[ ♯8・心の中に雨 ]
キーンコーンカーンコーン
「なっ灰原、俺今日雨でサッカー部休みになったんだ。だから久しぶりに一緒に帰ろうぜ」
外はザーザー雨が降っている
昨日の夜から降っているのにまだ止まない
なんだか珍しい天気
「わかったわ。掃除当番だからちょっと待っていて。工藤君は、ちゃんと傘は持っているの?」
「おう。今回は珍しく天気予報見ていたからな!!でも俺、灰原となら相合傘でもい〜ぜ」
私は彼が冗談を言ったときの笑顔が好き
そんなこと、恥ずかしいから言ったことないけれど
どこまでも照らせそうな光を放っている
「……悔しいけれど、今日は私、傘忘れちゃったのよね」
「灰原が?俺が持ってくるよりお前が忘れてくる方が珍しいな(笑)まぁいいじゃん、仲良く帰ろうぜ」
「玄関で待っていてくれないかしら?私たちの関係は、クラスの人に内緒なんだから」
「別にいいけど……わざわざ何の為に内緒にするんだよ?俺は灰原と付き合っていること知られたって良いんだぜ!!」
「私が嫌なのよ……さすが工藤君、鈍感ねぇ」
「まっ、それは後で決めるとして、玄関で待ってるから」
彼はそう言うと元気に階段を駆け下りていった
工藤君はクラスの女子からモテている
クラスが違う子も、彼に好意を持っている
そんな彼と付き合いだしたら睨まれるに決まっている
私は別に吉田さんたち以外の友達が欲しいわけじゃない
けど関わりのない人から憎まれるのはさすがに……ね
だから、とりあえずまだ今は、誰にも知られたくない
(早く掃除して、彼と帰ろう)
そう思ってほうきを取って気付いた
私の他にクラスの男子『槙田洋平』しかいないのだ
槙田洋平は、いつも一人でいて誰ともつるまない一匹狼タイプの男子で、それでいて工藤君の次にモテているらしい
そんな無口の彼が、私に声をかけてきた
「灰原、今日他の掃除のメンバー遠征とサボりでいないから、掃除無しにしていいか?」
そういえばそうだった
遠征2名に、サボリ常習犯2名……
どうりで私達しかいないわけだ
「えぇ。別にあまり汚れてないしそうしましょうか」
「……灰原ってさ、似てるよ」
「私が誰と?それより私急いでいるから」
そう言って教室を出ようとすると、槇原に腕をつかまれた
「何?放してよ」
牧原の顔は、工藤君とは違う、笑っているけど怖い、不思議な顔で私を見ていた
私と工藤君の間で、ぎこちなくも、安定を保っていた歯車が
少しずつ彼によって狂わされていく……
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