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悪魔の本
作:神名代洸



<中編>


俺は言いたかったが、話せなかった。
本に書かれている事が本当だと分かっているからだ。
話してしまったら自分がどうなってしまうのか・・・それが怖かった。その後授業も終わり、俺は終礼の挨拶が終わると一番に教室を飛び出した。
【悪魔の本】を鞄に入れて。

例の死んだ不良の事を考えていたため、いつどうやって帰ってきたのかは覚えていなかった。
けれど、自宅に入り、冷蔵庫から炭酸水を取り出して勢いよくラッパ飲みするとようやく少し落ち着いた。
今のこの時間家には誰もいない。
母親もたぶん買い物にでも行っているのだろう。

俺は片手に菓子を持って、自室に入っていった。
ずっと考えていた。昨日の事を。
あの不良の事を考えながら本を開いて見ていた時、確かに絵が動いているような気がしたのだ。まさかと思い、そのページを開いてみた。

「な、ない・・・。何で?――そんな―――まさか―――ありえない―――嘘だ!」

その絵が載っていたページの絵が消えていた。
確かに昨日までそこにはあったはずの絵が・・・。

「ふふっ―――ふふふっ、はっはっはっ。」

俺は信じられなかった。だが、絵が消えてしまっているのも事実。
この本は俺を守ってくれる。
そう思った。思うとなんだか気分が高揚してきた。
今まで俺は退屈の不幸だった。だけど、これさえあれば刺激にもなる。退屈でなくなる。

俺はそれからその本をどこに行くのにも持ち歩いた。
カバーを付け、分かりにくいように。退屈すぎる毎日にうんざりしていた俺は嬉しくて仕方がなかった。
だが、使う相手がいない。それがつまらない。
相手を探しに街中へと出かけるようになった。

「何だよ。せっかくいいもんゲットできたってのに・・・つまんねーな。」

数日ブラブラしても相手がいない。
みな、俺の事を見てもいない。それもそうだ。知り合いでもなんでもない相手なのだ。気にするわけがない。

俺は考えた。
相手が見つからないなら簡単に見つける方法は一つ。
クラスメイトを使えばいい。

その日の夜、自室で俺はクラスの集合写真を見ていた。
一人ひとりを順番に―――。

そして、始めた。

まずはクラスで一番の太った人間。
男女一人づつ・・・。

標的となった男子生徒はその頃自宅にいた。
自室でテレビゲームをしていた。

「そらそらそら。―――おっしゃ。やったぜ!これでこの面はクリアだ。さぁ〜てと、次はどうかな?」
片手にコントローラーを持ち、あいた手でポテチを取り、ボリボリ食べながら画面に見入っていた。

その時、突然部屋の電気がチカチカし、正常に戻った時には誰もいなくなっていた。



「いや〜ん。いつ見ても素敵♪」

もう一人、標的となった女子生徒は上下トレーナーに着替えていた。
今彼女はリビングで大好きなドラマを見ていた。
彼女が好きな俳優が出ているドラマだ。

両親は共働きで後30分もすれば帰ってくる。

彼女はテレビに夢中になっていた。
彼女は背後から近づいてくるものに全く気付いていない。

そして―――。

ガチャッ。
玄関が開き、まず母親が帰ってきた。

「ただいま。ごめんね。遅くなっちゃって。すぐ食事の準備するから。」
そう言いながら入ってきたが部屋には誰もいなかった。つい今しがた間でいたように電気はすべてついているだけだった。

次の日、学校で大騒ぎになっていた。
一人の男子生徒がプールの底に沈んでおり、もう一人の女生徒が理科室で死んでいたのだ。
沈んでいた男子生徒は全身が風船のように膨らんで、顔の半分は潰されていた。
女生徒は胸から下腹部まで大きく切り裂かれ、内臓がなくなっていた。
まるで獣に食べられてしまったかのように血が当たり一面に飛び散っていた。
目玉もくりぬかれて・・・。
警察もこの異常な犯人を捕まえようと自宅から学校まで付近一帯を聞き込みしたが犯人らしいめぼしもつかめなかった。クラスメイトも事情聴取を受けることになったが、犯人につながることは何一つなかった。
マスコミはこぞってこの凶悪な犯罪をニュースで取り上げたが、事件後数日たっても捜査に進展が見られない警察を非難した。
被害者の家族は涙で頬を濡らし、情報を求めた。

「見つかるものか。“悪魔”が犯人なんて誰が信じるかってんだ。」

俺は【悪魔の本】を開いた。
本は全部で30ページ位の薄い本だが、使ったのはまだ3ページ。
まだまだ楽しめる。俺は笑いたくなった。
次の日の夜、自室に鍵をかけ、俺は次の標的を選んでいた。
その時、携帯の音楽が鳴り出した。
画面を見ると友達の番号だ。

「もしもし。」
「ちょっと今いいか?」
「ああ、どうかしたか?」
「あのさー、今回の事件どう思う?」
「どうって・・・。」
「俺さー、考えたんだけど犯人は俺達のクラスメイト2人も殺してるじゃん。なんかさー、もしかして俺達のクラス・・・狙われてるかもって思ったんだけど、お前どう思う?」
「う〜ん、わかんないな。何で狙われなきゃならないんだ?理由がわかんないって。」
「そう、・・・そこがわかんないんだよ。でさ、もしかしたら――もしかするとだよ。これで終わりじゃない気がするんだけど・・・。」

『こいつ、意外とカンがいいな。』

「でも、俺達には何にも出来ないし・・・。」
「うん、そうだって。」
「だから、刑事さんも言ってたんだ。とにかく一人にならないで気をつけるようにって。」
「話したのか?」
「うん、一応ね。」

『チッ。』

次の標的はこいつと決めた俺は、電話を切った後本を開いた。
パラパラとめくり、目に付いたのは見るからに気持ちが悪い悪魔だった。

「これならアイツにいい。」

俺は手を沿え、さっきの電話の相手を頭に浮かべた。
『次の日が楽しみだ。』
俺はそう思いながらクスクス笑った。

次の日、学校の建物内―――あちこちから悲鳴が。
人の体の一部があちこちに散らばっていたのだ。
まるで強い力で引きちぎられたかのように。

悲惨なのは頭部を発見した生徒だ。
白目から血の涙を流し、舌はダラリと垂れ、血だまりの中に横向きで落ちていた。
血飛沫の後から、まるでどこか別の場所から投げられたかのように―――。

クラスメイトが三人も殺された事で生徒達は学校に出てくるのを嫌がるものが出てきた。保護者も心配で出したくないと学校へ電話するものが後を絶たない。
だが、殺害現場がどこかも特定されていない。
だから自宅なら安心だとは言えないのだ。それでも自宅で身内が見ていればまだ安心と考えたのだ。
どちらか片親が交代で仕事を休み、子供を守ろうと必死になった。

俺の両親もおんなじだ。
母親が自宅にずっといる。
すべてのドアに鍵をかけ、誰も入れないように。
そんな事をしたって無駄だとは誰も思いもしないだろう。
どこからでも入れるのだ。悪魔は。












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