世の中には真夜中を散歩すると言う趣味を持つ者もいる
私もその一人でもある、分かる人にはわかるのだろうが薄暗い道を歩くのは
実に心地いい特に夏の夜が好きだ生温い風が首を撫で、向かい風を身体で
受けるとまるで闇に抱かれたいるような感覚すら覚える。
「散歩ですか?」
突然声を掛けられて思わず私は情けない声を出すところだった
それもそのはずこんな真夜中に薄闇を歩くような奇人に声を掛けてくる人ましては間違いなく女性のものの声であった。
この物騒な世の中、時計はゆうに二時をまわっていたと言うのに・・・
しかしここで折角声を掛けてくれた女性を無視するとは男がすたると言うものである、首筋に滲む冷やりとした汗を薄手のTシャツに滲ませつつ
「ええ、そうですよ貴女もですか?」
振り返りつつ我ながら気の利いたいい台詞が出たと感心した。
なんと振り返ると思った以上に可愛い子ではないかこれは得したなどとさっきまで顔面蒼白になりながらびくびくしていた情けないくらいである。
彼女は今風の服を着こなしてすらっとしているが私よりちょっと幼く見える
綺麗な黒髪は闇の中だというのに綺麗に輪郭が見えるかのようだ
「いえ、飲み会の帰りで夜道を一人で歩いているとついつい心細くなって
ついつい声をかけてしまいました」
彼女は軽くバツわるそうに笑いすぐ横まで歩いて来た。
近づくと尚、彼女の可愛さが際立つ顔立ちはとても若く見えとても二十歳とは思えないほどである、それよりも心細いと言う理由だけで見ず知らずの男性に着いて来るとは結構危ないのでは無いかと他人事ながらついつい心配してしまった。
「家は近いの?」
さりげなく家まで送ってあげようと言う私の紳士っぷりをアピールしてみた。
彼女はその闇の中では一段と栄えて見える綺麗な細い白い指で指差した。
どうやら指でさせると言うくらい近いらしい、それなら走って帰ったほうが
安全だったのではないのかと思いながらも乗りかけた船だけに断れない
どうやら彼女は友達の飲み会で少々飲みすぎていたのか、えらく饒舌で
色々と喋ってくれた。仲良しの四人と飲み駅まで送ってもらえたらしい
地元の駅から家がちょっと遠いことや実家で住んでいることやここの道は
夜でも車の通りが多く危なく轢かれかけた話までしてくれた。
「それでね、危なくひかれかけてやばかったよ」
笑いながら喋っているが結構危ないことである、私はあまり飲みすぎては
いけないやらついつい説教っぽくなってしまったが
彼女は笑っているだけだった。
「ぁ、家につきました」
どうやらご両親は娘の帰りを待っていたかのようだ部屋に明かりが灯っていた
わざわざありがとうございますと言いながら彼女は深々と頭を下げた。
まだ少し酔っているようだが無事家についてよかった。
私はそういいながら彼女が玄関に入るまで見送ってあげた。
「それでね、その男の人が家まで送ってくれたんだよ」
またこの子は酔っ払って帰ってそう言いながらも、お母さんは私に暖かい
ココアをいれてくれた。甘く暖かいココアを飲みながら私は道を送ってくれた
優しい人を思い浮かべた
。
「そうそう最近ここで事故死した男の人がいたらしいんだからちゃんと飲みすぎないで帰ってきなさいよ、夜中にうろうろしていると危ないんだから」
私はそのお母さんの言葉で血の気が引いた。
私を送ってくれたのは―――
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