♯本当の気持ち
「でもはっきり言うと、和葉とお前を足して2で割った感じのがええわ」
「………は?」
行き成り平次が意味不明な事を言い出すので、莉乃は思わず口を塞げずに居た。
「お前はツッコミせえへん割に、ボケるやろ?和葉はその逆やから、両方出来るのが最適やゆうてんねん」
莉乃は少しずつ話の流れが読めてきた。
「…いや、うちは漫才コンビの話してるんちゃうくて……」
「じゃあ何の話やねん」
話の基準が漫才という平次の思考に驚きながらも、返ってきたまともな返事にどう答えようか、莉乃は迷っていた。
「…やっぱり漫才の話でええわ
……って何でやねん」
「お、つっこみよったな」
莉乃が話を戻そうとすると、逆に平次はまた逸らそうとする。
そんな彼に腹が立ち、莉乃はきつい口調で言った。
「はぐらかさんとって…。アホ」
「ドアホのお前に言われとーないわ」
平次はいちいち口を挟んでくる。
それを聞き流す様に、莉乃は速度を上げて歩いた。
「……恋愛対象として… 和葉の事好き?」
一発の花火が上がった。
一瞬だけ其れに気を取られながらも、平次は莉乃の質問に答えようとした。
「…せやったらどうやねん」
「別に…どうって訳ちゃうけど」
莉乃は諦めたように、まだ上がり続けている花火を見上げた。
「服部、金魚掬いやらへん?」
目の前に金魚掬いの屋台を見つけ、莉乃は平次の腕を思い切り引っ張って連れて行った。
平次に拒否権は勿論無かった。
「おっちゃん!二人分!」
いつも以上に明るく振る舞う莉乃を見て、平次は少し複雑そうな顔をしていた。
「なあ、どんだけ取れるか勝負せえへん?」
莉乃は不敵な笑みを浮かべながら提案した。
其れに、平次も乗ってくる。
「ああ、ええで。そんかわり、負けても文句言いなや」
「服部こそ」
お互い相手にプレッシャーを掛けながらも、器用に金魚を移していく。
隣の子どもも二人の白熱した戦いを楽しそうに見ていた。
「そろそろ降参しても…ええんやで?」
「澤田も、網破れかけてんとちゃうかー?」
そう平次に言われた瞬間莉乃の網は切れ、乗っていた金魚は水面に落ちた。
「服部が余計な事言うから!」
「俺のせいちゃうわ!」
破れた網を店の人に渡し、莉乃は平次があとどれだけ釣れるかを見ていた。
直ぐに器は増えていき、最終的に二十七匹という快挙を成し遂げた。
「澤田、お前いくつ釣ったんや」
「十四匹…」
がっかり肩を落とした様に莉乃は自分が貰った金魚を眺めた。
袋には三匹の金魚が泳いでいる。
十匹以上釣ったら三匹だったらしく、平次も同じ三匹の金魚を持っていた。
暫く二人は歩き続けた。
そんな時、莉乃が行き成り声を挙げた。
「……ったー!!!!」
「は?」
「あ…いや何でも無い。服部、うちちょっと先帰るな」
「何でやねん、おいちょっとこら待て!」
莉乃は全速力で走った。
そして、平次の姿が見えなくなると、近くの石段の上に腰を下ろした。
「(うーわ…腫れてしもてる… 走らんかったら良かった…)」
さっき莉乃が挙げた声は、足の怪我のせいだった。
思いきり捻った様で、赤く腫れていた。
平次はきっと変に思っているに違いないと思い、莉乃は溜息をついた。
「(慣れへん下駄なんて履いてきたからやな…)」
蘭に貸してもらった下駄を手で引き上げながら思った。
そして、取り敢えず探偵事務所に帰る事にした。
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