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春が過ぎた。なんだかんだ言っても時間は流れるねぇ……。
なんて悲しいのだ。……なんつって。どーも、毎度おなじみの小谷芳でーす。うわぁテンション低ーい。なんでこんなにもテンションが低いのか。簡単だ。ついこの間、俺の好きな人に彼氏がいるとわかったからであーる。とてもつらいのであーる。この話し方うざいのであーる。もうやめるのであーる。
「ハル、何で机にうつ伏してんだよ」
おー和人かー。御機嫌よう〜。ペンギン星人にこんにちは。
「……何言ってんだよ。なぁ、明日の球技大会、俺たちバレーじゃんか。作戦考えようよ」
そうかーそうだったねーあったねーそんなものー……。
球技大会? 明日だったっけ!?
「今更なんだよ。相変わらずだなー」
忘れてたよそんなもの。くそー、悲しい事実もそれくらい簡単に忘れる事ができれば、超楽なのに。
「……頑張ろうよ、落ち込まないで」
そうだね〜……。いや待てよ。今まさに超すごい閃きが……。
「何?」
俺は机をバンと叩いて立ち上がった。「フフフ」と目を閉じながら口の端を上に持ち上げる。
一斉に視線が集まる。あ、しまった。
「何でもないっスヨ、あはは!」
その声とともに皆の視線がもとあった場所へと戻ってゆく。……みんな慣れちゃったのね。そりゃそうか。昔同じクラスだった奴いるし、もう新しいクラスになって二か月……。そりゃ慣れるか〜。
「何か思いついたの?」
聞いて驚くな……。
「あんまり期待してないけどね」
うるせー! とりあえず聞いとけー!
「はいはい。で、何?」
フフフ、聞いて驚くな。明日の球技大会……優勝するぞぉ!
一気に周りの視線が集まった。
「何、急に燃えてるわけ?」
いいか? 毎年、我が校はイベント、つまりおもしろい行事が行われる度にカップルができているのだ……。しかもそのカップルの男の方はたいてい優勝したチームの一員なんだ……。
「それで、優勝して少しでもモテようってこと?」
そうだ、仲良くなるチャンスじゃあないですか。
「上手くいくかなぁ……。キツイと思うが」
大丈夫さ。きっと勝てる!
「だって僕らのクラス、バレー部いないんだよ?」
それでも勝てる! 気合いだぁあっ!
和人がため息をついた。
なんだよ、勝てるって言ってるだろう?
「……まぁ、やるだけやりますか」
よぉし、全員集合! あ、俺等のチームだよん。
まずはな……。
放課後の一部始終でした。
翌日。
見事に晴れた。快晴だ! 球技大会だっ! ……うちの体育館、狭いからグランドでバレーやるんだよね。
校長あいさつ。いやいや、めんどくせーよ。そのシーンカットしろよ。
「神様がどうやら我々に微笑んでくれたようですね。見事に晴れました」
何言ってんだよ。神様どうでもいいよ。早く始めろよ。校長は自分の頭を髪様にでも頼んでもう少し頭の光沢減らせよ。眩しいんだよ。
と、言うわけで始まった球技大会。じゃんけんで負けてしまい、相手からのサーブだ。
なんのなんの、返せば良いんだ。返せば。
相手チームの人がサーブを下から打った。
馬鹿め、そんな緩々サーブ、アリんこでも返せらぁ!
そっちいったぞ……!
バコッ。
えーと、ですね。今何が起こったか、わからなかったんだよね。もー1回見てみたい。まさかとは思うんだけどね。
……レシーブミスしやがった。
アハハ、どんまいどんまい、次返そうぜ!
相手チームのサーブ。
バコっ。
アハ、どんまいどんまい……!
よし、今度は和人の方へいったぞ。上にあがった! 今だ! 俺様奇跡の大ジャーンプッ!
ゲシッ。
勢い余ってネットに衝突、そのまま跳ね返って転倒。
ボールは虚しく俺の上に落ちてきた。
*
戦績。
一回戦敗退。
「……貧しさに負けた」
「いやいや、相手チームに負けたのだよ」
和人、俺もう無理だわ。泣く、泣くぞ。
「おいおい、気にするなって。とりあえずハルのせいじゃないから」
……負けた。もうダメだ、鬱だ、死ぬ、死ぬぞ俺は。
「聞けよ」
ペンギン星人こんにちは。
「意味分からん」
とりあえず、俺、木星まで行ってくる。
「どこまで行く気だよ」
今、俺たちは、自分達の教室にいる。昼飯を食べにやって来たのだ。虚しく敗退した弱弱チームのみが教室で、母の真心弁当を食べている。虚しくだ、虚しく。
「畜生、なんだよ。ネットに引っかかって転倒して保健室運ばれるって、なんだよ。超カッコ悪っ!」
「気にするなって。よくあるよ」
ねぇよ!
「まぁいいじゃんか。応援しに行こうよ。女子が決勝トーナメント出場だって」
マジで!?
「ウン。飯食ったら行こうよ」
行きますとも。
「緒環さんもそのチームにいるって」
ほぇー。 (因みに、クラス内でもグループ分けをしている)
*
女子たちの試合はかなりの接戦だった。24対25。 (因みに俺らのバレーは時間制なのだ)
あと30秒だ。おぉ、負けているのはこっちですか! 頑張れぇ〜。
相手のサーブ。美里がレシーブをとった。あ、緒環さんの方へボールが……。
あれ……?
ボールが緒環さんの頭に直撃した。まぁ、緩い山なりのボールがぶつかっただけだから、痛くは無いだろうが……。
緒環さん、ボーっとしてた?
相手コートが盛り上がった。はしゃいでみんなで手を叩きあっている。
こっちのコートが一気に沈む。
まずいな、この空気。
「どんまいどんまい! まだ時間あるよ! 頑張れぇ!」
よし、こんなものでいいかな?
女子たちが我に返ったように声を出し始めた。
よし、何とかなった。
*
女子たちの戦績。
決勝トーナメント出場。
25対27。
グランドの隅、手洗い場の横。緒環さんがしゃがみ込んで、1人で俯いていた。
なんて声をかけようか……。
ここまできたのは良いものの、なんて言えばいいか分からない。同情をかけるような言葉はダメだよな。ならば……。
あ、緒環さんこんなとこに居たの? むむ、どうしたぁ、元気ないじゃいですか。もしかしてあの時のアレ気にしてるの? あはは、気にするなよ! 俺なんか、1回戦敗退で、しかもネットにぶつかって引っ掛かって転んで保健室行きだぜ? だから、気にするなよ!
なんてのはどうだろうかな? ダメだ。なんか俺がダメだ。やべ、鬱になってきた。
「芳君?」
どわぁ! 緒環さんじゃないですか! 奇遇だねぇ。
……やべ、聞かれたか? さっきの独り言……。
「むむ、どうしたぁ、元気ないじゃいですか。もしかしてあの時のアレ気にしてるの? あはは、気にするなよ! 俺なんか、1回戦敗退で、しかもネットにぶつかって引っ掛かって転んで保健室行きだぜ? だから、気にしゅるなよ!」
言っちまったよ。しかも噛んだよ。
「あぁ、ウン」
緒環さんが目を反らし、無理矢理作った感のある笑顔を俺に向けた。
……仕方ないなぁ。
BOOK ON HAPPY CANDY
俺は半ば強引に緒環さんの口にアメダマを押し込んだ。
「元気だしなよ。気にしたってしょうがないよ。頑張れ」
彼女は震えた声で、「ウン」とだけ言った。
……可愛い、じゃなくて、やっぱり元気ないなぁ。
「ところで何味? このアメ、味がランダムなんだよね」
「……何の味もしないよ」
え?
一瞬耳を疑う。待て待て、そんなことあり得ないよ。必ず味はある。俺の注ぎこんだ幸せの分、その人が幸せになる味がつくハズなんだ。
「そんなバカな、あるはずだよ」
「無いよ。しかももう溶けちゃった」
何ぃ!?
俺は今、かなりの幸せを注ぎこんだんだ! 味がないわけない!
「……バカな。ありえな……」
「もう良いよ」
その少女は朗らかに笑った。
「元気、出た。ありがとう」
そう言って、少女は俺の前から走り去った。
BOOKの力が、消された?
俺の中で、何かが大きく波紋した。
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