カラフルデイズ(12/17)縦書き表示RDF


カラフルデイズ
作:yuma.



桜色スマイル


 ◆

 四月の始め。春休みが明け、新学期が始まった。僕の高校生活最後の一年間のスタートだ。

 不安と期待を抱いていたクラス替えも行われたのだが、幸か不幸か二年の時とさほど変わらない顔ぶれ。強いて挙げるとするならば、友絵が同じクラスになったということくらいか。

 三年C組。担任はまたしても塚田先生。これで見事に三年連続の同じアルファベット、そして同じ担任だ。

 塚田先生は良い先生なので、別段不満は無いし。

 そんな新学期も数日が過ぎ、落ち着きと、いつもの騒がしさが戻ってきた学園内。

 廊下をダラダラ歩いて、部室に向かおうとしていた僕は塚田先生に呼び止められる。

 「桐山、ちょっといいか」

 あれ。

 何かやらかしたかな、僕。

 少なくとも身に覚えは何一つないのだけれど。

 「何ですか?」

 塚田先生は僕の目の前に一枚の紙を突き出す。

 それは昨日提出した進路希望調査表。

 「これが何か?」

 「これは真鳥の調査表なんだがな。見てみろ、第一希望から第三希望までを」

 言われて、僕は目を走らせる。

 氏名、真鳥陽。

 第一希望、アキトのお嫁さん。

 第二希望、アキトのお嫁さん。

 第三希望、アキトのお嫁さん。

 背筋が色々な意味で寒くなる言葉が羅列していた。

 「え…何ですか、この痛々しい将来の展望は」

 「微笑ましいと言えばそれまでだが、凄い勇気だとも俺は思う。よく提出に踏み切ったもんだな」

 感心した様子で話さないでください!

 「前々からそうだったが、最近の真鳥は特に楽しそうだ。まず間違いなくお前の影響だろうな。進展でもあったのか?」

 そのエロオヤジのような顔はやめていただきたい。

 「その辺はプライベートなことなんで」

 「否定しないということは、そういうことか。成程」

 撃沈。

 失敗したなぁ、もう。

 ちなみに、僕らの関係は何一つ変わっていない。僕が気持ちを打ち明けて、陽はそれからバラ色のテンションになったが、それだけだ。字面だけ見れば「友達」からランクアップはしたものの、今までだって陽は過剰かつ異常なスキンシップをとっていた。あれ以上進展のしようもないだろう。

 「良かったじゃないか。真鳥の成績も上がってきてるしな。お前は将来進学だったよな?」

 「そのつもりですけど」

 できれば、あの先輩方二人と一緒の大学に。今のままでいけば順調に進学できるだろう。

 「そうか。なら真鳥も上手く誘導してやってくれ。お前が行くと言えば、喜んで行くだろう」

 お嫁さん問題は完全にスルーですな。

 当然だけど。

 「でも、いくら上がってきているとは言え、アイツの学力で大丈夫ですか?」

 「ああ、その点は問題ないな。真鳥の場合、このまま無事に卒業できればどうにでもなるだろう」

 どうにでもなる?

 それってどういうこと?

 「入試という関門があるのですが」

 「入試?そんなの『真鳥家』のブランドがぶら下がってれば、顔パスで入れるさ。あの家を甘く見ちゃいかんぞ」

 知っているような口ぶりで話しますね、塚田先生。

 「…そうですか。大人の世界って色々あるんですね」

 「うむ。お前は知らなくていいことだ」

 含みありげに塚田先生が苦笑する。

 「それじゃ、よろしく頼むぞ桐山」

 「了解しました」

 軽く一礼して、僕はその場を後にした。


 ◆

 部室棟へ向かう通路を歩いていると、鮮やかに咲き誇った桜が目に入った。

 誘われるようにして、桜が植えられた一帯へ足を運ぶ。上履きだけど気にしない。

 ポカポカと暖かい春の陽気。満開で微笑む桜は、まさにその人生を謳歌しているのだろう。桜の花だけにね。

 視線を奥にスライドさせると、木の下で佇む一人の人影。

 「おーい、ヒナ」

 「あ、アキト!!」

 僕の姿を見つけた途端、嬉しそうにはしゃぎだす。尻尾があったら今はフルスイング状態だろう。

 見た目は猫っぽいけど、こういう所は犬だな。

 「桜はキレイだねぇ。まさに日本人の心!!私、日本人で良かったと思うよ」

 「そうだな。外人の方々には、この気持ちは分かるまいよ」

 日本人くらいだろうね、ここまで桜に思い入れがあるのは。

 僕もしばし見とれていたのだが、先ほどの塚田先生とのやりとりを思い出す。

 「なぁヒナ。あの進路希望、本気なのか?」

 「ふぇ?見たのっ!?…まぁ別にいいけど…塚っちも、割と軽い所があるからなぁ…本気だけど、悪い?」

 「悪いも何も、お前は卒業したらすぐ家庭に入るつもりか。そんなんで大丈夫かよ」

 陽は何故か幸せそうに顔を崩す。

 は?

 「えへへ…今までのアキトだったら、すぐに否定してる所だよ?いつお前と結婚するなんて言った!?とか騒いでさ」

 うぐ。

 「今のは随分とリアルな意見だったねぇ♪少なからず私の心配もしてくれてたでしょ?でしょ?」

 ニヤケっぱなしの面で擦り寄ってくる陽。

 あぁ、鬱陶しい。

 確かに失言だったな、今の。

 「などと冗談は置いといて」

 「あれ!?」

 「お前さ、進学はしないのか?」

 「進学?メンドい」

 アッサリと否定。

 バッサリと切り捨てた。

 「ちなみに僕は進学希望なんだが」

 「じゃあ私も進学する!!」

 マッハの速度で食いついてきた。

 その間は一秒も無かっただろう。

 架空の尻尾がユラユラと揺れている。

 「お嫁さんはどうなった」

 「え、何?アキトはそんなに私をお嫁さんに欲しいの?て言うか私が欲しいの!?や〜ん♪」

 そんなカオスな発言はしていないぞ。

 「違うっつーの。もし進路を変えるなら、ちゃんと塚田先生に言って訂正しろよ」

 「訂正はしないよっ!私は両方選ぶ!!」

 欲張るな。そして意地も張るな。

 身の破滅を招くぞ。

 「学生婚!学生婚!!」

 「やかましい!」

 コイツのテンションの源は何なのだろう。

 時々羨ましいと思うことがある。嘘だけど。

 「じゃあ、お前も進学希望でいいんだな?」

 「ちっちっち。『アキトと一緒の大学』進学希望」

 余計な所で細かいな。

 「ま。そのためには頑張って卒業しないとな。真面目に授業に取り組めよ」

 少し意地悪な笑みを浮かべてみる。

 それに対する陽の反応は、意外なものだった。

 「うんっ!やったろうじゃないの!!」



 暖かい陽気が紡ぐ春の一日。

 満開に咲き誇る桜。

 その下で咲き誇ったのは陽の微笑み。

 どびっきり純真で。

 とびっきり無垢で。

 とびっきり魅力的な、桜色の微笑みだった。



思い切って二人をくっ付けてみたはいいものの、物語のテンポに支障が出ないか、激しく不安です。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう