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サントノーレ 作者:奈備 光

6章

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56 小さな嫉妬

 最後の作戦会議を終え、全員が散り散りになったが、ンドペキは席を立とうとしなかった。
 責任者である自分が、うろうろ歩き回るべきではない。

 アヤがこちらを見ていた。
 疲れているようにも見えたし、考えているようにも見えた。
 きっと、あの話があるのだ。

 ンドペキは顔をほころばせた。
 アヤがそれに応えて笑みを見せ、近づいてきた。
「話があるんだけど」
 大切な作戦の前に話し合うようなことではない。
 しかしアヤにしてみれば、本人と直接話すのは、今しかないと思うだろう。


「私の家族のことなんだけど」
 彼女はイコマには伝えてある。
 つまり、ンドペキにも伝わっている。
 それを頭では理解しているつもりでも、本人の顔を見ながら話しておきたいのだろう。
 ンドペキとイコマの意識の共有。
 アヤにとって、それがどんな感覚なのか漠然としているだろうし、ンドペキ自身の感情がどんな反応をするのか、不安でもあったのだろう。

 ンドペキは笑っているだけで、何も言わなかった。
 アヤが周りを見回した。
 誰もこちらを気にしているようではない。
「おじさん、えっと、私のお父さんは、ンドペキ……、いいかな……」

 イコマを父として接していくか、ンドペキを父として暮らしていくか。
 その課題に対し、アヤなりに出した答はンドペキを選ぶというものだった。
 ひいてはスゥを、ユウお姉さんと呼ぶことになる。

 彼女がそう決めた理由は、様々にある。
 しかし、最大の理由ははっきりしている。
 アギのイコマとパリサイドのユウと暮らしていくには、彼女の身体の仕組みが違いすぎる。
 足手まといにはなりたくない、ということだった。


「迷惑じゃないかな……」
「迷惑なもんか! うれしいよ!」
「うん、ありがとう。でも……」
 アヤは笑みを見せたが、不安も覗いている。

「ンドペキ自身としても? こんな聞き方がいいのかどうか、わからないけど……」
 彼女には、そう聞いてみるしかないのだ。
 それがイコマとしての感情なのか、ンドペキ自身の感覚なのか、知りたいのだ。
 ンドペキは、この話はもう少し後でしたいと思っていたが、仕方がない。

「作戦、始まるでしょ。こんな時だけど、どうしても聞いてみたくて……」
 またアヤが、辺りを見回した。
 フライングアイはパキトポークと話し込んでいる。
「気になるかい?」
「うん」

 気になるかと聞いたのは、時間稼ぎである。
 どう応えれば、アヤは満足するのだろう。
 これがわからなかったのだ。
 不用意な言い方をすれば、アヤは傷ついてしまう。

 なにしろ聞き耳頭巾の使い手。
 誰よりも感受性は鋭い。
 どうすればアヤを安心させ、喜ばせることができるだろう。
 上手い解答は、すぐには出てこない。
 黙っていることを気にして、「ごめんなさい。こんなときに」とアヤが謝った。

「ううん、いいんだ。今話してくれてうれしいよ」
 アヤとこの話をする前に、スゥとしておきたかった。
 そして、アヤとはスゥがいないときに。
 スゥに対してアヤが抱いている感情について、実はまだ自信がなかったのである。
 心の底から昔のように、「ユウお姉さん」と呼べるだろうかと。
 そして、その逆も。


 案の定、
「スゥはどうするんだろ」と、アヤが言った。
「作戦に同行するつもりかなあ」
 などと、遠回しに聞いてくる。
 作戦への同行。つまり、ンドペキとスゥが行動を共にすること。
 これにアヤが嫉妬するかもしれない、とは思っていた。
 しかし、スゥを置いていくことはできなかったし、スゥ自身がそれを許さない。
 かといって、アヤを連れて行くのは無謀だ。

「どこに行ったの?」
「もともと、クシの死体回収に行くつもりの装備しか持っていなかったからね」
「そう……」
「フル装備してくるんだってさ」
 アヤには納得してもらうしかない。

「私も行きたいんだけど……、だめだよね」
「アヤちゃんにはアヤちゃんの仕事があるよ」
「わかってる」

 戦闘能力の高くないアヤが同行しても、役に立てることはない。
 たとえ聞き耳頭巾を携行していたとしても、いきなり激しい戦闘になる場面では、その力を発揮する場面はないだろう。
 それがわからないアヤではない。
「実は、アヤちゃんにはもう一つ任務がある」
「え、そうなの?」
 ンドペキは迷っていたが、言ってしまおうという気になった。
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