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ファーストコンタクト
 その日ハルケギニアにある小王国、トリステイン王国にあるトリステイン魔法学院の庭では、2年生の生徒が進級に関わる重要な儀式を行っていた。

『サモン・サーヴァント』と呼ばれる自分のパートナーとなる使い魔を呼び出す儀式だ。主に呼び出されるのはカエルやフクロウ、モグラに竜、火トカゲのサラマンダー等だ。

 この世界では魔法が存在し、その魔法は主に火、水、風、土といった4系統に属性がわかれる。この属性に合わせるように使い魔が決まることが多い。もちろんそれだけではなく、魔法を使う『メイジ』のレベルも大きく影響する。

 この儀式で『使い魔』を呼び出せなければそれは退学を意味する。また呼び出した使い魔が珍しいものであれば、自身の名声を上げるのに一役買うこととなる。

 教官であるコルベールの前で生徒たちは次々と使い魔を召喚し、そして主と使い魔の契約を結ぶ『コントラクト・サーヴァント』を行っていった。

 そしてついに最後の1人となった。コルベールは彼女の名前を呼ぶ。

「さて、残るは君だけだなミス・ヴァリエール」

「はい、ミスタ・コルベール。」

 コルベールは最後に行う女生徒を見つめた。整った顔立ち、ピンク色でロングの美しい髪が目立つその少女の名はルイズ。本名はもっと長いのだが今回は割愛する。

 彼女が『サモン・サーヴァント』を行うために一歩前へ出ると、周りの同級生たちはひそひそと話し始めた。

「ゼロのルイズがやるぜ。」

「また爆発でも起こされたらたまらないわよ。」

 『ゼロ』のルイズ。それが彼女に付けられた二つ名だ。この言葉を口に出されるだけで彼女の表情は相当険しくなる。

 そのあだ名の由来は、彼女が魔法使いである貴族の生まれながら、魔法を満足に扱えない事に起因していた。このことを彼女は大きなコンプレックスにしていた。

 このハルケギニアの地を支配しているのは、魔法が使える『メイジ』である。しかもその中で国に対してなんらかの功績を残し貴族と認められたものだけだ。だからこの地の価値観は魔法を中心に回っていると言って良い。つまり、魔法が使えないことは一人前の貴族として認められないことを意味する。

 ルイズはその貴族の中でも最上位の位に位置し、王族とも血縁関係にあるヴァリエール公爵家の出身だ。その彼女が魔法を使えないことは当然ながら家名に恥を塗る事態である。当然ながら、周囲から貴族の一員として教えられてきた本人にとってもとてつもない屈辱である。

 もちろん彼女も日々努力しているのだが、それが報われた試しは今のところない。幾ら彼女が努力しても、魔法が正常に発動したことはない。

 そう言うわけで、彼女にとって今日の儀式はある意味雪辱戦であった。

(見てらっしゃい、必ずすごい使い魔を呼び寄せて、皆をギャフンと言わせてやるんだから。)

 彼女はそう心に誓っていた。今日こそは自分が『ゼロ』ではないことを証明し、今までの汚名を返上してやると。

 彼女は杖を出して、他の生徒たちと同じように呪文を唱えた。

 すると、突然彼女の目の前が真っ白になり、つづいて爆発音がすると辺りは煙で覆われた。

「うわ!」

「きゃあ!!」

「やっぱり失敗しやがった!!」

 生徒たちは突然のことに慌てふためきながら逃げ回った。教師のコルベールも、これには面食らってしまった。いくらなんでもこんな時にまで爆発を起こすとは予想できなかったのだ。

 しかし、煙が晴れると彼らはより一層驚く事となった。先ほど爆発が起きたその場所に今までなかった物体が存在していた。

 コルベールもルイズも一応召喚には成功したようだと考えたが、その物体の全体像がわかると呆然としてしまった。なぜなら、そこにあったのは生き物どころか今まで見たこともない物体だったからだ。

「何よこれ!?」

 ルイズの第一声がこれである。

 最初は大きさから竜かと思った。しかし目の前にある物体は頭の部分に風車の羽をさらに細くしたような板をもち、そして羽のような物は、龍のようにばたつかせておらず固定されている。それどころか、生物の特徴たる目も口も見当たらない。おまけに尻尾の部分には見たこともないない文字が描かれ、その全体の色も竜にしては見かけない少しくすんだ白色だった。

 ルイズに加えて周りで見ていた生徒たちやコルベールも唖然とする中。

「一体なんなんだ!?」

 若い男の声が響いた。




 才人は突然の事に戸惑った。彼はいきなり周りが真っ白になったかと思い目を瞑った。そして再び目を開けると、そこには先ほどまでいた格納庫の中とは似ても全く違う景色が広がっていた。

 頭上には先ほどまであったはずの屋根がなく透き通ったような青空が広がり、近くには城壁のような壁や高い塔が見える。しかも、明らかに日本のものではない。

「ここは一体?」

 ありえない状況に彼は戸惑う。そんな彼に突如声が掛けられた。

「あんた誰?」

 才人は直ぐに声のした方に顔を向けた。先ほどまでゼロ戦の側にいたのは才吉1人のみのはずだった。しかし、そこに立っていたのは明らかに日本人ではない少女であった。また少し離れた所に男性が1人立っているが、先ほどまで会話していた才吉ではない。またさらに距離を離して複数の人間が自分の方を見つめていた。

(なんだこいつら?)

 彼の第一感想である。

「ちょっと答えなさいよ!?」

 先ほどの少女が苛立たしげに誰何する。多少気分を害したものの、今の状況を把握するには彼女らと話すしかない。取り敢えず才人は零戦から降りる事にした。コックピットから身を乗り出して地面に降りて、少女の前に立った。




 ルイズは目の前に立った人間の恰好に驚いた。みたこともない茶色の服を着て、さらに頭の上にもこれまた見たこともない帽子と眼鏡のような物をつけている。平民のようではあるが、今まで見てきた平民とは似ても似つかない格好である。

「あ、あんた誰よ?」

「俺か?俺は平賀才人。」

 名前を聞いて、ルイズはおかしな名前と思いながら多分こいつは平民と思った。そして恐らく後ろの見慣れない物体は竜であるとも思った。

「どこの平民?その竜になんで乗っていたの?」

「はあ?平民?竜?なんのことだよ。俺は高校2年生の17歳だぞ。それにこいつはゼロ戦っていう飛行機だぞ!」

 突然言われた聞きなれない単語の連発に、ルイズの頭は混乱する。

「高校生?飛行機?」

 まったくわけがわからない。そこで、質問を変えてみた。

「あんた魔法は使えるの?」

 すると、才人はバカにしたような表情でルイズを見た。

「はあ?お前バカか?そんなものあるわけないし、使えるわけねえじゃん。」

 取り敢えず目の前の男が平民であるとは確信した。

「使えないのなら、やっぱり平民じゃない。しかも魔法を知らないなんてどこの田舎の出身よ?」

「だから平民ってなんだよ?それに東京は田舎じゃないぞ。」

 全く話が噛み合わない。そこへ、ようやく立ち直ったコルベールが近づいた。

「ミス・ヴァリエール、喧嘩は後にして取り敢えず儀式を進めたまえ。」

「けど先生。契約するにしても、私はどっちと契約を結べばいいんですか?」

 この質問にコルベールも困った。確かに今回ルイズが召喚した物は目の前の少年と、得体の知れない物体である。

 しかし、物体の方はどうやら動物ではないようだ。彼は確認のため『ディテクト・マジック』をやってみる。すると、生物としての反応が出るのは目の前の少年だけだ。

 考えた末、彼は結論を述べた。

「取り敢えず契約を結ぶべきはその少年のようだ。人間の使い魔というのは前例はないが、一度やったら後戻りは出来ない。ミス・ヴァリエール、その少年と使い魔の契約を結びたまえ。」

 結局、この言葉によりルイズはしぶしぶ才人と契約を結ぶ事となった。この後、彼女は驚く才人にキスをした。そして才人には使い魔としてのルーンが刻まれた。

 これが後に、ハルケギニアにその名を轟かす2人のファースト・コンタクトであった。

 
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