地獄の沙汰も金次第PDFで表示縦書き表示RDF


久しぶりの小説です。文法などでおかしな部分があったら指摘してくれると嬉しいです。
地獄の沙汰も金次第
作:蒼炎鬼


「助かったよ勇輝ゆうき
「ちょい待ち。ちょい待ち。お・か・ね・は?」

 その場から去ろうとする学友の襟首を掴み金の催促をしているのがこの物語の主人公的存在。名を終了おわり 勇輝ゆうき

「あ…そうだったな。え〜…っと」
「無いのか?」
「えっ…いや―――」
「無いんだな?」
「いや、家に帰―――」
「今は無いんだな?」

 あくまで天使のような笑顔で学友に詰め寄る勇輝。顔は天使のようだが背後を見れば鬼のオーラが見える。今回の鬼はなんと通称の3倍。つまり、3匹立っていた。

「…はい。ないです」

 涙声になりながらも金を持っていないことを認める学友。勇輝はあくまで笑顔で両膝をついた学友の両肩をポンと叩き、これ以上の笑顔は無い笑顔を浮かべた。

「そっかぁ。無いなら仕方が無いなぁ。ちゃんと言ってくれればいいのになぁ? わかった。じゃあ、『気をつけて帰れよ』♪」

 勇輝の怖い所。それは金に対する執着が異様に強いこと。そして、取り立てに対してはあくまで平和的に片付ける所。え? 平和的に片付ける所がなんで怖いかって? それはよんでいればわかっていくよ。否が応でもね。

「う…うん。ごめんな勇輝」

 涙目になりながら謝る学友。そして、一目散にその学友は姿を消した。

「気にしなくて良いのにな。金が無いなら素直に言えよ。まぁいい。いつものやるか」

 そう言うと、勇輝はポケットから一枚のコインを取り出した。

「地獄の沙汰も金次第ってね♪」

 勇輝はコインを弾き、コインは中空へと舞い上がる。

「期限は30分。能力は…そうだな。絶対命令権でいいか。頼むぞ!」

 勇輝が言い終わると、コインは消えた。それを確認した勇輝はさっきまで一緒にいた学友を追いかけた。

「おぉ〜い…ちょっと待て〜」

 勇輝はスポーツ万能、成績優秀、容姿端麗。そして、常時腹黒の完璧(?)な人間だ。もちろん、学友は逃げ切れず勇輝につかまった。

「あのさ。金のことなんだけど」
「ひ…な、何?」
「この番号にお前の家の金全部振り込んどいて♪」

 無茶苦茶である。だが、先程の『能力』と言うのを思い出してみよう。勇輝は『絶対命令権』と言った。つまり、彼の言うことは絶対に従わなければならないのだ。

「あぁ。そんなことなら簡単だ。明日には振り込まれてるから」
「そっか。頼んだぜ〜♪」

 満面の笑みを浮かべたまま勇輝は家へと帰った。



    『貴方の欲しいもの。ここにあります♪ 無担保で何でもお貸しします♪ 終了おわり金融へようこそ♪』

「ただいま〜…ったく、この変なのは毎回うぜぇな…」
「ぼやくな。わしの考えたものにけちをつけるつもりか!?」
「んだとこのくそババア!! 大体、あんなのがある所為で客が来ねぇんだよ!!」
「なんじゃと腹黒息子!! わしの考えたものにけちをつけるとは偉くなったもんじゃな!!」
「偉いも何も俺はここの実質的社長だぞ!!? てめぇは早く死ね! お前の財産は俺のものになるんだからよ!!」

 老婆と勇輝のケンカはいつものこと。気にする必要はございません。勇輝と口げんかをしているのは勇輝の祖母であり育ての親。終了おわり 田音だね。名前だけでも突っ込みどころは満載だ。
 勇輝は幼い頃から親はいない。その理由を勇輝本人は知っていた。

「お前をここまで立派に育てやったのを忘れたか!?」
「あぁ〜そりゃどうも!! 貴方様のおかげでこんなに腹黒な息子になってしまいました。どうすんだこら!?」
「何じゃと!? 親もいない身内もいない! そんな子を引き取ってやる人間がいたことを感謝せんか!!」

 親がいない。その言葉は勇輝の心に突き刺さった。

「…感謝はしてる。でも…」
「そうじゃったな…親の話題には触れん約束じゃったな。すまんの」
「別にいい。でもあれはどうよ?」

 勇輝はドアのほうを指差す。

   『貴方の欲しいもの。ここにあります♪ 無担保で何でもお貸しします♪ 終了おわり金融へようこそ♪』

「丁度いいタイミングでなるなぁ…これだよこ……れ」
「あの…ここは金融会社で正しいのでしょうか?」

 一瞬の沈黙。だが、そんな一瞬はなぜか長い時間に感じてしまう。沈黙が解けた頃には勇輝と田音はソファに座って営業スマイルを浮かべていた。

「ようこそ、我が終了金融に♪ 当社はお金だけでなく様々な物品を扱っております。本日はどのような件でこちらに?」

 いつの間にかソファに座っている女性。なにやら深い事情があるようだ。

「言いにくいことでしたら話さなくても良いですよ? あなたのような美しい女性の涙を見ると心が痛みます…」
「(良く言うわ…いつも学校で女を泣かせているくせに…)」
「(うるせぇ。ちょっと黙ってろババア…)」
「優しいんですね…こんなに優しくされたの初めてです」

 頬に涙を流す女性。それを見た勇輝は涙をぬぐってあげた。

「まさか…あなたのようなお方が優しくされたことが無いなんて…私でよければ力になります。何でも話してください?」
「ありがとうございます。私は雪と言うものです。実は…借金をしてしまって」
「それで…我が金融に相談を…可愛そうに」

 田音はそのやりとりに呆れていた。客の目の前でタバコを吹かし紫煙を肺に溜めている。

「用件は何じゃ? 小娘」
「あ…はい。実は、借金とは建て前であの人たち本当は私を殺すつもりなんです…ですから、腕の立つボディーガードをお借りしたくて…」
「でしたらお任せください。私めが雪様のボディーガードを勤めさせていただきます」

 笑顔の裏に間違いなく金の事を考えている田音は知っている。だが、初対面でそれを見破られる人間はいない。故に、雪はあっさりと勇輝をボディーガードに任命した。

「それでのう小娘。うちは前金なんじゃ。期間と条件を言ってくれんかの?」
「期間は…1週間もあれば十分だと思います。条件は…私を絶対に守ってくれることです」
「契約成立じゃ。勇輝。しっかりやるんじゃぞ?」

 田音の視線は勇輝を射抜こうとしていた。しかし、勇輝はそれを無視して雪と共に店を去った。

   『貴方の欲しいもの。ここにあります♪ 無担保で何でもお貸しします♪ 終了おわり金融へようこそ♪』

「あんまり『金』を使うんじゃないぞ。勇輝…」



「ここです。ここが私の家です」
「はぁ〜…立派な御屋敷だ」

 ついつい素の言葉遣いで喋ってしまった勇輝。口を開けて屋敷の外観を見回す勇輝を見た雪はクスクスと笑っていた。

「さぁ。案内します。こちらへどうぞ」

 勇輝の手を取り、雪は屋敷を案内した。しかし、その屋敷の中は凄惨とした光景だった。
 所々に落ちている死体。屋敷の証明のシャンデリアは粉々。本来床に敷かれているカーペットは強い力で引き裂かれたかのようにボロボロだった。
 あまりにも奇怪な屋敷、外観を見た後に内装を見れば誰しもが奇怪な屋敷と思う。勇輝は雪の手を振り解き口を開いて問うた。

「これは一体どういうことでしょうか?」
「そんな他人行儀な言い方はやめてくださいな♪ これからあなたは私と共に生きるのですから!!」

 言い終わるのが早かったか、雪が飛び出してくるのが早かったか。それはわからない。しかし、間違いなく雪は勇輝を殺しにかかっていた。突然の行動、勇輝には予測していたわけも無い。女とは思えない腕力で勇輝の体を壁に叩きつけ、雪は狂ったように笑っていた。先刻の一撃で勇輝の意識は闇に誘われた。

「ん…あれ? ここ…」
「目が覚めました?」

 眼を開けて初めに入った光景は天井。しかし、只の屋根ではなく鋭利で巨大な刃物がぶら下げてある天井だった。

「人というのは実に哀れな生き物ですからね。聖人を気取りつつも結局は草を食べ、肉を食べる」

 雪は先程までの彼女とは似ても似つかない口調で勇輝に話し掛ける。

「それは一体何を言いたい?」
「クスクス…。ならば、人が人を食べるのは哀れと言うのでしょうか?」
「あんた…人間じゃないな。『金』の亡者か、いや…それとも『集金』にでも来たか? わざわざ人間の姿になってまで」
「よくわかったね。私はあなたの『金』を『集金』に来たんだよ。むやみやたらと『金』を使う人間がいるって聞いてね」
「それは違うな。『金』を使えるのはこの世界には俺とババアだけだ」

 話は『金』の話だった。しかし、硬貨の話ではないようだ。雪と名乗った生き物は顔をしかめギロチンを支えてる紐にナイフを当てる。

「おまえを殺してからしっかり『集金』してやるよ」
「俺は死なないんだよ。バカ」

 勇輝の一言で雪は怒り、一思いにギロチンを落とした。

      キィン!!       ドゴン!!

 金属と金属がぶつかり合う高い音が部屋に響いた。その後には、巨大な鈍器か何かが壁にぶつかるような音がした。雪は勇輝を見るが彼は首を落とされることは無く、傷一つついていなかった。

「時間は10分。能力は超能力。地獄の沙汰も金次第だな。『集金屋』」
「まさかお前…『金』を持っていたのか!?」

 勇輝に着けられていた枷が粉々に破壊され勇輝は立ち上がる。

「俺は自分の身を守るように何枚かは持ってるんだ」
「ならば…我に従いて現れるは『金の亡者』期限は10分だ…出で―――」
「遅いんだよ。それで『集金屋』を名乗れるとはな…」

 雪の体は上半身と下半身が分かれていた。勇輝が超能力でギロチンを動かし切り裂いたのだ。

「あ〜…疲れた。…つーかあのババア…これわかっててわざと前金にしやがったな。許さねぇ…」

 田音の存在に怒りを感じ勇輝はその場を去ろうとした。しかし、途中で足を止めポケットから1枚のコインを取り出し雪だった生き物に放った。

「地獄の沙汰も金次第だ…お前は一応俺から『集金』したことにしてやる」

 勇輝はその場から消えた。そこには、永遠に色あせない『金』と砂となった元依頼人が静かに眠っていた。





「だ〜か〜ら〜! 店のイメージを壊しかねねぇんだよ!! あれとっとと外せクソババア!」
「ワシは身長がたりん。外したければお前が外せばよかろう」

 今日も終了金融は口喧嘩が絶えない。そんななか…

     『貴方の欲しいもの。ここにあります♪ 無担保で何でもお貸しします♪ 終了おわり金融へようこそ♪』

「客じゃぞ」
「ようこそ終了金融へ♪」

 今日の客は外見は30代の男だ。

「あの…ここは金融会社ですよね?」
「えぇそうですよ。金融とは名ばかりで何でも貸しますよ?」
「あの…お金を貸してください!!」
「いくらじゃ?」
「1000万ほどなんですが…」

 男は今にも泣きそうな声でお願いしている。それを見た勇輝は卑しく笑った。

「いいよ。地獄の沙汰も金次第。契約完了です」
「ありがとうございます!!」
「ちゃんと返しに来るんじゃぞ? 返さぬ場合は死が待っておる…」

 男は逃げるようにして勇輝達の前から姿を消した。

「最近は『集金屋』が来ることがなくて楽じゃのう」
「地獄の沙汰も金次第だババア。誰かに『金』でも掴まされたんだろ?」

 勇輝は独り、口元を歪ませ微笑んでいた…。


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