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タルブ空中戦
 タルブ村に侵攻したアルビオン軍。その先陣を切る竜騎士団の隊長は、接近してくる影を見て予想以上に早い迎撃に驚きつつも、微笑んだ。

「たった3匹の竜で何が出来る。」

 この時アルビオン軍艦隊に付き従う火竜は約30。敵戦力の10倍である。負けるはずが無かった。それは隊員、さらにはその戦いを見ていた後方の艦隊の乗員たちも同じであった。

 ところが、彼らの敵への侮りは数十倍のお返しとなってやってきた。

 才人たちは3機それぞれがバラバラになって敵に接近した。相手の火竜も3つのグループに分かれて迎え撃とうと動いた。しかし、速度差がありすぎた。何せ火竜のスピードはどんなにがんばっても時速にして150km。それに対し、チューンしてあるゼロ戦はいずれも最高速度は600km前後のスピードを発揮できた。

 ようやく動き始めたアルビオン軍の竜に対して、その時には才人は火竜の1匹を照準機のど真ん中に捉えていた。彼から見れば、竜の動きはあまりにも緩慢だった。

「いただき!!」

 才人は機銃の発射レバーを引く。

 ダダダ・・・

 機首に装備された7,7mm機銃が発射される。才人は相手が剥き出しの人間と生き物の竜であることから、弾の節約のために、主翼の20mmは使わず、7,7mm機銃だけを発射した。

 銃弾は狙いたがわずその火竜に命中し、さらに乗り手である竜騎兵にも命中した。竜騎兵は一応甲冑をつけていたが、その程度の防御では到底機関銃の弾を止める事は出来ない。

 撃たれた兵士は、一発で致命傷を負い竜から振り落とされた。

「撃墜1だ。悪く思うなよ、これは戦争なんだ。」

 相手が見える分、撃ち落としても後味は良くない。しかし、少しでも心の迷いを作ったらそれは自分自身の命を危うくする。才人にはそれがよく分かっていた。

 彼は心を鬼にして戦う。

 才人が1匹目を撃ち落したのと同じ頃、才助と清水一尉のゼロ戦も1匹ずつ落としていた。

 この一撃で、残りの竜騎兵は一気に浮き足立った。中にはゼロ戦のエンジン音と機銃の発射音に竜が怯えてしまい戦闘さえままならぬ者まで出る始末だった。

 こうして5匹が戦わずして脱落してしまった。残る火竜は22匹。

 才人は一端上昇すると、今度は真上からの一撃離脱攻撃を試みた。こうなると、動きの遅い火竜などただの的である。

 才人は再び機銃を発射し、立て続けに2匹を撃墜した。さらに、他の2機も合わせて3匹を撃ち落した。

「こりゃあまるで訓練飛行だ!」

 現役戦闘機パイロットの才助にそう言わしめるほど、戦闘の展開は一方的だった。もちろん、竜騎兵たちも反撃を試みはした。なんとか接近してブレスや魔法による攻撃を試みた。だが、それは徒労に終わった。

 追いかけようとしても引き離され、逆に旋回してきたゼロ戦に撃たれて落とされてしまう。正面から攻撃をかけようとしても、火竜のブレスが50m届くかどうかなのにたいし、ゼロ戦の機銃は150mから100mでも有効弾を打ち込めた。

 さらに、火竜は一度交戦状態に入るとバラバラに戦うしかなく、お互いの意思疎通は難しい。逆にゼロ戦は無線で連絡を取り合って連携プレーを取る事が可能だった。

 はっきり言って、アルビオン軍の竜騎兵たちに勝てる要素は全くなかったのである。

 こうして、ハルケギニアでその名を轟かせてきたアルビオン竜騎兵はわずか5分の戦闘で撃ち落されるか、戦闘不能状態に陥り全滅した。

 その様子を見ていたルイズとデルフは歓喜した。

「すごいじゃないの、ハルケギニア随一の腕を持つアルビオンの竜騎兵団を全滅させるなんて。」

「相棒、さすがだな。」

 それに対して、才人は特に誇るわけでもなくただ一言言った。

「ゼロ戦の性能が良すぎるのさ!」

 一方、この戦闘の一部始終を見ていたアルビオン艦隊の乗員たちは呆然としていた。世界最強と自負するアルビオンの竜騎兵が10分の1の敵に一矢も報いられぬまま全滅したのである。

(トリステインの軍隊は化け物の竜を持っているのか?)

 そのような恐怖心が艦隊の乗員全てに広がっていく。

 しかし、直ぐに「レキシントン」座乗の侵攻軍司令官であるジョンストンは命令した。

「竜騎兵は全滅したが艦隊は無事だ!!3匹の竜など恐れるに足りず。前進せよ!!橋頭堡さえ築けばどうにでもなる!!」

 彼の叱咤激励に答えるかのように、艦隊は動き始めた。

「それにしても、あの忌々しい竜は一体何なんだ?」

 彼の疑問に答えられる者は誰もいなかった。

 才人たちは集合すると、敵艦隊への攻撃準備に入る。

「いいか、横からではまぐれでも大砲の弾に当たる可能性がある。真上、もしくは真下からロケット弾を撃ちこむんだ!!」

「「了解!!」」

 才人たちが艦隊攻撃に入ろうとした時である。デルフが叫んだ。

「相棒、右だ!!」

 才人は慌てて機体を捻った。その後ろを、高速で移動する物体が飛んでいった。

「何だありゃ?」

 その言葉には、ルイズが答えた。

「風竜よ。武器は持ってないけど火竜より早いわ!!注意して!!」

 その風竜は距離を少し離すと切り返してきた。そして、乗っている騎士が魔法攻撃を仕掛けてきた。

才人は機体を横滑りさせて攻撃を交わす。

「やるじゃねえか!!」

 才人は機銃で攻撃するために、その風竜の後ろに付こうとする。しかし、敵も手強く中々隙を見せない。

 と、そこでルイズ相手の騎士を見て呟くように言った。

「ワルド!?」

「何?」

「こないだ言ってた私の元婚約者よ。アルビオンに逃亡していたとは聞いたけど、まさかトリステインに攻めてくるなんて!?」

 その間にも、ワルドの風竜は才人のゼロ戦の背後に回ろうとする。

「くそ!?」

 才人はなんとか振り切ろうとするが、相手は竜を自在に操り、さらにはこちらの動きを牽制するための魔法攻撃を行ってくる。

 振り切りようがない。

「才人!後ろに付かれてるわよ!振り切って!!」

 ルイズが叫ぶが、才人もどうしようもない。

「そうしたいのはやまやまだけど、だめだ!振り切れねえ!!」

 と、その時である。無線連絡が入る。

「才人、左に旋回しろ!」

 才助の声だ。才人は指示に従い、操縦桿を左に倒した。もちろん、ワルドも追おうとするが、それは出来なかった。何時の間にか後ろに回った2機のゼロ戦の集中射撃を浴びたからである。

 12挺の機銃から発射される銃弾のシャワーをまともに喰らった彼の風竜は、瞬殺され、大地目掛け落ちていった。

「才人、大丈夫か?」

「ああ、何とか。父さんに清水さん、助かったよ。」

「礼なら戦いが終わってから言ってくれ。さ、邪魔者は片付いた。改めて敵艦隊を攻撃する。」

「了解!」

 才人は高度を再び上げ、敵艦隊へと向かった。
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