其の八:闇色の声は諦めず
――占い。
方法にも様々な種類があるが、どの陰陽師も使える訳ではない。使えたとしても方法によっては得意不得意がある。
基本的に盤を使う者、高度な陰陽師は呪力や妖力を扱うらしい。
和樹の場合、盤は苦手であり、ましてや今この場に盤を持ってきていないから使えない。陰陽師としては未熟でもあるので呪力や妖力を扱う程の力は持っていない。
そこでどうするかだが、和樹が得意とする占術が二つある。
一つは、自然から力を借りる。『天地来来』もその一つである。
……だが今は学校。 学校には庭や花瓶などに植物があり湿潤も自然環境には適してはいるが、建物の中にいる以上、外壁が邪魔をして外の力を貰いにくい。
だから、もう一つの方法を使う。
それは、『波長の一致』。
己の式神と妖力の波長を同調させ、お互いの力を使用可能にする。
今の和樹の場合、式神は雪女である冷禍のみ。よって冷禍と同調するということは先程の『天地来来』の氷の型である『冬蛍』を強化させ、冷禍の得意とする雪の技が使える。彼女と同調した場合は氷のエキスパートになるということだ。
また、普通の式神ならば同調すると主たる陰陽師の術も使えるが、式守家の式神は己を滅す技であるためなのか使えないという欠点がある。
「冷禍、波長を合わせてもいいよね?」
和樹のその言葉に、冷禍はやや顔をしかめた。
「花を探し出す為に、力を強化するんだろう?ならば、仕方無いことなのだがな……」
「どうかしたの?」
「あー……、その同調するといつも変な感じがするというか、なんというか……」
目をそらしたその頬はやや赤く染まっていた。
だが、和樹は首を傾げたまま、彼女に言った。
「よくわかんないけど……始めるよ?」
刹那、二人の周りを霊力が立ちこめ始めた。
「我、式守の名において、契約せし者に命ず。かの力、我が血肉とならんことを望まん」
ザワッと己の血が騒ぐのを感じる。
「あっ……」
和樹の近くで冷禍の身体がびくっと跳ねた。
「汝、雪女は今この時より我が同胞。我が眷属なり」
波長を一致させる為の呪文を言い終わる。
冷禍の力が流れこんでくると同時に、冷禍が何故か息を切らしているのが伝わってきた。
そして、
――クスクス。
笑い声。その無邪気な声はさっき頭に反響したそれだった。
和樹からしたら分かっていたことだった。いつも同調するたびに何かが身体でざわめくのを知っていたから。
とはいえ、それがさきの声だったとは今気付いたことだったのだが。
――モット、モット、力ガ欲シイヨネ。
「また……お前かっ……!」
和樹はうずくまっていた。声がする頭を押さえながら。
――モット、タクサンノ妖ト同調スレバ、イイヨ。
「うるさい、五月蝿い五月蝿いっ!!」
「かず、き……?」
――ソウスレバ、僕ハ君ト話ガシヤスクナルカラネ。
「お前なんか知らない!僕の中に入ってくるなっ!!」
「しっかりしろ、和樹っ!」
「……レイ……」
その一言は和樹とは思えない、重みのある声だった。
冷禍は初めて目の前の少年を和樹として認知できなかった。
「……え?」
「どうしたの、冷禍?」
一瞬、怯んだが、目の前の少年はいつもの和樹の表情で冷禍を見つめていた。
「い、いや、大丈夫なのか?さっき、頭を押さえてうずくまって、なにやら叫んでいたのだが……」
波長を一致させると言うことは相手の体力や精神面を読みとれてしまうことがある。それなのに、声を荒げていた和樹からは何も感じ取れなかった。
「僕が、何か、叫んでた?」
和樹は自分が何を言っていたのかも分からない様子で冷禍に聞き返した。
「……大丈夫そうなら、いい」
「じゃあ、花がどこにいるのか、調べようか」
目の前の少年は何事も無かったように言う。
きっと、気のせいだったんだ。自分は疲れているんだ。……そう、冷禍は思うことにした。
スミマセン、謎の声さんを引っ張りやがりました←
其の七を見直していたら、「あ、あの部分書いてないじゃん」となりましたので再び謎の声登場デス。
次こそはVS花が本格的に始動シマス。よろしくお願いシマス。
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