♯想い
二人は帝丹小学校の前で固まって動かなかった。
和葉の口から出た言葉に、莉乃はただただ驚くだけでいた。
そんな中、コナンと哀はコロンボの前に居た。
「灰原、これじゃきりが無い。俺はあっち、お前は小学校の辺りを探してくれ」
「え…ええ。分かったわ」
二人も二手に分かれる事にした。
コナンは阿笠博士の家の方向へ、哀は小学校側に向かった。
暫く探し回ると、哀は和葉を見つけた。
「あ…」
声を掛けようとしたら、その奥にもう一人居るのが分かった。
其れが莉乃だという事も分かり、二人に見えない様にその場で止まった。
「どういう事?うち、何かしたん?」
莉乃はそんな事を言っていた。
二人の様子を見ながら、哀は探偵団バッジでコナンに呼びかける。
「工藤君… 見つけたわよ。あの関西弁の女の子も一緒。もうすぐ帰るから…。この事、大阪のお友達にも教えてあげなさいよ。ええ…。それじゃ」
バッジの交信を切ると、哀は二人に何も言わずその場から離れた。
それでも莉乃と和葉は其処から動こうとはしなかった。
「何かしたん?じゃないわ。さっきだってコソコソと平次と会ってたんやろ」
「其れは偶然会っただけで…」
「わざわざ別行動なんてして、本間やらしいわ」
「しゃーないやん!あんな事聞いたら誰だって…… その場に居たくなくなる…」
莉乃は思い出したくも無い言葉を思い出す羽目になってしまった。
忘れようと思っていた蘭と園子の会話がどんどん蘇ってくる。
「うちだって…分かってたわ。あんたら二人は両想い。そんなん知ってた…。
でも好きになったんや!……どうやってもその気持ち、変えられへんかった。」
和葉は何も言わなかった。
しかし莉乃はまだ続ける。
「和葉とは…服部の事好きになっても友達でおれると思った。やけど和葉はこんな事聞くんやな…。よう分かったわ。……帰ろか。」
莉乃が歩き出すと、和葉も黙ってついてきた。
下駄を引きずって歩く和葉の速度に合わせながら、莉乃は前を歩いた。
花火はもう上がっていなかった。
屋台の店じまいやら何やらで、明かりも薄く灯っているだけ。
その光景を見ながら、二人は黙って歩いた。
「ただいまー 遅れてごめんなあ。道、迷ってしもて…」
和葉は無理矢理明るく振る舞った。
しかし其れは完璧で、莉乃の作り笑いとは比べ物にもならなかった。
蘭ちゃんには 莉乃との事言ってもええかな
和葉の脳裏にふとそんな想いが過ぎった。
しかしそれは蘭の言葉でかき消される。
「でも良かったね!和葉ちゃん見つかって!」
明るく言う。
二人は相槌を打ちながらも、一回も目を合わせなかった。
「そういえば、園子ちゃんは?」
「園子なら帰ったよ。お母さんに叱られるかもって」
普段しているこんな当たり前の話も、今は助けになった。
何でも良いからこの雰囲気を壊さないで居たかった。
「まだ毛利のおっちゃん、帰って来てはらへんの?」
「うん…。もしかしたら朝帰りかも…」
「うっわー… 度胸あるなあ。蘭ちゃん扱かへんの?」
「和葉ちゃん、どーぞ?」
「…遠慮しとくわ」
和葉と蘭の会話を横目で見ながら、莉乃は自分の荷物を片付けに行った。
鞄から色々と取り出していると、隣に哀が座った。
哀も荷物を探っているようだった。
この沈黙を壊す様に、莉乃は大欠伸をした。
「哀ちゃん…。めっちゃ眠ない?うち、飛行機でも寝れんかったし…。早寝な…」
「私は全然平気…。夜行性だからね」
そう言うと、哀はさっき取り出した荷物を持って、風呂場に向かった。
莉乃は事務所にも行きづらかったので、その場でぼんやりと何かを考えていた。
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