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野茨の血族  作者: 髙津 央
第一章.帝都
25/93

25.依頼☆

 大使が政晶(まさあき)に向き直って言った。

 「国王陛下と三つ首山羊(みつくびやぎ)の王女殿下も、あなた様とお会いできる事を、楽しみになさっていらっしゃいますよ」


 ……さっきからその、黒ヤギとか何とか、手紙読まんと食べてまいそうなそれは何やねん。


 「三つ首山羊の王女殿下は、あなた様の高祖母(こうそぼ)に当たるお方です。お(しるし)が【頭が三つある山羊】ですので、私共、臣下はそのようにお呼びしております」

 色々と察しのいい大使は、政晶が疑問を口に出す前に説明した。


 「食堂に絵があったでしょ。あれ、高祖母ちゃんの肖像なんだよ」

 宗教(むねのり)叔父さんこと黒山羊の王子殿下が付け加える。

 政晶は、まだ一度も食堂に入っていない為、肖像画とやらも目にしていない。


 「ここからが本題なのですが、(よろ)しいですか?」

 政晶は言葉に詰まった。

 父からは全く何の説明もなく、政晶も疑問を口に出せないまま、今日まで過ごして来た。


 ……宜しいもなんも……何言われるんやろ……? 


 大使は居住まいを正し、少し身を乗り出すようにして切りだした。

 「数年に一度、我が国を囲む山脈の主峰で、儀式が行われます。剣舞の奉納なのですが、残念ながら、本番の舞い手と二番手のお方に御不幸がありました。資格をお持ちの方で現在、実際に舞えそうな方が、あなた様だけなのです」

 そこまで言って言葉を切り、緑色の瞳で政晶の目を覗き込む。

 挿絵(By みてみん)


 政晶(まさあき)はイヤな予感がした。

 「もし、宜しければ、剣舞を奉納して戴きたいのですが……」


 ……いや、そんなん急に言われても……


 政晶が困惑して口をつぐんでいると、黒山羊の殿下が言った。

 「舞に使う剣が、王家の血を引く未婚の男の子にしか持てない仕様なんだよ。一応、僕にも資格はあるんだけど、重い真剣を持って一時間も踊れないから……」

 「一時間ッ?」

 政晶は別な意味で絶句した。

 実際の重量は不明だが、一時間も真剣を振り回し、踊り続ける事を想像して、目眩(めまい)がした。


 ……そら……体が弱いおっちゃんには、絶対無理や。死んでまうゎ。


 「三番手のお方は、まだ十歳ですので、体力的にちょっと……」

 全く断れない空気を感じ取り、政晶は力なく肩を落として(うなず)いた。


 途端に大使の顔が明るくなる。

 「お引き受け下さるのですね。ありがとうございます。練習の期間も含め一カ月程度、本国にご滞在戴きますが、(よろ)しゅうございますね?」


 急な話に困惑する政晶(まさあき)に、大使が畳みかける。

 「学業に(さわ)りがあるといけませんので、夏休み期間中、八月にお越し戴くと言うことで、(よろ)しゅうございますね」

 七月中に宿題を全て終わらせなければならない。

 政晶は、胃に鈍い痛みを感じながらも、頷かざるを得なかった。


 ……赤穂君に手伝(てつど)うてもろたら、何とかなるん……かな? 


 「特にご用意戴く物はございません。身ひとつでお越し下さい。では、時差がございますので、八月一日の深夜、お迎えに上がります」

 「僕とクロと双羽さんも一緒だから、心配しなくていいよ」

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地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』

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野茨の環シリーズ 設定資料
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