挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
サントノーレ 作者:奈備 光

10章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

92/118

92 覚悟して来たんだろ

「チョットマ。どうしちゃったの」
「あっ!」
 ニニ!

「スミソっていうの? あんた達だけで、この街を歩けないでしょ」
「ニニ、なのか……」
 ンドペキの呼びかけに、ニニは少し微笑んでから、改めてスミソに向き直ると、
「どうするつもりなの?」
 と、聞いた。

「どうって……」
 スミソは口ごもりながら、再びヌヌロッチを見たが、レイチェルSPは両手を広げてみせただけだった。
「まあ、向かう先の当てがあるわけじゃないんだけど……」

「この次元のこと、知らないでしょ」
「ああ」
「あてどなく歩いて行っても、なにも見つからないと思う。それに、危険な場所もあるわ」
「だろうな。でも」
 聞いて回り、探し回るしかない、とスミソは言う。


「私がついていってあげる」
 ンドペキの心配をニニが代弁してくれたようなものだった。
 そう言ってくれたことで、かなり安心はできるが、まだ不安は拭えなかった。

 あの溶岩がニニになった。
 あるいは、ニニがあの溶岩だったのか。
 どちらでも同じことかもしれないが、ンドペキは目の前の女性が本物のニニなのか、まだ半信半疑だった。
 ヌヌロッチが、ニニに声を掛けた。
「そうしてくれるか」
 ということは、本物のニニだと思っていいのだろう。


「あっ」
 スゥの声に振り返ると、老人が二人、歩いてくるのが見えた。
「やれやれ、とんでもないところだよ!」
 と、ライラが近づいて来た。
「この重力は老人にはきついね。もうちょっとましなものを造れなかったもんかね!」

 もうひとりの老人。
「ホトキン!」
 ライラはにやりと笑ったが、その夫は仏頂面を見せただけだった。
「どうしてここに」
「フン。命が惜しけりゃ、ここに避難、だろ。さてと、チョットマは?」


 ライラはチョットマを追って、市民グループの輪から抜けてきたという。
「あの子、ずいぶん、取り乱していたからねえ」
 気が気じゃないという。
「あんなチョットマを見るのは初めてさ」

 状況を説明するうちに、ライラが厳しい顔つきになった。
「うーん。そいつは何とかしなくちゃ。で、今、ここで眠っているんだね」
 パリサイドの腹をつつくと、
「私も一緒に行くよ」と、言った。


「あん? おい」
 異論を唱えたのは、ホトキンだ。
「サブリナを探すんじゃなかったのか」
 食って掛かる夫に、ライラはちらりと目をやると、
「あいつも一緒に探すのさ」と、突き放す。
「ニニに協力してもらってね」
 そして、ニニの体を頭からつま先まで、しげしげと眺めた。
 岩の変化が遠くから見えていたのだろう。

「サブリナというのは?」
 ヌヌロッチが久しぶりに興味を示した。
「私達の娘さ。このぼんくらによると、この次元が安定化したかどうかを見に来たらしい、っていうんだよ。娘を危険に晒す親が、どこの世にいるんだい! まったく!」
「いや、ライラ、あいつが勝手に」
「止めるのが親だろ!」


 サブリナはこの次元の安全を確認してきて、オーエンとホトキンにその状況を伝えるつもりだったという。
「で、結局は出てこなかった」
「えっ」
「さあね。死んだかもしれないね」
 元はといえば親を捨てた娘、とは言わなかったし、ライラはライラなりに心配しているのか、
「本当に親不孝な娘だよ。やっと帰ってきたかと思えば……」と、呟いた。

 サブリナは出ては来なかったが、オーエンの判断では、もう待てないということだったらしい。
 太陽フレアの脅威が間近に迫っている。
 カイロスの装置は完璧ではなかった。
 もはや、ベータディメンジョンに賭けるしかなかったということだ。
「まあ、よかったじゃないか。こうして生きているんだから。オーエンの判断は正しかったというわけだ。今のところは」
 ホトキンが胸を張った。 


「いつのことなんです? その、サブリナという人がここへ来たのは」
 ヌヌロッチのこの反応は珍しい。
 よほど聞きたいことがあるのか、話したいことがあるのか。
 あるいは心配でもあるのか。

「さあね。私達がこの次元に来るちょっと前だろうさ」
「ということは……」
「なんだい!」


 ヌヌロッチが、益々渋い顔つきになった。
「ここじゃないですね」
「は? まどろっこしいね! 治安省長官ともあろう人が」
「違う場所に出たのではないか、ということです」
「じゃ、そこへ連れて行っておくれ!」

「えっ」
「おい! ヌヌロッチ! 親を娘に会わさないってことかい!」
「いや、そういう……」
「じゃ、早くしな!」
「あなた方が出てきたゲートは突如できたゲートです。我々が普段使っているゲートは、別の場所にありまして」
「ええい! 眠たい話はいらないよ!」

 ホトキンも頷いた。
「そう。このゲートは俺が作ったんだ。今日の日のために。初めての稼動だ」
「あんたも、どうでもいいんだよ! 自慢話は寝言で言いな!」


 見かねたのか、ニニが提案した。
「じゃ、まずそこへ行きましょう。チョットマやスミソも一緒に」
「おっ、ニニ、あんた、場所、分かっているのかい」
「もちろん。このゲートができる前にこの次元に来たのなら、私達がいつも使っているゲートを潜ってきたはず」
「よし!」
「だよね?」
 ニニはヌヌロッチに同意を求めた。

 ヌヌロッチは渋っていたが、結局は頷いた。
「しかし、あのゲート、もう使えなくなっている」
「いいんだよ! そんなことは! あの世界に戻りたいわけじゃない!」
 ホトキンが付け加えた。
「あのゲートのエネルギーは地球上にある。もう稼動できないだろう」
「しつこいね、あんた!」
「しつこいついでに言っとくが、さっき通ったゲートもいつまで持つかわからんぞ。きっと、もう閉じてるだろう」
「そんなことは誰だってわかってるさ。覚悟して来たんだろ、あの連中も!」
cont_access.php?citi_cont_id=706025280&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ