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サントノーレ 作者:奈備 光

11章

106/118

106 鈍感ンドペキ

 目覚めは悪かった。
 頭が割れるように痛い。
「むう……」


「気がついた?」
「あ……」
 装甲は脱がされていた。
「凄い汗、かいてたよ」
「そうか……」
 スゥが額の汗を拭ってくれた。

 全裸で毛布に包まれていた。
「体中、真っ赤だった」
 ンドペキは大きく息を吐き出した。
「すまなかったな」
「ううん。装甲を脱がすとき、みんなが見ていて、恥ずかしかったけど」
 恥ずかしいのはこっちだろ、と言いたかったが、スゥの唇に塞がれてしまった。


 夢を見ていた。

 大阪福島のマンション。
 あのバーチャル空間を作るとき、嬉々として悩んだあの時の夢を。

 ユウが喜ぶように。
 アヤが喜ぶように。
 時期的に嘘があってもいいだろうか。
 あのオルゴールを玄関に飾っていた頃、すでにあの椅子はなかったはず。
 でも、どちらも我が家の情景を語るうえで欠かせないもの。

 珈琲はどのメーカーを飲んでいたっけ。
 机の上の雑誌は?
 PCは何を使っていたっけ。
 そもそも、当時の自分の容貌は?

 楽しかった。
 そんなことを考え、ユウやアヤが喜ぶ顔を想像するだけで幸せを感じた。
 たとえそれが記憶の中から生み出された仮想の光景でも。

 アギの自分ができることはそれくらい。
 二人が喜ぶなら、どんなことでも。


「そんな夢。イコマとしての夢だな」
「へえ」
 スゥの反応は微妙だった。
 スゥは、スゥ自身としてその部屋を訪れたことはない。
 ユウの意識を通して知っているだけだ。

「正直に言うと、もう一種の苦痛だよ」
「なにが?」
「イコマの意識と同期していることが」
「ふーん。今の気分は?」
「同期が切れている時には、なんていうのかな、すがすがしい気持ち」
「そうね」
 スゥも同感だというように頷いた。

「同期しているとき、どちらの気持ちとしても罪悪感があるんだ。もちろん、スゥとユウに対して」
「私も」


 ンドペキはまだ自分はまともに考えられない、と感じた。
 頭が重い。
 ここの気候が悪いのか、高い重力が悪いのか、寝不足か、疲れているだけなのか。
 そしてアヤのことを思い詰めて……。

「ちょっと話があるんだ」
 頭痛は治まる気配を見せない。
 それでもンドペキは、スゥと話しておきたかった。
 幸い、周りに人はいない。

「やっと、って感じね」
「ん」
「私も話しておきたかった」
「ああ」


 ンドペキは、心にある考えをスゥにぶつけた。
 地球に帰るつもりだと。
 アヤを見つけ出し、三人で新しい暮らしを始めるのだと。
 それが叶わないまでも、ひと目アヤを。


「そうね! そうだと思った!」
「賛成してくれる?」
「分かってないなあ、ンドペキは。フフ、これってライラの口癖ね」
「あん?」
「鈍感ンドペキ。昔から。六百年経とうが変わらない。ね、私の気持ちって、そんなに掴みにくい?」
「んー」
「私もそうしたいって、何度も顔に描いていたのに」
「そうか!」
「帰ろう!」

 ベータディメンジョンを出て、地球に帰る。
 でも、どうやって。

「ヌヌロッチに道案内を頼むしかないよね」
 そういえば。
「マリーリは向こうに帰るって言ってたそうだよな」
「うん。それに」
「そう。時間的に考えたら、たくさんのアンドロが向こうへ移行したのは」
「いつも彼らが使っているゲートが閉じてからのことじゃない?」
「そういうこと」
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