第三話
深夜二時。瑠美は自室からそっと抜け出し、近所の小高い公園にきていた。天体望遠鏡は荷物になるので持ってこなかった。深夜の公園は静かさの上に静かさを塗ったように、ただ木々のざわめきが聞こえるだけだった。闇を心細げに外灯がチカチカと照らしていた。影が吸い込まれそうな闇が怖かった。でも、空を見上げれば星が輝いている。それだけでじゅうぶん勇気がもてた。
滑り台の一番上に座り顔を仰向け、流星が流れだすのを待っていた。
「あっ」
二十分待った頃だろうか、夜空を横切るものがちらほらと姿を現せはじめた。
輝いては消えていく。そのはかない煌めきが心臓を高ぶらせ、瑠美を昂揚感が包んでいる。
「きれい」
消えゆく時をしってか加速する炎に包まれる星は、さらに美しい。
瑠美は流星に魅了され、何も考えられなくなった。
それならこうしてやるとばかりに、瑠美は叫んだ。
どのくらい時間が経ったのだろう。空ばっかり仰いでたから首が痛くなってきた。そろそろ帰ろう。そう決めて、最後に流星に願いを言ってみようかと思いついた。一つの流星が流れる間に三回願い事を言わないといけない。という、誰もが知ってるまじないだ。出来るかどうかちょつと気になる。試してみよう。
「カレシができますように。カレシができますように。カレシができますように」
一筋の光が見えたら、願いを急いで言うのだが、間に合わない。
「カレーパン食べられますように。カレーパン食べられますように。カレーパン食べられますように」
願いを単純なものにしても三回言い終わらないうちに流星は去ってしまう。
えーい、だったらこれでどうだ。
意地になってインチキをした。
「カレシ欲しい×3」
と、突然目の前に閃光がはしった。