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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

呪いの黄色い本

作者:東雲楓
ホラーです。早速書いてみました。よろしくお願いします。
「ねぇ、知ってる?『呪いの黄色い本』の話」
 昼休み。友人と昼食を食べていると、友人が唐突にオカルトチックな話題を挙げた。
「ん……。知らない」
 私は卵焼きを飲み込んでから、かぶりを振った。それを聞いた友人は口元に悪戯めいた笑みを浮かべてから、続ける。
「図書室に出るらしいのよ」
 図書室に?本が?それは当たり前じゃないの?私が指摘すると、友人は「このせっかち。まだ続くのよ」と言われた。それもそうね。私は頷いてから卵焼きをもう一つ口にする。
「ある一定の憎悪を持った人間が、一人で訪れるとその本は現れるの。適当に本棚を見ていると、偶然に目に入るらしいわ。そして、その人の恨みを晴らしてくれる」
「どうやって?」
 自然に私は尋ねていた。それを見た友人はにたりと笑うと「やっぱ、あんたも好きね。こういう話」と言う。だが、友人の言葉は的を射ていない。私は別にこういったジャンルの話が好きと言う訳ではない。私が惹かれたのは、この話のジャンルではなく、本質だ。詳しく言えば、恨みを晴らしてくれるという部分に大いに惹かれた。だが、勘違いしてくれる分には良いだろう。ラッキーだ。
「結構簡単みたいよ。本に呪いたい人の名前を書いた紙を挟んでおくだけ。紙は何でも良いらしいし」
「あー。私が訊いたのは、どんな呪いをかけてくれるのかってこと」
 確かに友人の今言った呪いの掛け方も大切だが、優先順位は断然にこちらだ。呪いの程度が低かったらこんな話、聞く意味がない。
「殺しちゃうんだって………」
 友人は眉を顰め、顔をこちらに近づけて、周りをはばかるような小さな声で言った。……殺す……呪い殺す…へぇ、結構イケてんじゃん。
「まぁまぁね。で、それ、何の漫画?」
 私は友人を茶化すような視線で見た。友人はこちらの意図を察したのか、顔を若干赤くして言う。
「あー!聞き入るふりして、信じてなかったの!?」
 ちょろいわね。この台詞は私のトラップよ。私がこんな話に興味を持っていないという先入観をあなたに刷り込ませるための言葉よ。私の行動への布石よ。
「でもさ……マジらしいのよ、コレ。こないだ事故で亡くなった一組の子いるでしょ?あの子も、もしかしたら呪いかもって、先輩が………」
 思わぬ収穫が出た。しかも、〝も〟ってことは他にも実例があるのね……。ますますイケてるじゃん、その呪いの本。ちょっと信じてみてもいいかもね…………。

* * * * * * * * * * * * * * * *

 放課後、誰もいないのを確認してから、私は図書室に入った。この日は職員がいない。残るは図書委員だが、それは私だ。早くしないと人が来てしまうかもしれない。私は本棚を探した。大丈夫。私には適性がある。必ず現れる。
「あっ!!」
 思わず声が漏れた。今まで気付かなかったのが不思議なくらい真っ黄色の分厚い背表紙が突如として目に飛び込んできたのだ。だが、驚いたのは一瞬で、すぐに感情は安堵と喜びに変わった。
「ふふ。やっぱり。私には適性があったのね。認めてくれてありがとう。早速、使わせてもらうわ」
 この本に憑いているのであろう霊的な何かに一声掛けてから、私は本を本棚から取り出した。背表紙にも何も書いてなかったが、表紙にも何もない。しかし、ページを一ページ捲ると、そこには普通の書籍と同じような文字があった。
『説明  この本に人間の名前を書いた紙を挟むと、その人間は死にます。同姓同名の問題はお任せください。こちらで何とかしましょう。あと、できれば紙はいらないプリントの裏などを使いましょう。資源は大切です。因みに、これを使用した副作用はありませんのでご安心を。………最後に、ここに名前を挟まれた人間は本当に死にます。今風で言うのなら、マジです。ガチです。それでも、本当に良いのなら、どうぞ挟んで下さい。私があなたの恨みを晴らしましょう。では。』
 その幽霊らしからぬ文体に口元を緩ませつつ、本当に殺してくれるのだろうかと言う一抹の不安を覚えた。だが、まぁ、一度信じてみようと思ったのだから、一応最後までやってみるか。それに、『副作用がない』と言うのだから安心だ。私は早速、ポケットから紙を取り出し、適当なページを開いて挟んだ。どうやらこの本に記された文字はあの説明だけだったようで、千ページはあろうかという分厚い本の他のページは白紙だった。資源がどうとか書いたのはどこのどいつだったろうか。
 私は少し苦笑いしながら本を元の場所に戻す。しかし、心に突如芽生えた不安の種がその手を止めた。…もし、これが悪戯で、私をハメようとするものだったら?友人の話からこのドッキリが始まっていて、私が恨んでいる人間を暴いてやろうという趣旨のものだったら?……なんて根拠のない推測だ。自分の心のどこかに自分の手によって人が呪い殺されるかもしれないことを恐れている自分がいるのだろうか。だから、こんな馬鹿らしい想像が出来るのだろうか。
「何を怖がっているというの?」
 私は自身に呼びかけた。忘れたのか、あの女に受けた屈辱を!
 一か月前のことである。私には彼氏がいた。名前は下野涼介しものりょうすけ君と言った。サッカー部のエース。成績優秀。眉目秀麗。絵に描いたような素敵な男の子だった。
 しかし、あの女……同級生の河野里美こうのさとみが、涼クンを奪った。それが、ちょうど一か月前。あの女……涼クンを誑し込みやがって!!メールで送られてきた二人が全裸でベッドに寝そべっている画像と、あの女が涼クンを装って送ったのであろう『ごめん。もうお前じゃ満足できないw』という短文メールを私はまだ忘れていない。どころか、未だに保存してある。
「はぁ………絶対……許さないんだからッ!!」
 思い出して、叫んだ。恨みがさらに増大し、心が負の感情で包まれる。……そうだ。どうせなら、他のウザい奴ら全員殺してやる。
 私は本棚に戻すのをやめ、呪いの本を机に置く。それから、鞄をまさぐり、ノートと筆箱を取り出す。そして、ノートを千切り、千切り、千切り、名前を書く紙を大量に作る。ノート一ページにまとめて書いて、挟んでもよかったが、それでは意味がなくなると、根拠のない不安が起こっていた。
 まず、あのウザい担任…死ねッ!!それから、中学時代に私をいじめた女子六人…死んでしまえッ!!口うるさい母親…お前も死んで良いよ。学歴を自慢してくる兄…消えろッ!!そして、この呪いの本の話をしてくれた友人。お前も邪魔だよ……。流石にいくら馬鹿なお前でも、これだけ急に私の周りの人間が、私に話した後に死んだら気付くだろ…お前の!存在は!邪魔で仕方ない!憎いッ!死ねッ!!それから……。
 十数名の名前を書いて挟んだところで、私の手は止まった。こんなものだろうか……。過不足がないか、ページを捲ってみる。パラパラ。まぁ…大丈夫だろう。
「あれ?」
 私は目を丸くした。無い。一番最初に書いた河野里美の名前が無い。もしかして、受理されたという訳だろうか。私は周りを見渡す。やはり、紙は無い。
「ふ…ひひひひ。信憑性マックスじゃない……」
 私は目の前で起きた怪奇現象に恐怖するどころか、さらなる期待を膨らませていた。一度、本を閉じてみる。それから数分待って、本を開く。紙がなくなっている。
「やったぁ!!やっぱり!!……私の!憎しみは!本物だぁ!!!」
 正直、これらの人々は恨みが少ないのではないかと心配していた。恨んでいたものの、河野よりは間違いなく少ないのであった。だが、今の現象で、不安は掻き消え、歓喜が巻き起こる。
「こいつら全員死んだら私は幸せだ……」
 私は椅子にもたれかかり、上を向いて、笑い続けた。

* * * * * * * * * * * * * *

「さて、お化粧、お化粧」
 翌日、私は河野たちの死を心待ちにしつつ、学校へ行く準備をしていた。残念ながら、兄と母は死んでいない。だが、優先順位的に河野が先だと考えていた私は学校へ行ったら河野の姿がないのではないかと期待していた。
 洗面台に向かって立つ。化粧道具を取出し、始めようとしたときだった。少女が現れた。瞬きした瞬間、次に目に入ってきたのは、黒いコートを着た少女が私の首に鎌を掛けているという有り得ない光景であった。
 鎌の側面が顎に当たる。刃は首にあとわずかで触れるか、というところにあった。すぐに飛び退こうと思ったが、身体が動かない。声も出ない。
「おはよう………。ご機嫌、いかがかしら?」
 少女が鏡を通して、吸い込まれそうなまでの真っ黒な瞳で私の目を覗き込んでくる。見開かれたその眼は今にも私の首を吹っ飛ばしてしまいそうな恐ろしさがあった。
「良いのでしょうね……憎い人間がもうすぐ死ぬと思っているのでしょう?」
「でも、残念ね………。死ぬのはあなたよ……」
 何を言うんだ…この女はッ!!
 私はとんでもない形相で少女を睨んだ。どうやら、顔の筋肉は正常に動くみたいだ。鏡を見ているからわかる、本当に恐ろしい人間の顔だ。
「何か、言いたげね……良いわ。聞いてあげる」
 少女が言い終えると同時に、のどが詰まったような違和感が消える。身体は動かないが、少女の言葉通り、声が出るかもしれない。
「な、何で私が死ななくちゃならないのよ!?悪いのはあの女でしょ!?」
 案の定、声帯が正常に機能した。少女は冷淡な口調で答えた。
「河野里美のことね……知っているわ…けれど、彼氏に振られたのは、突き詰めればあなたの魅力が不足していたことに原因があるのではないのかしら?」
「この……糞女ッ!!!殺してやる!!殺してやるから今すぐ離せ!!」
 とんでもないことを口走る少女に私は吠えた。しかし、少女は一切表情を変えずになおも冷淡な声音で続ける。
「……無理よ。絶対に離さない。ふふ……それにしても、動けなくした人間を甚振いたぶるのは相変わらず気持ちがいいわね」
 少女は冷淡な、それこそ、こちらが凍りついてしまいそうな笑みを漏らした。言いながら、鎌をしきりに私に押し付ける。
「あなたの魂は救いようがない。人を呪い殺してしまおうだなんて本気で考え、行動するような人間は今後、生きていたって社会の害悪になるだけ。だから、掬ってあげるの。この世から。そして、落としてあげるの、地獄にネ」
 血の気が引いた。違う意味で、あの本は罠だったのだ。違うものに、私はハメられたのだ。すると、少女は突然に、声高らかに笑い出した。
「ふふ………あはははっはっはははは!!!良い表情するわね!!見ているこちらはとても気持ち良いわよ」
「く、くそ………くそぉぉぉぉ!!!!」
 ふざけんな、この糞女!!!私は視線で少女を射殺そうと努力した。しかし、彼女は全く気にしない様子で「さて……」と鎌を握り直す。
 くそ……嫌だ、死にたくない………。くそ、こうなったら。
「ご………めん……なさ」
「ん?何かしら?何か言い残したことがあるの?そろそろ仕事をしようと思うのだけれど」
「ごめんなさい!!」
 私の突然の謝罪に、少女は眉を顰めた。お……もしかしたら……。
「あの時は私………気がどうかしてて…それで…でも!もう大丈夫!正気に戻ったから!だから……」
「死にたくないと?」
「は、はい」
 私が頷くと、少女は肩をすくめコートから黒色の水晶のような玉を取り出した。
「仕方がないわね……じゃあ、最後の審判と行きましょう。あなたの魂が本当に正常なものか判断してあげる。そうね…心境も考慮して……二か月前の五月ね。その月の平均の悪行、善行の数を調べて判断してあげる。ゼロポイントからスタート。善行、悪行の内容を吟味してポイントを上げ下げしていくわ。マイナスなら不合格」
 なるほど…つまり、日ごろの行いを見るという訳か。しかし、二か月前、五月ならば、イケる。幸せの絶頂期だ。そんなに悪いこともしていなかろう。
「いいわよ」
「…………マイナス四百ポイント」
「え?」
「信号無視、胸裏での他人への悪口。妹への暴行。これらが点数を大いに下げ、見事マイナスよ。さようなら」
 ちょっと、待って……。そんな……馬鹿な……。私は目を見開き、その目で少女に訴える。嘘でしょ!?と。
「ちょっと待ってよ」
「往生際が悪いわね。そもそも、私にはあなたの心が読めるの。どういうことか分かるでしょ?」
 少女は私の顔に自身の顔を近づけて、耳元で囁くように言った。…つまり、私が命が惜しくて謝ったと分かっているということか…?私が反省していないのを知っているということか…?
「そういうこと。では、さようなら。おっと、最後に……私の名前は本庄神代ほんじょうかみよ。この世界の汚れた魂を地獄に落とすのが使命。そして、『呪いの黄色い本』の作者よ。因みに、この鎌で斬られると、首が飛ぶのではなくて、あなたの意識を飛ばすことが出来るの。そうしたら後は…そうね……いつも通り、通学途中に事故にでも遭ってもらうかしらね」
 私は迫り来る死の恐怖の中で悟った。先日事故で亡くなった一組の子……あの子も、きっと、誰かを呪い殺そうとしたんだ。それで、この少女に地獄にに送られたんだ。はぁ……もっと、良い子に生きていれば良かった。
「今度こそ、さようなら」
 少女は私の首に当てられていた鎌を引いた。
ふぅ。終わりです。ありがとうございました。
皆さんも、普段の行いには気を付けて。魂を汚さないように。

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