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  日常賛歌 作者:しろくろ
第二十一話 脅すと迫るでなんと読む
 こんにちは、遥人でした。なんで過去形なのかって?それはね、とっても沈んでるからさ。

 え?理由になってない?それはほら、なんつーか空気で察してくれ。いや察してください。頼むから。

 「どうしたんですか、なんだか元気ないですよー」

 いつもは何が楽しいのか笑顔を浮かべている真央さんだが、今はついさっき目が覚めたらしく、眠そうに目をこすっている。

 パジャマ姿で寝癖で髪が跳ねている真央さん。うん、癒されるなぁ。

 どうも最近頻繁に真央さんを抱きしめたくなるのは、彼女が可愛いすぎるせいか、俺が変態なのか。

 前者に違いないな。こうやって俺のことを心配してくれるとこなんか、本当に可愛い。

「ちょっと嫌なことがあってさ、不安でしょうがないんだよね」

 俺が本音を吐露すると、眠そうな顔が心配そうな顔に変わった。

「不安があるなら話してください。なにかしてあげられるかもしれません」

 なんて健気なんだろう。最初にここに来た時はちょっと後戻りできないくらいひねくれていたのに。

 そうやって心配しけくれるだけで十分だよ。疲弊した心が癒されていく。

 ふと真央さんの変化を実感した俺はなんだか嬉しくて、少し頼ってみたくなった。

「いやさ、実はね……」



「氷名御さん氷名御さん!ちょっと、聞こえないフリして帰ろうとしないでくださいよ!」

 いつもの放課後、遭遇してしまったのは、『脅迫王女』本宮日和。最近、一部の人の間では通り名が変わり魔女から王女に昇格?した様だ。

「どうでもいいけど、また回想シーンでの登場なんだな」

「放っておいてください!いえ、それより氷名御さん、これを見てください」

 相変わらず強引でまさに王女様と言えなくもないな。ん?なんだこれ、写真……写真……写真!?

「なななななな!?」

「『な』がどうしたんですか。私は写真の感想を聞きたいんですよ」

「ななな何でそんな写真を持ってんだあんたは!?」

 写っている人。俺、紫音さん。日時、昨日。相合傘、腕組み。

「いえ、昨日の放課後『偶然』氷名御さんを見つけて『偶然』女の人と帰るのを目撃したので、『偶然』同じ道を通って帰った私は『偶然』持っていたデジカメで写真に収めたわけですよ。さて、この中に一つだけ嘘の偶然があります。どれでしょう?」

「全部狙ってやったんだろぉがああああ!!」

 よりにもよって一番厄介な奴に見られてしまった。いかん、なんとか言い訳をしなければ。

「これには深い訳があってさー」

「氷名御さん、胸が当たったくらいてはしゃぎすぎですよ。不純ですよ変態ですよ」

 逃げ場なしかよおおおお!てか違う。俺ははしゃいでたんじゃなくてんぱってただけだ!!

「勘違いだ。俺はなにも」

「まぁ、氷名御さんがおっきいの好きなのは置いといて」

「せめて弁解させろよ!しかも俺に変な設定を加えるな!」

 ダメだ。一度この女のペースに嵌まったらもう逃れられない。

「しかし氷名御さん。この写真、みんなに見られたらよろしくないですよね?」

 来たな、お得意の脅迫術。しかしなんで俺はそんな人として終わってる特技を持った奴と会話しているんだろうか?

「はい、今なにか失礼なこと考えましたね。そうですかそうですか、そういう態度をとりますか」

 ならばこっちにも考えがあります。そう言われたところで、俺は慌てて彼女の口を塞いだ。

「待て、話せば解る。とりあえず今回は何が望みだ?」

 『今回は』と言えるあたりこの展開に慣れてしまっている自分に嫌気がさす。

「何だ、わかってるじゃないですか。では、とりあえず……」




「それで今日、その本宮さんの家に来るようにと言われたわけですね」

 俺は頷いて溜め息を漏らす。何だか回想してて疲れてしまった。

「で、行くんですか?この後、本宮さんの家に」

「行くよ。すっぽかしたら後が恐いからね」

 ここで真央さんは何かじっくり考え始めた。そして、一つの答えを出した。

「よし、行きましょう」

「は?行きましょうって、どこに?」

「ですから、その本宮さんの家ですよ」

 どうやらこの子もついてくるつもりらしい。妙に意思は固そうなので、止めても無駄なんだろう。

「大丈夫ですよ。私がしっかり遥人さんを守りますから」

 年下の女の子にそんなこと言われた俺はちょっとショックで大丈夫じゃありません。

 しかし、相手は応接室の魔女兼脅迫王女の本宮日和。万が一変な影響を受けぬ様、俺が真央さんを守らなくては。

 それぞれの決意のもと、二人は本宮邸に向かうのであった―――。



 ピーンポーン。

 チャイムと同時にドアは開いた。隣で真央さんがごくっ、と息を飲んだのがわかる。

「いらっしゃい。待ってましたよ、氷名御さ……アレ?」

 真央さんをみて一瞬動きが止まる日和。今しかないな。

「あのな、この子は親戚の親の息子の弟子の義妹の五番目の妻の三人目の夫との間に生まれた遠い知り合いで」

「長っ!てかどれだけドロドロした家庭環境ですかそれ!特に妻!」

「とにかく、今家に遊びに来てるんだけど一人にさせるわけにいかないからつれてきたんだ」

 うん、我ながら冴えてるな。これなら本宮の奴も気づくまい、フフフッ。

「あ、もしかしてこの子が例の双子の……妹さん、かな?」

「待てぇぇぇい!あんたいったいどこまで知ってんだよ!この前はまだ何も知らないってようなこと言ってたじゃん!」

 それを調べない代わりに花屋に同行してやったはずだぞ!

「この前はこの前。今は今です」

「それ『お前の物は俺の物』と同じくらい傲慢な言い分だぞ!?」

「まあまあ、細かいこと気にしてちゃ大きくなれませんよ♪」

「細かくねぇぇぇぇ!!」

 またいつの間にか彼女のペースになっていた。本当に、こいつには敵わない。

 真央さんも最初の威勢は何処へやら、いざ対面すると黙りこんで俯いてしまった。

 結構人見知りなのか?いや、おそらくこの女がかなりヤバい存在だと直感的に感じとったんだろう。

「さて、中に入りましょう。いろいろ、聞きたいこともあることだし」

「……これ以上何を知ろうってんだよいったい……」

 俺は半ば呆れ諦めながら、硬直した真央さんの手を引いて中に入った。




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