♯祈りをこめて
「園子!ごめーん!!」
米花神社。
蘭、和葉、莉乃、平次、コナン、哀の六人は園子が待つ其処に漸くついた。
時計は7時15分を指している。
約束の時間は7時だったらしく、蘭は園子に謝った。
「いいって!何時も待たせてんのあたしだし―…」
園子からの軽い返事を受け、皆は花火が良く見える場所へと案内された。
事前に調べていた と園子は話している。
「こういう事だけは準備が良いんだから」
「あたしはいろんな事に準備万端よっ」
「園子ちゃんってば 調子良いんやからっ」
和葉、蘭、園子 の三人は顔見知りな事もあって、普段通りに並んで歩いた。
その中に入りづらそうに莉乃は後ろを歩いていた。
「あーいちゃんっ」
同じように一人で歩いている哀に声を掛けると、彼女は返事の代わりに莉乃の方を振り返った。
160も無い莉乃の身長だが、哀からは見上げる形になっている。
「哀ちゃんは浴衣、着てこぉへんかってんな」
「ええ。行き成りだったし… 浴衣持ってないしね」
「うちも!着たん幼稚園以来やわー…… って哀ちゃん?」
莉乃の話を聞く様子が無い様に、哀は逆方向を見ていた。
行き成り名前で呼んだのが悪かったのかと莉乃は真剣に考えながらも、哀の見ている方向に目線を移した。
「ビードロがどうかしたん?」
哀が見ている先の屋台では、ビードロが売られていた。
色とりどりに塗られた沢山の其れは、まるでこちらに手招きしている様だった。
「別に…何でも無いわ」
「めっちゃ綺麗なあ。小っさい頃、こんなんの玩具とか買って貰わへんかった?」
「さあ… 覚えは無いわね。貴女はあるんでしょ?」
「覚えてる限りでは無いと思うんやけど…… まあ、祭り自体連れて来て貰えへんかったしな」
莉乃の笑顔は何かを隠しているかのような微笑みだった。
こういう顔は仕草に敏感な哀は直ぐに何かを察知し、話を反らそうとした。
「あ…そういえば……」
「でもこれ、ちょっとした思い出があんねん。」
「え…?」
行き成り切り出された思い出の話に、哀は少し戸惑った。
それでも構わず話を続ける莉乃に、何も言わずただ話を聞いていた。
「ビードロ、一昨年の和葉の誕生日にあげてん。何でこれやねん ってめっちゃつっこまれたけど、良いプレゼントやと思わへん?」
「……そうね。プレゼントなんて…何を貰っても嬉しい物なんじゃない?」
「やんなっ」
内心、哀はほっとした。
とんでもない、辛い過去の話でもされたらどうしようかと思っていたからだ。
そう思っていたものが、可愛らしい友情話。
普段そういった世界には住んで居ない彼女にとって、莉乃の話は新鮮そのものだった。
「哀ちゃんの話もしてくれへん?うち一人で喋って、なんかアホみたいやん!」
「…って言われても…… 喋る事なんて…特には無いんだけど」
躊躇いながらも自分の話を交え、二人は園子達の後を着いて歩いた。
「此処此処!!着いたわよー!どう?凄いでしょ?」
園子に案内された場所は、少し山を登った所にあった。
丁度、綺麗に花火が見える位置だった。
山の下の方にある出店の光さえも全然見る事が出来ず、花火を見るのには絶好の場所。
園子が自慢げに案内するのも分かる気がした。
「めっちゃ良い所やん!花火もそろそろ始まるんとちゃう?」
「本間や!」
莉乃と和葉は空を見上げ、花火の上がる場所を探した。
ヒュウウウウ…と花火の上がっていく音に、直ぐに消えていく花火の輝き。
「お父さんも来れば良かったのにね、コナン君」
「今頃麻雀で盛り上がってんじゃない?」
コナンの横に哀が並び、その横に和葉と莉乃は居た。
「和葉見てみ!あれ、天の川みたいやない!?」
「季節ちゃうやろ。」
「そんなん分かってるて! みたい って言ったんやし…。」
鮮やかな色彩に彩られた沢山の花火は、皆を魅了した。
年に一回の大きな花火大会というだけあって、数は半端無い。
「来年こそは真さんともっともっと逢えますようにっ」
コナンと喋っていた莉乃の横で、園子がそう呟いているのが聞こえた。
手を合わせて、花火に願い事をしているようだった。
園子の反対側の隣に立っている和葉が初めにつっこんだ。
「園子ちゃん・・。花火は流れ星じゃないねんで?」
「実は此処の花火、流れるのが幾つかあって、それに願い事したら叶うっていうジンクスがあるの。和葉ちゃんもやってみたら?」
「本間に!?」
「………嘘くさ」
盛り上がる和葉、園子の横でコナンがつっこんでいる。
それを見て莉乃は笑った。
「でも和葉ちゃんはお願いする事無いんじゃない?」
「え?何で?」
「好きな人とずっと近くに居られるんだもん…」
「そうそう。それに、ラブラブだし」
和葉は後ろを振り返った。
平次は哀と話していて、こちらには気づいて無いようだ。
安心したように溜息をつくと、和葉はいつもとは違うテンションで言った。
「別にそんなんちゃうって……」
「…どうかしたの?」
コナンに声を掛けられ、莉乃は我に帰った。
ぼんやり空も見上げずに居たら、誰だって心配するだろう。
莉乃の顔をコナンは覗き込むようにして見た。
「別に何にも無いで。心配してくれて……ありがとう。」
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