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サントノーレ 作者:奈備 光

10章

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95/118

95 聞き耳頭巾を

 扉の向こうは急な階段だった。
 非常照明がかろうじて灯っていて、何とか降りていける。
 アヤは、「落ち着いて降りましょう」と、周りの人に声をかけた。
 ここで雪崩を打っては、非常に危険だ。

 この先に行っても、エリアREFに戻れないかもしれない。
 そんな不安も沸いたが、もう戻ることはできなかった。
 後から後から人が降りてきて、それに逆らって狭い階段を登って行くことはできなかった。
 避難階に着けば、そこからエリアREFに出ればいいだろう。


 足元に注意しながらも、アヤは物思いに耽った。
 考えなくてはいけないことは、これからどうするか、ということ。
 しかし、思いは過去へと遡っていく。

 なぜか心を占めるのは、あの頃のこと。
 ユウお姉さんがいなくなった後の時期。
 大阪でおじさんと暮らしながら、考えていたこと。

 おじさんには話したことはない。
 ユウお姉さんがいなくなった本当の理由。
 私なりに感じていたこと。

 ユウお姉さんは、私の身代わりになってくれたんだ、と。

 もう、過ぎたことだとは思う。
 あれから六百年。
 でも、私にとってその思いは、拭いきれない重い思い。


 アヤのそんなほろほろとした思いは急に断ち切られた。
「着いたぞ!」
 という声が下から聞こえてきた。
「ここなのか?」
 不安そうな声も。

 そこは自然に穿たれた洞窟の小部屋だった。
 サントノーレ避難所と記された看板が、非常用照明にぼんやりと照らし出されていた。
「どこかに他の人が集まっているはず」
「もうちょっとましなところかと思ってた」

 洞窟はまるでアリの巣のように複雑に入り組んでいた。
 かなり広いスペースがあるかと思えば、ほとんどは岩の隅間のような空間。
 ジメジメした細い通路が続いているようなところもあった。
 遠くに水の流れがあるのだろう。
 ゴーという地鳴りのような音が聞こえていた。

 本当にここが避難所なのか。
 そんな不安が人々の顔にあった。
 しかし、ようやく人の姿を見つけると、やや落ち着いた気分にはなったようだ。


 先に来ていた人によれば、どこまでもこの調子で洞窟は続いている。
 陰気で息の詰まるようなここが避難所なのだった。
「物資は?」
「潤沢みたいだ」
 それが救いだった。

「向こうに何人か集まっているぞ」
 案内された先には、物資がうずたかく積まれてあり、十人ばかりの人が屯っていた。
 誰れも彼も疲れていた。
 のろのろと物資を確認している者。
 呆然と座り込んでいる者。
 体を横たえ、泣いている者。

 こんなところには何日もいられない。
 そんな思いが人々の思いだろう。
 しかし、何年、いや何十年も暮らしていくことになるかもしれないのだ。
 潤沢にあるとはいえ、物資もいつまで持つか知れたものではない。
 絶望的な気分になるのは無理もなかった。


 アヤとフライングアイは部屋を出て、エリアREFに戻る道を探し始めた。
 聞き耳頭巾を手に入れたら、もう一度、政府建物に戻ろう。
 ンドペキの元へ行くのだ。
 アヤはそう決めた。
 オーエンはまだ生きているかもしれない。
 あの男に聞けば、何とかなるかもしれない。

 オーエン。
 私の足を奪った男。
 憎しみがないかといえば嘘になる。
 しかし、アヤはその憎しみがそれほど大きくないことを知っていた。
 過去のこと。そう思えばいい。
 今は、何としてでもンドペキを追わなければならないのだから。


 ひとりの男とすれ違った。
「あんた、知らないか? なんでも、会談があるらしいんだが、どこなんだ?」
 会談?
「会談か集会か知らないが、レイチェルとパリサイドの代表者が会って話をするらしい」
「えっ、レイチェルが!」
 そして、パリサイドの代表者!
 ユウお姉さん!
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