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星の魔法  作者: 直美
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第一話

「鈴木宗人です」

一学期半ばに転校してくるとはめずらしいことだ。自己紹介を聞きながら、窓側の席で浅岡瑠美は空を眺めていた。

今夜は晴れてほしいな。

ちらほらと雲が見える。今日は十年に一度の流星群が訪れる日だ。

この日を幾日待ち焦がれたことか。早く夜になることを祈るばかりだ。

家に帰ったら、天体望遠鏡を準備しよう。

「浅岡、学級委員だから鈴木のことたのんだぞ」

「えっ!は、はい」

いつのまにか勝手に話は進んでいたらしく、本人の知らぬところで世話役を決められていた。

慌ててる瑠美をよそに、鈴木は隣の席に着いた。

まだこちらの学校の制服が出来ていないのだろう。紺のブレザーにグレーのズボン姿だ。ある程度端正な顔つきで一部の女子にはモテそうだ。

「教科書まだだよね。悪いけど、あたしの一緒にみてね」

「うん、えーっと」

「浅岡。浅岡瑠美。よろしく」

瑠美が笑いかけると、転校生は人なっつこそうな笑みを向けた。

「よろしく、浅岡さん」



「こっちが食堂で、その隣の階段を上ると図書室につながるわ」

瑠美の校舎案内にうなずきながら鈴木はついてくる。休み時間が短いので今は必要なところだけ、生物室に向かう道すがら教えている。昼休みになったら校舎全体を案内するつもりだ。

放課後まで案内につきあわせるつもりもないし、意地でも放課後は早く帰ると宣言する。

「ここが生物室?」

棚にホルマリン漬けのビンがならぶ生物室に入りながら、鈴木がたずねた。

「そうよ」

骨格標本と人体模型に出迎えられながら、鈴木のあとにつづいて入る。

今日の実験はフナの解剖であった。クラスのほとんどが嫌がっていたが、瑠美にはたいして楽しくもない授業でしかなかった。

早く流星みたい。

メスでフナを解体しながら、この前の家庭科で鯖を包丁でおろしたようにはいかないものだと思った。

各パーツごとに切り分けてバットにそれぞれ並べる。

「浅岡さんうまいね。僕なんてダメダメだよ」

うなだれた鈴木のバットを見ると、どれがどのパーツかわからないほどぐちゃぐちゃになっていた。

これではフナも死ぬに死ねないだろう。死んでるんだけど。あの世でさまよってそうだ。

「そんなことないよ」

引きつり笑いを浮かべ答える。

「いつもならちょちょいのちょいなのになぁ」

などとつぶやく鈴木だが、信じられなかった。



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