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サントノーレ 作者:奈備 光

5章

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46 作戦名はハートマーク

 チョットマはンドペキ隊の作戦室を出た。
 コリネルスによって、補給及び建物玄関封鎖部隊の各班のリーダーが発表されていた。
 シェルタへの物資輸送及び前線への補給担当のリーダー。
 救護班のリーダー。
 エリアREFの治安維持のリーダー。ここにはアギのパリサイドへの対応も含まれる。
 ニューキーツの街を掌握し、政府建物の出入り口を封鎖する班のリーダー。
 そして通信の使えないシェルタとの連絡班のリーダー。

「えええっ!」
 チョットマは、コリネルスの発表に面食らった。
「やってみろ」
 コリネルスは笑っていたが、とても自分には……。
 居残り隊のハイライト、政府建物の出入口を固める班のリーダーに指名されたのだった。

 そんな大切な班のリーダーを、私が。
 なぜ、とは問わなかった。
 聞く前に、「適任だ」とコリネルスに先を越されたからだった。
 チョットマはすぐに頭を切り替えた。
 なぜ自分が、という思いは、何も生まないから。
 やってやる!という思いだけを胸にたぎらせ、イコマの部屋に向かっていた。


 政府建物を封鎖するという大仕事の前に、街を掌握しなくてはいけない。
 アンドロ軍が街に潜んでいるという情報はないが、万一ということもある。
 コリネルスからは特段の指示はなかったが、少し考えるだけで、キーとなるポイントがどこか、チョットマにもわかった。
 あのポイントとこのポイント。制圧する順番は。
 誰に向かわせる。
 そんなことが頭を駆け巡った。

「パパ、ごめん。行けそうにないや」
 チョットマは独り口にしながら、徐々に足早になった。
 そして、考え直した。
「作戦名は、ハートマーク!」
 と、自分の隊になったメンバーに発信。
「隊を五つに分ける! 各隊のリーダーは」
 その名もすらすらと出てきた。
「リーダーは、直ちにイコマさんの部屋に集合!」


 チョットマは、イコマの部屋に向かって通路を走りながら、コリネルスの言葉を思い出していた。
「お前が適任だ、ということの意味をよく考えろ」
 コリネルスはそう言って、朗らかに笑ったのだった。
 意味?
 わからない。

 あの演説?
 レイチェルの言葉?
 あれは、全くのでまかせ。
 その場の思いつき。
 ニニに、あんたの出番じゃない? と背中を押され、はじき出されるように飛び出してしまっただけのこと。
 我ながら、うまくいったとは思うけど。

 ねえ、コリネルス。
 どうすればいい?
 そういえば、昔、自分は参謀型のリーダー、なんてこと言ってたよね。
 ンドペキは仲間型のリーダーで、私は親分型だなんて。
 親分型ならパキトポークと一緒?
 そんなはずないじゃない、とあの時、思った。
 遠い昔のことのよう。

 無表情は、判断できない奴と思われる。
 眉間に皺を寄せてると、器の小さい奴。
 ふてくされた態度は、自信の無さの表れ。
 素顔を見せて人と接する機会の無かった私に、コリネルスはそんなことも教えてくれた。
 私にリーダー、勤まるかなあ。
 不安を吹き飛ばそうと、チョットマは一つ目のお姉さんに教えてもらった歌の一節を大声で歌った。


 政府建物の出入り口。
 いわゆる正門と呼ばれているところは、正確に言えば三つの出入り口がある。
 普段は開かれることのない大門と、両脇の通用門。
 職員の出入り口であり、物資の搬出入も行われる。
 それ以外の出入り口は四つ。
 それらはいずれもブラインドの向こうで、通常は使われることはないといわれている。

 政府建物の大部分は、肉眼では見えないし、ゴーグルを通しても見ることはできない。
 意図的に隠されているのだ。
 ただ、レイチェルSP達によって、その位置は正確に把握できている。
 これらの門を通って、タールツー軍はエリアREFに攻め込んで来るが、そのルートも掴んでいる。
 問題は、迷わずその門に到達できるかどうかだ。
 しかし、悩んでいても答えはない。
「突き進むしかないよね。皆に頑張ってもらおう」


 と、「チョットマ! また後でね!」と声を掛けられた。
 アヤが追い抜いていった。
「街で待ってるよ!」と。
 彼女、すごいよね。
 エーエージーエスで死にそうな目にあったのに、今はあんなに溌剌として。

 結局、彼女は病院で脚の再生手術は受けず、隊員が作った義足で走り回っている。
 自分の記憶が病院で吸い取られ、政府に情報が漏れないとも限らないから、と。
 きっと今も、街のコンフェッションボックスに向かっているのだろう。
 パパと情報交換をするために。

「頑張ろうね!」
 と言いかけて、チョットマは思い留まった。
 燃えているアヤにとって、意味の無い言葉だと感じたからだった。
「雨、降ってなきゃいいね!」
 なんてことを口走ってしまう、私って。
「アハハ! それを言うなら、熱波でしょ!」
 軽やかな笑い声を残して、アヤは走り去っていった。

 アヤは、連絡班のリーダーとなった。
 突入していくンドペキ、シェルタ、後方部隊のコリネルス、そしてイコマの元へと、走り回ることだろう。
 ブロンバーグ市長やパリサイドのコロニーにも、伝令として向かうことになるかもしれない。
「本当に、彼女こそ適任よね」
 チョットマは、呟いた。

 あっ。
 アヤに抜かれるということは。

 しまった!
 考え事をしすぎて、スピードがおろそかになっていた。
 まずい!
「ハートマーク隊!」
 チョットマは五人の隊員の名を挙げた。
「各々五日分の食料、エネルギー、武器弾薬、医薬品十名分を携行! 直ちに準備にかかれ!」
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