太陽が真上を向いている。
『会いたい』
大きな噴水のある街。僕は、人の喧騒から距離を置かれて立ち尽くしていた。
メールを打つ。相手は、僕の彼女――いや、僕の彼女だった人。
夏の終わりの日、別れると決めた。人混みの中でも目に留まる彼女、人混みの中ならより一層見つけにくくなる僕、どうせ無理な話だったのだ。
彼女は、告白されれば合わない相手とも付き合う。気に入らなければ、最短二ヶ月で縁切りと噂だ。
『待ってる』
ドラマティックにどうにかなると本気で思っていた。外見は悪いけれど、内面を知ってもらえれば……自信過剰気味に、そんなことを初めは考えていた。
でも、僕みたいなやつではどうもなりはしなかった。最短二ヶ月という噂を塗り替え、その上、手すらも繋がなかった恋人関係はたった三週間。
別れると彼女に言われてすぐは、どうにかできないかと悩んだ。
僕と居ると彼女がつまらなそうにするのは気づいていた。でも、時間が経てば、彼女を笑わせてあげられると妄信していた――時間さえあればと、彼女への執着。
でも今では、決心がついている。
けれど想いがくすぶり続けて、どうしようもなくて。最後だから、最後くらいは恋人らしく振舞いたい。
……今日という日が最後なら、せめて彼女の背中が小さくなっていくのを見届けたい。
一時間、二時間、三時間が経って、まだ彼女が来ない。
人通りが少なくなってきている。けれど彼女はどこにもいない。
まさか送信ボタンを押し忘れたかと、携帯を再確認する。
『送信できませんでした』
――噴水が鳴いている。悲しげな音をたてて立ち昇っている。
その音にかき消されるように、彼女との思い出がひとつずつ消えていって、
留めるための彼女の名残なんて、僕の手元には何も無くて、
忘れていく。忘れられていく。そんな、僕だけが本気だった夏休みの恋人ごっこ。 |