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サントノーレ 作者:奈備 光

4章

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42 裏切りの罪

 この扱いの違いは何だ。
 ロクモンだけは、武装解除されないばかりか、悠然とドトーの脇に立っている。
 まさか、これはロクモンが仕組んだことなのか。
 あの暗号めいた伝承も、ロクモンから聴いたこと。
 レイチェルのシェルタに、攻撃隊をおびき寄せるために打った芝居だった、とでもいうのだろうか。

 コリネルスが穏やかな声で、作戦の詳細をドトーに話しかけている。
 もちろん、騎士団の動きもその作戦の中に含まれる。
 押し付けがましくならないように、コリネルスはうまく話を進めていた。
 それでもロクモンは、コリネルスの案にあいづちを打つわけでもなく、ましてや口添えすることもなかった。

 コリネルスの話が終わり、ドトーがロクモンに顔を向けた。
 ンドペキの期待は裏切られた。
 ロクモンは、攻撃隊の作戦を推すどころか、首を横に振り、
「騙されてはいけないぞ」と言ったのだった。

「ロクモン! 貴様!」
 パキトポークの叫びが空しくこだました。
 この期に及んで、ロクモン、お前は!
 今、手に武器があれば。ンドペキはそう思ってしまう自分に気づいたが、銃口に囲まれて座らされている自分にできることはなにもない。
「おのれ! ロクモン!」
 マルコの歯軋りが聞こえてきた。


 ただ、ドトーは頷きもせず、ただロクモンをしばらく見つめただけ。
 すぐに顔を戻し、捕虜となったンドペキ達を眺めている。
 立ち上がろうとするマルコに、ンドペキは「座っておれ!」と怒鳴りつけた。
 振り返った拍子に、スゥと目が合った。
 すまないな。こんなことに巻き込んでしまって。そう、心の中で謝った。 
 そして、ロクモンンが発した言葉に、凍りついた。
「こいつらは、レイチェル閣下を殺したんだからな!」

 シェルタは静まり返った。
 ロクモンの言葉を聞いても、ドトーに動きはない。
 騎士団兵も、相変わらず、微動だにせずに銃口を向けたままだ。
「サリというンドペキの隊員が」
 許せない。
 そこまで言うのか。
「ロクモン、おまえ……」


 と、乾いた音がした。
 聞き慣れた重レーザー弾の音。
 あっ、と思ったときには、ロクモンが吹き飛んでいた。
「裏切りの罪!」
 大音声がシェルタに響いた。
 続いて二発三発。
 倒れたロクモンに向かって。
 止めを刺すように。

 ンドペキは身を硬くした。
 今、スゥを守ることはおろか、自分の身さえ守ることができない。
 武器はなく、地面に膝を折って座っている。

 発砲した者は……。
 ドトーはじめ騎士団は、相変わらず動かない。
 ロクモンの体からは血飛沫が散り、白い煙が立ち昇っていた。
「詭弁の罪!」
 別の方角からも声が響いた。


 ンドペキは、息を呑んだ。
 騎士団ではない者の影が、シェルタのあちらこちらに、見えた気がした。
「将軍ともあろうものが!」
 声のした方を見ると、明らかに人影が。
「本務を忘れたばかりか!」
 声がどの影から発せられたものなのかわからないが、見る間に影は数を増している。

 さすがに、騎士団には動揺が広がった。
 それでもドトーは動かない。
「レイチェルが殺されたなどと!」
 いつの間にか、騎士団もンドペキ達も、影に取り囲まれていた。
 シェルタのいたるところに影が立っていた。
 いずれも武器を構えている。
「いたずらに事を混乱させんとする罪!」

 影と見えたのは、それらがいずれも、黒いローブを頭から被っていたからだった。
 黒いローブの集団は、総勢三百はいるだろうか。
 もう、騎士団は明らかに狼狽していた。
 武器をあちこちに向ける者がいる。


「鎮まれ!」
 と、影の中の一人、フードをはずしたものがいる。
 ンドペキははっとした。
 門番!
「我らは皆、ニューキーツの住人。仲間同士で憎みあっているときではない!」

 門番が近づいてきた。
「サントノーレ市長、ブロンバーグである! 鎮まれ!」
 声を張り上げる。
「ロクモンは、おのれの兵達の手によって処罰された!」
 もう一人、フードをはずしたものがいた。
 ロクモン隊の兵士だった。

 その男が何も言わないのを確かめると、ブロンバーグがまた声を張り上げた。
「このシェルタに集う者達には、先刻承知のとおり、街をアンドロから取り戻すこと。これは、喫緊の課題である!」
 なぜなら、太陽フレアの状況は予断を許さぬ。
 これが襲ってくる前に、サントノーレ及びニューキーツに平常を取り戻し、秩序を回復しておかねばならぬ。
 人類を滅亡から救うのは、この街の使命!
 そのためにも、我らが定めのとおり、動けねばならない!

「今まさに、ロクモン隊を含めたンドペキ隊に、騎士団が合流するときが来ているのだ!」
 ブロンバーグが、巨岩の上に立った。
「さあ、こちらに参れ! ンドペキ! ドトー!」
 巨岩の上で、三者会談を持とうというのだ。


 ンドペキは立ち上がったが、ドトーは席を立とうとしない。
「さあ、行こうぜ」
 と声を掛けたが、それでもドトーは動こうとしなかった。
 そして、呟いたのである。
「我々には我々の役目ってものがある」
「ん?」

 レイチェル騎士団。
 レイチェルを守り抜くこと。
 それが役目だろう。
 しかし、レイチェルは死んだ。
 自分が作り出したクローンによって。

「レイチェルは……」
 もういないんだよ。死んだんだよ。
 どこからともなく、そんな声がした。
 隊員の誰かが呟いたのだろう。

 ドトーは、その声がした方を向くと、
「いいや」と、短く言った。
 そして、
「ブロンバーグ市長。あなたはどうお思いか?」と聞いた。
 わしにはわからぬ。
 ブロンバーグの返事はそれだけだった。
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