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ラブカクテルス その2
作:風 雷人


いらっしゃいませ。
どうぞこちらへ。
本日はいかがなさいますか?
甘い香りのバイオレットフィズ?
それとも、危険な香りのテキーラサンライズ?
はたまた、大人の香りのマティーニ?

わかりました。本日のスペシャルですね。
少々お待ちください。
本日のカクテルの名前は神のキノコでございます。

ごゆっくりどうぞ。


俺は貧乏学生。絵に書いたような貧乏さだ。しかし、惨めなんて思ったことはない。むしろ、この生活を楽しんでいる。
なかなか節約をしたり、近代機器に頼らない暮らしというのもいいものだ。
とは言っても、結局は強がりだが。

しかし、腹が減った。
色々我慢はできるものだが、こればかりはどうにも限界がある。
それは、命の危機が迫っていると、身体が自己防衛の為に脳に信号を送るからだ。
しかし、そんなセンサーが付いているから人は餓死から逃れようとしてくれるのである。
俺は天井を見ながら大の字になって、そんな理屈をこね、なんとか空腹をごまかすのがいつも手だったが、今日はなかなか腹の虫が納まらない。
俺はふと、先日訪ねてきた大学のボンボン君が置いていったシケモクに目をやった。
ヤツはあまり付き合いがある訳ではないが、そんなヤツがイキナリ訪ねてきた。
用向きを尋ねると、ヤツは折り入って話があると言うので中に入れた。
ヤツはタバコに火を付け、貧乏な暮らしってどういうものか見てみたかったと言うので、俺はヤツの頭に塩を撒いて叩き出した。
それはその時のシケモクだった。
俺は考えるのをやめた。背に腹は変えられない。シケモクに手を伸ばした。
しかし、横着したせいで灰皿がひっくり返った。
俺は惨めになった。
すると俺はそこに広がる光景に目を疑った。
なんとそこにはキノコが三本生えていたのだ。
俺はその時神の存在を感じた。恐る恐る触っみたが、夢や幻ではなかった。俺は神に感謝した。
そしてそのキノコに手を伸ばした瞬間、いや待て。そうだ、このキノコが毒キノコだったら。
俺は考えた。どうしたらこれに毒がないと証明できるかを。
大学の研究室に持って行くか。いや、五日も水だけしか飲んでいないから、そんな体力はない。それなら猫や犬に食べさせてはどうだ。いや、三本しかないのにそんなものにくれてたまるか。考えろ。
あっ、そうだ。火だ。火にかければ毒なんてイチコロだ。俺は、かなり強引にこの理屈に頷いて、キノコの一本を慎重に畳から抜き、最後の力でそれを火にかけたのであった。すると、なんとも言えない、いい香りが部屋中を包んだ。
俺はそれを、穴が開くほど睨んだ。そして、遂にその時がきた。
俺は箸の先に全神経を集中し、キノコを摘むと、何の迷いもなく、口に放り込んだ。
俺の口の中は一瞬にして桃源郷へと変わった。素晴らしい香りと味わい。
俺はそれをなかなか飲み込まず、舌の上で楽しんだのだった。
そして、別れを惜しむ友人を見送るように、俺はキノコを飲み込んだ。
幸せに浸ろうとした瞬間、イキナリ腹が激痛に襲われた。
俺は覚悟を決めた。
そして、自然に任せるまま、身体が欲するまま、俺はオナラをした。
すると驚いた事に、痛みはスッと消え、出たオナラの匂いはなんとチョコレートの匂い、というより香りだった。
俺は驚いた。しかし、気のせいではと、もう一度心みたが、やはりチョコレートの香りだった。しかもあんなに小さいキノコだったのに腹は満腹だった。
俺は着替えて、友人の所に向かった。そして話のあらすじを話すと、それが本当なら飯をご馳走してやると言うので、試しに薩摩芋を焼いて食べさせてもらい、オナラをしてみた。
友人は顔をしかめたが、オナラの香りが鼻に届くやいなや、驚きの表情を浮かべた。
友人は俺にランチをご馳走してくれ、メディアの研究柄、テレビ局にコネがあるからテレビに出ろと言うので、俺は迷ったが、世界が変わると言う友人の言葉に、ついつい頷いてしまった。
そして深夜番組にイキナリ出る事になってしまった。
初めは馬鹿にして笑っていた関係者も、オナラを嗅いだ途端、驚きの表情を浮かべた。
そして大袈裟に取り上げられ、それがキッカケで、俺は一躍有名人になった。
それから暫くは、評判も上々だったが、ある日、いつものようにオナラをすると、なんと、普通、より臭いオナラに戻っていた。
俺もそうだが、テレビ出演者も顔をしかめた。
そこで、俺のテレビ人の暮らしは終わり、また貧乏な生活が戻ってきた。
俺はまたギリギリの生活に戻り、ピンチを向かえていた。
俺は死との瀬戸際にいた。その時、あのキノコの事を思い出した。そしてあの灰皿を退かしてみると、そこにはキノコがまだ二本、元気に生えていたのであった。
俺は、モウロウとする意識の中で、それを手にし、火にかけた。
するとあの香りが俺を支配し、再び、口の中に桃源郷が現れた。
そして、また激痛の末、出たオナラは、素晴らしい焼肉の匂いだった。
俺はうっとりした。
そして、今度はもっと利口にこのチャンスを使おうと考えたのであった。
俺は町一番のまずくて有名な焼肉屋へ行った。そしてバイトとして俺を雇えと言った。店主はそんな金あるはずがないと言うので、俺は店主に金なら稼がせてやると、オナラをしてやった。
すると店主は驚き、こんなうまそうな焼肉の香りは嗅いだことがないと唸り、俺を雇う事を決めた。俺は給料の代わりに三食の飯をいただくことにした。
店は相変わらずいい肉を出さなかったが、俺のオナラの香りは味をも上回った。
そして、それが話題になり店は繁盛した。
が、しかしやはりこれも長続きすることはなく、ある時したオナラは、またしてもかなりの臭さで、店の客は悲鳴をあげて出て行き、当然、俺はクビになった。
暫くいい暮らしをしていたせいで、俺は我慢することができなくなっていて、俺は迷わず最後のキノコに手を伸ばした。


隣の部屋では三人の白衣を着た男たちが、無線と仕掛けカメラの映像に集中していた。
そして、その中にボンボン風のあの男もいた。
彼らは最後の研究結果になる例の香りを、声を潜めて待った。そして、暫くして漂って来たその香りを嗅いだ一人は、とても穏やかな顔をして倒れた。
他の二人が、慌てて抱き起こすと、彼は亡くなっていた。
そして残りの二人も次々と倒れた。

壁の向こうからは、ドアを開けて、人が出て行く音がした。

おしまい。


いかがでしたか?
今日のオススメのカクテルの味は。
またのご来店、心よりお待ち申し上げております。では。














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