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サントノーレ 作者:奈備 光

13章 解決編2

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113 なつかしの荒地軍

「真打の登場!」
 紹介の仕方が芝居ががっていたのだろう。
 それとも、レイチェルの登場の仕方が大げさだったのか。
 奇妙に興奮に包まれて、二人が部屋に入ってきた。
「レイチェル!」
「マリーリ!」

 かつてロクモンを洞窟に迎えた時のレイチェル。
 それを知っている者にとっては、こういう時のレイチェルの凄みが思い出される。
「忙しそうだね!」
 声が掛かった方を見て、レイチェルは笑ってみせた。
 しかし、すぐその後、ぐっと顎を引いた。

 ニューキーツを治めてきた長官レイチェル。
 しかし、ンドペキは違う感情も持っていた。
 かわいそうなレイチェル。
 すんでのところで踏みとどまっているレイチェル。

 二人は、拍手を受けて人々の輪の中に入り、そのまま横切って、ライラの隣に座った。
 厳しい顔をしている。
 しかしレイチェルは、チョットマと同じように、膝を抱えた。


「さてと、二人が登場したところで、小休止ってのはどう?」
「いいね!」
「そりゃないだろ!」
「こんな気持ちで呑み直しなんて、できるか!」
 賛否相半ば。

 休憩を取りたかったわけではない。
 レイチェルの顔色が悪いように感じただけだ。
 目が合うと、レイチェルはいつものように微笑んだ。
「それじゃ、続けるとするか」


 俺達は一体、誰と戦っているんだろう。
 そんな疑問は、ずっと晴れないままだった。
 エーエージエスでオーエンによって殺された軍。
 これはニューキーツ正規軍ということにはなっている。
 しかし、本当か。

 次に荒地軍。
「なんとなく懐かしくさえ感じるな。荒地軍という呼び方」
 こちらはKC36632によって跡形もなく瞬殺され、所属は不明のまま。
 そして、エリアREFに攻撃を仕掛けてくる一隊。


 そもそもタールツーとは?
 誰も姿を見たことのないアンドロ。
 治安省元長官であり、後にニューキーツ暫定長官を名乗った。
 子供があるという噂があった。女性ということになっている。
「人を愛する感情を得た珍しいアンドロだと、ハワードから聞いたことがある」

 我々はそのタールツーの私兵と戦っている。そう考えていた。
 しかし、奇妙な点もあった。
 エリアREFへの攻撃が散発的だったのはなぜ。
 使者を寄越しておきながら、まだ当方から返答もしていないうちから、新たな攻撃を仕掛けてきたのはなぜ。
 レイチェル騎士団を壊滅させるほどの戦力を有しながら、政府建物に侵攻した我々にはまともな攻撃を仕掛けてこず、いつの間にかいなくなったのはなぜ。

 それにあの装備の違和感。
 てんでバラバラの装甲を身に着けているかと思えば、統一された純白の装備の一団。
 そして、そもそも私兵ごときに、ニューキーツ精鋭であるレイチェル騎士団はなぜ負かされた?

 タールツーが暫定長官を名乗ってから、首を傾げる人事もあった。
 レイチェルSPであり、超堅物ともいえるヌヌロッチを治安省長官に。
 本来、タールツーの牙城である治安省の長官に、敵の大参謀をなぜ入れる?


「ずっと疑問だった。俺達は本当に、正義のある戦いをしているのかとね」
 ニューキーツの街を、アンドロのタールツーから奪還する。
 レイチェルを亡き者にしようとした極悪人を成敗する。
 その御旗の元に俺達は戦っていた。
 しかし、このどうしようもない違和感。
「本当は、俺はずっと悩んでいた」

 とはいえ、レイチェルのシェルタ探しを理由に、時間稼ぎをしていたつもりはない。
 これは勘違いしないで欲しい。
 相手が見えない戦いほど、戦い難いものはない。
 ハクシュウから預かった東部方面攻撃隊。
 一人ひとりの命。
 何としても守らねば。
 そう考えていたんだ。

 だから、あの連中、ドトーを筆頭にするレイチェル騎士団と合流した時には落胆したよ。
 あんなに頭の固い連中だとは。
 言い方は悪いが、立場を重んじるばかりに、大切なことが見えていない連中。
 忠義の本質を考えず、保身を図ることのみに長けた連中。
 俺はそう感じたね。
 こんな連中との合流を画して、時間を浪費した自分に腹を立てたね。


「ところで、ヌヌロッチによれば、芝生広場でカイロスの刃をチョットマから取り上げ、装置を起動させたのはキャリーだったという。そしてヌヌロッチはこうも言ったんだ」
 元々タールツー軍なんていなかったんじゃないか。
 それどころか、そもそもタールツーなんて、いなかったんじゃないかと。

 そしてもう一つの情報。
 ライラとチョットマから聞いた話だ。
 エリアREFのバー、ヘルシードのマスターが、調べた情報。
 タールツーというアンドロは実在した。
 しかし、数年前に解体処理になっている。
 記録の上では。

 ちなみに、解体処理は廃棄処分と違って、重い罪を犯したアンドロに与えられる罰だ。
 なんとなくニュアンスは分かるよな。

 ヌヌロッチもその記録にあたったのかもしれない。
 だから、タールツーなど初めからいなかったのではないかと言い出したんだな。


「しかし俺は、違う、と思った。もしそうなら、辻褄が合わない」
 反レイチェルの立場をとる集団がいないなら、アヤちゃんやレイチェルをエーエージーエスに放り込んだのは誰なんだ?
 親衛隊や防衛軍、そして攻撃隊の兵が次々と強制死亡させられていったのはなんだったんだ?

 思い出して欲しい。
 俺達がスゥのあの洞窟で、荒地軍と対峙していた時のことを。
 大きな悪意の存在がなければ、ああいうことは何も起きなかったはずだ。
「俺は、悪意のタールツーは実在したと思う。俺達が洞窟で武器を磨いていたあの時には」


 では、キャリーとは誰?
 ヌヌロッチが言うように、キャリーが戻ってきてタールツーを排除した?
 死んだはずの前長官が?
 親衛隊か騎士団を引き連れて?

 俺はさっぱりわからなかった。
 この次元に戻ってくる門で、あの女の子風の老婆が言った、あの言葉を思い出すまでは。

 今は、完全に謎は解けている。
 辻褄の合うストーリーを披露することができる。
 誰がどこで何をしたのか。
 真実のすべてを。


「しかし、俺から話すより、もっといい方法がある」
 元々静まりかえっていた部屋に、一層深い沈黙が落ちた。
「当の本人から」
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