脱・教室風景
「この塾は絶対おかしい!」
メントスは力一杯力説した。
気味の悪い雰囲気の授業がとりあえず終わり、休み時間である。
不気味な雰囲気の教室を早々にでた三人は、今最初に塾長に会うために通された棟にいた。
その棟の一室。応接室のような場所が鍵が空いており、無人だったためとりあえず、そこに腰を落ち着けた。あの教室に似た雰囲気の場所に一秒でもいたくなかったからである。
「…なんども聞いたよ。メントス。」
うんざりした顔のカールが半眼で睨んでくる。
いつもは余裕のある彼も流石に今までいた場所の空気の異様さにやられたのか少し機嫌が悪そうに見える。
「いくら言ってもいい足りないんだよ。ほっとけ。」
メントスがそう応じると、カールは仕方が無いかとばかりにため息をついて、その横に座るマーブルに目を移した。
「あっそ。…でも、マーブル。良かったわけ?授業受けなくて。」
「もういいよぉ。あそこ気持ち悪いもん。それ言ったらお父様達も許してくれると思うし。」
少し顔を青くしているマーブル。彼女は先ほどの騒ぎで、すこし半泣きになっていた。
見た目どおり嗜好が子供なので、不気味な雰囲気や幽霊がことのほか嫌いなのだ。
だが、そんな様子のマーブルを尻目にメントスはさらに拳を握る。
「そうそう。きっとこの塾、裏でかなりあくどいことをしているに違いない。それを暴けば、お前の両親だって許すって。」
「…やけに楽しそうだね。メントス。」
「気のせいじゃねえか?」
カールに半眼で呆れたような視線を送られたが、メントスは気にしなかった。
そしてカールの指摘どおり、メントスはこの状況が少しだけ楽しく思い始めていた。
先ほどの授業では雰囲気に飲まれてしまっていたが、いまこうして落ち着いて考えるといろいろメントスにとって望ましい舞台にいることに気付いたのだ。
森の深い場所にある不気味な古城。砦だが。
不気味な生徒。得体の知れない教師達。
そして、そこに渦巻く幽霊騒ぎ。失踪の謎。
そしてそこに転校してきた自分。まるでその謎を解くために使わされた勇者みたいではないか。
きっとこの塾では地下とかあって、そこでは生徒達を使った黒魔術とかしているに違いないとメントスは睨んでいた。
そこに現れる、自分と仲間達。力を合わせてこの塾の悪事を暴けばなんと格好の良いことだろう。まさに英雄になれるシチュエーション。
この謎を解けば、あの自分達を馬鹿だ豚だと罵っていた大賢者もきっと見直すに違いない。
メントスは勝手に一人で燃えていた。
そんな様子のメントスにややゲンナリとした顔でカールは問いかける。
「…なんでもいいけどね、なんか当初の目的、覚えてる?」
メントスは一瞬なんのことを言われているのかわからず、首を少しかしげる。
はて、悪を倒すこと以外に何か目的があっただろうか?
「…メントス。」
カールが頭を抱えて呻いた。
「僕達、大賢者を探しにここに着たんだよね?まさか本当に忘れてないよね?!」
「………覚えている。」
「…だからいつもなんで質問すると冒頭が空くの?本当に覚えているの?」
「大丈夫だって。忘れてない。」
というより、今思い出した。
だが問題はないはずだ。無問題。
すると、怖さで口数が減っていたマーブルが突然とんでもないことを言い出した。
「…ねぇ。もうこの塾から帰らない〜?」
「え?」
「なんでだよ!まだ、この塾の悪事を暴いて…。いや、この塾に大賢者がいないってのも確認していないのに!?」
カールは驚き、メントスは慌てた。
だが、マーブルは怯えた顔のまま、訴える。
「でも。パディ先生を探すのにしても、マンナはいないって。だったらここにいても怖いだけ出し。」
ここにいると怖いからの間違いじゃないかなとカールは思ったが、あえて言わなかった。
メントスは何とかマーブルの気を変えるように言い募る。
「でも、あの使い魔はいるじゃん。」
「グラナダぁ?でもあの子、最初に会ったとき、大賢者と別行動だったよぉ?それをあまり鵜呑みにしても、意味が無いんじゃぁ…。」
どうやら本当に怖がっているらしいマーブルにメントスの言葉では説得できないと見て、溜息をつきつつカールが口を開いた。
「でもさ。マーブル。だったらなんで彼女はここにいるわけ?」
カールの質問に思わずマーブルが口を噤む。
暫く考えていたようだが、答えが出なかったように、困ったような顔をした。
「…それは…。本人に聞いてみないと。」
その言葉を聞いて、カールはマーブルに笑いかけた。
「…そうだよね。それならまず、帰るよりグラナダを探すのが一番にしなきゃいけないことじゃないか?大賢者がここにいなくても、彼女は彼の使い魔だ。居場所を知っている可能性が高い。せっかくここまで来たのに何の手がかりもなしじゃ、本当の骨折り損になる。それなのに何もしないで帰るのは流石にないんじゃないかな?」
「むむむむ。」
カールの言葉に、眉間に縦皺を作って唸るマーブル。
不本意だが、カールの正論には勝てないという顔をしている。
カールはその顔を困った風を装いながら、満足に見た。
流石にここまで言われて帰ると駄々をこねるほど、マーブルも臆病ではないだろう。
そんな、怯えと目的達成にゆれる乙女心を素人もしないメントスが横でのんきなことを言う。
「そうだな、それにあいつだって、大賢者の使い魔だ。この塾の怪しいところ知ってるかもしれないしな。」
「…それは望み薄だと思うけどねえ。」
どこまでも自己中の友人を睨むが気付かない。図太い。
だが、不安そうなマーブルはメントスの空気読めない発言すら気にならない様子でカールに提案した。
「…じゃ、じゃあ!せめてまず、アポロたちと先に合流しない?」
「あ、そう言えば。あいつら、別行動だったか。」
メントスの言葉に思わずこける。
「…まさかメントス忘れてた?」
「…ま、まさか!いくらなんでも忘れるかよ!」
「…嘘くさい。」
疑いのまなざしを向けると、流石のメントスもうろたえる。
「いいだろ!とにかく!まず保健室に行くんだろ?行くぞ!」
特設頁

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