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エピローグ
 タルブ村の攻防戦から1週間後、トリステイン王国首都のトリスタニアは街全体が朝からお祝いムードに包まれていた。平民、貴族問わず市民たちは通りに繰り出している。

 戦いの戦後処理が一段落した今日、現地へ自ら赴き陣頭指揮を執っていたアンリエッタ王女が、正式に亡命政権の立ち上げを宣言するアルビオン王国のウェールズ皇太子と共に凱旋するのだ。市民たちはその車列を一目見ようと、朝早くから通りに出ていたのだ。

 いよいよ2人を乗せた馬車の車列が大通りを通り過ぎる時になると、市民たちはこぞって馬車に向かって叫んだ。

「トリステイン王国万歳!!アンリエッタ王女万歳!!アルビオン王国万歳!!ウェールズ殿下万歳!!」

 そして、その車列が街を抜け、城の門に差し掛かる。門の周りも詰め掛けた群衆で埋まっていた。その上を爆音を響かせ、紙吹雪を撒きながら、才人たちの操るゼロ戦が、綺麗なV字型の3機編隊で通過する。

 今やハルケギニア中の伝説となっている鉄の竜の姿に、市民たちは酔いしれた。

 アンリエッタの凱旋に華を添えるように、風防を開け才人らは紙吹雪を巻き、市民たちの熱狂をより盛り上げた。

 アンリエッタ王女らの馬車列が城に入ったのを見届けると、3機はそのまま城内の庭に着陸した。城内の衛士たちはそれを苦々しく見ていたが、王室から直接指示されたことなので黙認する。

 今回3人が直接城に迎えられた理由は、もちろん王室自ら彼らに対して戦いの労を労う意味もあったが、ただお褒めの言葉を下賜するためだけではなかった。

 アンリエッタの強い希望により、この度の戦いから平民出身者に対しても貴族の証しであるシュバリエの称号が送られることとなったのだ。

 今回その称号が送られるのは、残敵掃討戦で敵司令官を捕縛した銃士隊隊長のアニエス。そして3匹の鉄の竜を操った才人ら3人だ。また、今回アルビオン艦隊に大打撃を与えた新兵器であるロケット弾を開発したコルベールと才吉、さらに虚無の魔法を発動させ戦いを終結へと導いたルイズらには、情報秘匿の観点から公式には何も与えられなかったが、後日秘密裏に恩賞が与えられる事となった。

 平民に対する貴族称号の付与は、内外から激しく非難されたが、ウェールズ皇太子の応援もあり、アンリエッタは渋る重臣らを説き伏せて認めさせた。

 このニュースは、国民の9割を占める平民たちに大きな希望を与える事となり、後々トリステインの歴史に大きな影響を及ぼす事となる。

 そしてこの勲功授与の翌日には、アンリエッタ王女が王位に付く事が決定し、トリステインは再び熱狂の渦に包まれる事となる。

 しかし、これで全てがハッピーエンドで終わったわけではない。亡命政権を立ち上げたウェールズ皇太子にとってはこれからが正念場であった。レコン・キスタから国を取り戻す戦いは始まったばかりである。

 また、アンリエッタ女王にしてもその戦いを正式に支援するトリステインの舵取りをしっかりしなければいけない。2人の前途は多難だった。

 一方、戦いを終え、シュバリエの称号を頂いた才人は、凱旋する形でトリステイン魔法学院に帰還した。

 オスマン校長にコルベールと言った学院教師たち、食堂のマルトー料理長を始めとする平民の職員たち、そしてギーシュら学院の生徒たちが帰還した彼らを出迎えた。そして夕食はお祝いのパーティーとなった。

 その席上彼の貴族入りを素直に受け入れる者、皮肉する者、卑下する者。皆それぞれ様々な対応をした。しかし、才人からしてみればどうでも良かった。彼にとって平民とか貴族とかで人を分けるなどバカらしかったからだ。

 パーティーも終わったその日の夜、才人は1人静かに中庭でワインを飲んでいた。才助ら大人連中はオスマンやコルベールらと祝宴を楽しんでいるはずである。そんな中、彼は1人空に浮かぶ2つの月を見つめていた。

「何やってるの?」

 そんな彼に、声を掛ける人物がいた。ルイズである。才人は彼女の方を一瞥するとぞんざいに答えた。

「別に。ただ月を見ながらワインを飲んでいただけ。」

「そう。」

 才人の無遠慮な言葉に別に怒るわけでもなく、ただそう言うとルイズは才人の隣に座った。

「お前も飲む?グラスはもう1つ貰ってきてるから。」

 ルイズがいつもと違うような気がすると思いながら、才人は彼女にワインを勧めた。

「いただくわ。」

 才人はグラスにワインを注ぎ、彼女に渡した。

「ありがとう。」

 2人は並んで月を愛でながら、ワインを飲む。

「それにしても、才人がシュバリエの称号を貰っちゃうなんて夢にも思わなかったわ。」

「なんだよ、俺に対する愚痴を言いに来たのか?」

「まさか、祝いに来たのよ。まあ悔しい気もしないことはないけど、おめでとう才人。もうこれで犬なんて呼べないわね。」

 その言葉に才人は笑った。

「俺は別世界の人間だぜ。確かに姫様直々に貴族の称号を貰って嬉しくない事は無いけど、あんまり関係ないよ。遠慮なんかする必要はないぜ、まあさすがに犬呼ばわりは勘弁してほしいけど、俺は今までどおり、これからもルイズの使い魔だぜ。」

 その言葉に、ルイズはワインで少し赤くなっていた頬をさらに赤らめた。

「そう・・・ありがとう。」

「ああ。だったら、乾杯しようぜ。2人のこれからを祈って。」

 才人は空になった自分のグラスと、ルイズのグラスにワインを注ぎなおした。2人はグラスを持つ手を近づけた。

「ルイズ、これからもよろしくな。」

「才人こそ。これからもしっかり守ってよね。」

「ああ。」

「じゃあ。」

「「乾杯」」

 2人はクラスを併せ、乾杯しワインを飲んだ。その瞬間、何ともいえない満足感が、2人の心に湧きあがっていた。

ハルケギニア特有の2つの月は、そんな2人の前途を光照らすように、輝いていた。
 ついに完結です。お付き合いありがとうございました。一応この後第2弾にも続く予定なので、連載開始後はまたよろしくお願いします。
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