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サントノーレ 作者:奈備 光

12章 解決編1

109/118

109 大きな謎、小さな謎

 東部方面攻撃隊の同窓会。
 あけぼの丸自警団の結団式。

 そして、新団長スジーウォンの決意表明が中心の作戦会議。
 最後に、ンドペキがメッセージを。
 そんなプログラムで、会は始まった。

「レイチェルとマリーリは船長と会議です。遅れて参加してくれると思います」
 司会のシルバックが報告した。
「では、恒例。みんな車座に座って。ゲストの皆さんも、よろしくお願いします!」
 もちろん、ヘッダーを着けている者はいない。
 自分の苦労を殊更に語る者ももういない。

 作戦とは。
 スジーウォンが既定方針を確認した。
 いつものように、いくつも意見が出された。
 こんな場合はどうする?
 優先事項は、どっち?


「これで、作戦会議は終わりです! さあ、皆様お待ちかね! 我らがアイドル! チョットマ! 歌ってくれます! スタンド・バイ・ミー!」

 だからダーリン ダーリン そばにいて
 オー 僕のそばに
 オー そばに
 そばにいて そばにいて欲しい


 ありがとう! チョットマ!
 歌を聞いて、こんなに泣いたのは初めてだ!
 チョットマ! ずっと僕の傍にいてくれ!

 そんな言葉を口々に、隊員達は三々五々、帰っていく。
 晴れやかな笑顔のチョットマが見送っていく。
「あなたこそ、すっと一緒に居てね」などと、声を掛けながら。


 その後まで残った者は、十五人ばかり。
 誰もが床に座っていた。

 パリサイドの体を持て余し気味のイコマ。
 その手を取っているユウ。
 少し間をおいて、ンドペキとスゥ。
 アヤは再生された足を見せるように、足を投げ出していた。

 チョットマ、プリブ、スミソ、シルバック。
 向こう正面には、団長となったスジーウォンとコリネルスや数名の隊員。
 そして、ライラとホトキン。


「さてと」
 ンドペキは立ち上がった。
 すでに、イコマとは話をしてある。
 もう、同期はしていない。
 イコマがパリサイドとして再生したとき、一瞬だけ記憶のやり取りをし、後は切れた。
 ユウの配慮だった。
 スゥとユウについても同様だった。

「色々なことがありました。今更、状況を整理する、ありていに言えば、数々の謎を解き明かす必要があるのかどうか、わかりません」
 会場は静まり返った。
 洞窟の部屋でイコマが推理を披露したあの日と同じように、チョットマが膝をきつく抱えこんだ。
 ただ、あの時と違うのは、チョットマの顔に小さな喜びが灯っていること。


「そもそもの始まり、それはサリの失踪事件。あ、いえ、もうその話は済んだこと。いまさら繰り返しはしません。ただ、サリの事件が解決したあの時点では、いくつもの疑問が放置されたままでした」
 スジーウォンから罵声が飛んできた。
「なんだ、そのくそ丁寧な喋り方 ! 気色悪いぜ。普通に喋らんかい!」
「ハハ、了解だ」


「さて、今日、この機会を持とうと思ったのは、他でもない、チョットマから話せというオファーがあったから」
 相変わらず、セオジュンとアンジェリナの行方が知りたいというのだった。
 自分は結局、あのまま、ライラと一緒にこっちに戻って来てしまったからと。
 心残りで、というのだった。
「確かにチョットマは、いや、我が隊のアイドルガールだけがその謎に食いついたまま放さなかったんだな」
 おかげで、自分の頭も整理できたし、多くの謎が解けていった。

「ええっ、いつ私、アイドルになったの?」
「ハハッ。歌姫と呼ぶことにしようか」
「やめてよ! そんなの無理! あれしか歌えないんだから!」
「一曲だけでも立派じゃないか!」
「そう?」


 ンドペキはチョットマにニヤリと笑ってみせてから話し出した。
 謎とは。
 セオジュン、アンジェリナ、ハワード失踪事件。

 実は、この謎を解き明かすことで、様々な事象が詳らかになってくる。
 必ずしも、自動的に、というわけにはいかないが。
 そうではないかという仮説が、現実味を帯びるということ。

 しかし、俺自身、今、どこから話をスタートすればいいのか、わからない状態だけどね。
 解くべき謎が多すぎて。

 みんなはどう?
 他に、どんな疑問がある?

 列挙してみようか。
 時期の順に、挙げていこう。


 まず、エーエージーエスでオーエンに惨殺された百五十名の軍。
 そして正体不明の荒地軍。
 アヤとレイチェルをエーエージーエスに放り込んだ者の正体。
 いずれもタールツーの仕業ということになっていたが、証拠は皆無だったよな。
 そして、チョットマを付け狙うクシの正体。
 以上でいいかな。

 ただ、俺としては、もう一つ挙げておきたいと思う。
 レイチェルはなぜ、騎士団との共同作戦を避けていたのか。
 なぜ、我々に騎士団との連絡方法を教えなかったのか。
 彼女は、俺とのハネムーンが、などと訳のわからないことを言ってかわしていたが、当然、本当はそんな理由じゃない。
 何らかの意図があったと思う。
 彼女には、彼女なりの考えが。

 ここまでは、あの洞窟で過ごした時代に未解明だった「謎」。
 いいね?


 エリアREFに移ってからの出来事に移ろう。

 まず挙げられるのは、ロクモンが残した例の二つの言葉。
 もう忘れてしまったかな?
「ヘスティアーに保護されし孤児、生贄を喰らう」
「ラーに焼かれし茫茫なる粒砂、時として笑う」

 レイチェルのシェルタへ導く合言葉。
 これには本当に手こずったね。
 しかし、もうこれを解説する必要はないよな。

 意図されていたかどうか、今となっては分からないが、スジーウォンとスミソがあのカイロスの刃をロア・サントノーレに取りに行く、丁度そのタイミングで、俺達はその場に立ち会うことができた。
 仮想の空間でね。
 それによって、まんまとシェルタに辿り着くことができた。
 もし、ブロンバーグがそれを見越していたとすれば、まさに神業だよな。
 ブロンバーグがどう思っていたのか、もう分からないが、謎は解けたということにしておこう。
 それでいいよな。

 で、クシの正体。
 これは、今日はなし、ということにしよう。
 それに、これに関連するハクシュウの最期。
 詳しいことは、スジーウォンとチョットマがそれぞれ話してくれるだろう。
 しかし、今ではない。
 十年はかかるかな。
 二人の気持ちが落ち着くには。


 ンドペキはハクシュウのくだりはあえて言葉少なく、はしょっていった。
「では、次」
 異論は出ない。
 ハクシュウという名を出せば、チョットマの顔が曇ることを誰もが感じていたからだ。
「変な言い方だが、本命の謎のひとつ、ということにしておこう。先ほども言ったように、最大の課題は、セオジュン、アンジェリナ、ハワードの失踪」
 サリの時と同じように、チョットマが俺の部屋に駆け、いや、イコマの部屋だったかな、そんなことがこの事件の発端だった。

「そして、最大の謎は何と言っても、レイチェルの帰還」
 謎と言っては、彼女に悪いけどね。
 せっかく生き延びてきたのに。

「それ以外にも、小さな謎が散見された」
 政府建物に侵攻した時、レイチェル騎士団を壊滅させるほどの力を持ちながら、なぜアンドロ軍は当方にはまともに攻撃してこなかったのか。
 というより、エリアREFへの攻撃はなぜあんなに散発的だったのか。
 そういや、ロクモンの裏切りも唐突だった。
 でも、そのいきさつはもう、チョットマから聞いてるよな。
 なんともまあ、というお粗末な結末だった。
 これについても話す必要はないと思う。


「大きな謎、小さな謎が積み重なって、何がなんだかわからない。そんな時期だった」
 ンドペキは、ふう、と息を吐き出した。
 実際、どこから話せばわかりやすいのか、まだわからなかった。
「何から話せばいい? あいにく、イコマじゃないから、話は下手だ」

「お、シルバック」
 司会役を降りたシルバックも、チョットマと並んで膝を抱えていた。
「やっぱり、王道で。きっかけとなった謎から。つまり、セオジュンとアンジェリナとハワードの件を」
「わかった」
 ンドペキはそう言ったものの、それではレイチェル絡みの話は後回しになる。
 彼女を前にして、上手く話せるだろうか。

 いや、どうせ同じこと。
「チョットマ、最初から俺が話していいか?」
「もちろん!」

 チョットマがにこやかに手を振った。
 彼女は真相を知っているのか、知らないのか。
 知らないながらも、薄々は感じているのではないか。
 どうか、傷つかないように。
 いや、もうそんな弱い女じゃないよね。
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