねえ!食らいやがれ!」

逃げられるタイミングではない。
上段に振りかぶって容赦なく振り下ろそうとしたとき。

「あまいわぁ!!!」

どこぉ!

魔法使いの足があり得ない勢いでメントスの鳩尾に決まる。

「ぐわっ!!」

まるで後ろに現れるのを見越していたとしか考えられないほど綺麗に決まった蹴りにぶっ飛ぶメントス。
そのまま、後ろに飛ばされ教室後方に設えられた棚に激突する。

どかっ!ばききっ!

「メントス!」

教室に悲鳴が上がる。
棚はメントスがぶつかった勢いで板が割れ、半壊状態だ。

「いってぇ…。」

がらがらと、棚の残骸が頭に降ってくる。
突っ込んだ体が痛い。
攻撃魔法を直撃するよりはまだましだが、立つ事は出来なかった。
もちろん、もう戦えない。

「どうだ。いい加減降参か?」

ざりっと言う音を立てて、少年魔法使いがメントスの前に立つ。
身の丈二倍ほどの杖を肩にふんぞり返る魔法使い。
普段は小さい彼の背丈も座った状態で動けない位置からでは見上げるしかない。
メントスは悔しさにぎりりと歯を食いしばり、少年を睨みつけた。
そして聞いた。

「て…手前ぇ、一体何者だよ?」

その言葉に少年は少し考える風に顎に手を当て、

「私か?私は…。」

十代前半とは思えないほど凶悪な顔つきでにやりと不敵に微笑んだ。

「大賢者様だよ。馬鹿どもが。」
この話から、タイトルのつけ方変えました。
前のもその内わかりやすく変えます。
ややこしくてすみません(汗
特設頁

大賢者の教室入り口





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