挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
サントノーレ 作者:奈備 光

6章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

57/118

57 不信の輪

「明日、スジーウォンが帰ってくるはずだ」
「うん」
「彼女には、今チョットマが引き受けているチームを率いて、正門から突入して欲しいと思ってる」

 アヤの顔に不満がちらりと現れたが、すぐにそれは消え、指示を受ける部下の表情に変わった。
「アヤちゃんには、その先導役になって欲しい」
 実際、アヤが適任だった。

 シェルタから突入する隊とは違って、正門から入れば、敵との遭遇の確率は低い。
 少なくとも、当面は。
「了解!」
 アヤの返事はいきいきとしていた。
 ンドペキはホッとして、解説を加えた。

 門を警戒する任務は、チョットマがそのまま継続する。
 しかし、隊員の再構成は、スジーウォンの専任事項とする。
「コリネルスにもこの話はしてある。チョットマには、あいつから指示が出るはずだ」

 先ほどのアヤの疑問にまだ応えていないが、作戦上の指示を優先させた。
「アヤちゃん、さっきの話は後ですることにして、連絡要員として知っておいて欲しいことがある」
「はい!」


「シェルタからの侵攻部隊には、致命的ともいえる悪条件が重なっている」
 最後の作戦会議には、アヤは途中から参加している。
 情報として伝えておくべきことがある。

 ンドペキ隊やパキトポーク隊には案内役はいない。
 レイチェルSPのヌヌロッチらから申し入れを受けているが、断ってある。
 彼らの素性を明らかにしてしまうのは、時期尚早。
 いざというときが、この先あるだろう。

「シェルタから政府建物への侵攻ルートだが」
 事前に聞いていたのは一本のルート。
 レイチェルの居住空間に繋がっているということだった。
 それをたどれば、タールツーに襲い掛かる近道になるはずだった。
 しかし、ドトーからの情報は違っていた。
「出入り口は、三か所あったんだ」


 一本は、まさしく長官の居住空間、厳密に言えばレイチェルのベッドルームに繋がるルート。
 もう一つはレイチェルの執務室、つまり長官室。
 居住空間とは異なるブロックにある、中央庁と呼ばれる建物内。
 三つ目は、治安省庁舎内。
 ほとんど使われることのない小部屋に繋がっているということだった。

「ところが、ルートが封鎖されているらしい」
 レイチェルの寝所ルートと長官室ルート。
 大量のコンクリートが流し込まれ、破壊しながら進める状況ではとてもないということだった。

「騎士団がここに来てから?」
「そう。奴らはレイチェルのベッドルームから入って来たそうだが、その直後に」
 騎士団はアンドロ蜂起後、どこを探してもレイチェルが見つからず、やむなく避難して来たという。

「ジャイロスコープは役に立たなかったのかしらね」
「さあな」
 アヤの言い方にも自分の言い方にも、あんなおもちゃが、というニュアンスがあった。


 騎士団を頼って、時間を浪費した。
 今更ながら悔やまれた。
 しかも、シェルタ経由作戦に勝機が大きいかといえば、そうでもないのだ。

 常に騎士団との合流を主張していたロクモン。
 あいつは、なにを画策していたのだろう。
 少なくとも自分だけでも騎士団に合流したい。それだけだったのだろうか。
 ンドペキ隊を捕らえることを手土産にして?

 しかし、それがどんな意味を持つのだろう。
 ロクモンの部下達にも、あの行動は全く寝耳に水だったというが……。
 ドトーも、ロクモンと親しかったわけではないという……。
 奴の目的は、いったい……。
 そんな思いが頭をもたげてくる。


「なぜ通路が塞がれたのか。もちろん騎士団を袋の鼠にしておいて、残るルートから攻め入ってくるつもりだったんだろう」
 しかし、一度たりともアンドロ軍が通路に侵入してきた形跡はないという。
「タールツーがやったとしか考えられないんでしょう?」
 アヤの頭の回転は速い。
 逆説的に聞いてくる。
「まあな」
 としか言いようがない。
 臆病風に吹かれた騎士団自身が通路を塞いだとも考えられるが、さすがにそれを口にはしなかった。

「エリアREFには、攻めてきたのに?」
 アヤは騎士団を、もう信用していないのだ。
「腑に落ちないことはたくさんあるが、考えている時間は既にないし、ドトーも協力的でない」
 いずれにしろ、治安省に向かう通路を進むしかないのだ。


「治安省か。かなり遠いよ」
「ああ。問題は、そのポイントがレイチェルの居住空間とも、執務室ともかなり距離があるということ」
 治安省庁舎は、政府建物群の最奥部にあり、むしろアンドロ次元へのゲートに近い。

「マップはあるけど、どれほど役に立つか。一面瓦礫が原にしながら進むしかないんだ。弾薬の供給が問題だな」
 やけくそ気味に聞こえたのか、アヤが心配顔になった。
「もしかして、作戦、失敗するかもって思ってる?」
 ンドペキは改めて笑顔を見せた。
「作戦は、総合的に、成功させるさ」

 さてと、とンドペキは張りのある声を出した。
 ギアチェンジだ。
「スジーウォン達を、レイチェルの長官室と居住空間に連れて行ってやってくれ」
「三ブロックほど離れていますが」
 アヤも、隊員の顔に戻った。
「優先順位は、到達時の時間帯にもよるだろうが、まずは長官室だ」
「了解です!」
「マップはあるが、政府に勤めている君がいれば何かと好都合。頼むぞ」
「はい!」
「連絡班リーダーという役割をどうするか、それはコリネルスが決めてくれるだろう」
「はい!」


 ンドペキは、体をアヤに心持ち近づけた。
「ねえ、アヤちゃん。さっきの質問だけど」
 応えておかなければならない。
「ぼく自身の気持ちは……」

 しかし、言い淀んでしまった。
 目の隅に入ってきたものに気をとられて。
cont_access.php?citi_cont_id=706025280&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ